「るりおねえさん、かぶらきとけっこんして?」
目の前の少女から飛び出した思わぬ発言に、わたくしの頭に咄嗟に浮かんだのは「事案」の二文字だった。
もしかすると疲れていて聞き間違えてしまったのかも、と半ば現実逃避のように考えて聞き返す。
「ごめんねろこちゃん、もう一回言ってもらってもいいかな?」
「も〜るりおねえさん、かぶらきのプロポーズききのがさないでよ! かぶらきとけっこんして?」
聞き間違いではなかった。わたくしの平凡な生活もこれで終わりか。わたくしは逮捕されて一生牢屋の中だ。
一瞬で自分の今後の人生を想像して顔を青くするわたくしに、ろこちゃんが声をかける。
「も、もしかしていやだった?」
少し落ち込んだような声色で不安げにわたくしを見つめるろこちゃん。
まずい、落ち込ませてしまう。
「いや、そんなことないよ!? ただ、ろこちゃんはこれから大きくなってもっと色んな人に出会うだろうから、きっとわたくしじゃなくても素敵な人見つかるよ?」
諭すように話すわたくしに対して頬を膨らませてろこちゃんが言う。
「るりおねえさんよりいいひといないもん! じゃあさ、かぶらきがおとなになっても、まだるりおねえさんのことすきだったらおよめさんになってくれる?」
質問の形をしていながらも一切譲る気のないろこちゃんのお願いに、気が付くと断りきれずに「分かった、大人になってもまだ好きでいてくれたらなるよ」と答えてしまっていた。
まぁ子供の言うことだし、人生何があるか分からない。
ろこちゃんが大人になる頃にはきっと素敵な人が見つかっている、とその時のわたくしは考えていた。
メリークリスマス🎄
『やくそく』(2/2)
うたのおねえさんrr×ロリrc
25.12.2024 02:31 — 👍 6 🔁 0 💬 0 📌 0
「私、結婚するんだよね」
「え───」
お洒落なカフェのテラス席に座ってスイーツを頬張りながらおしゃべりをしていた矢先にその言葉を聞いて、鏑木の世界から音が消えた。
「───え、おめでとうじゃんか! いきなりすぎて、聞いた皆びっくりしたんじゃない?」
「実はこの話したのろこちゃんが初めてなんだよ、やっぱりびっくりした?」
「いやそりゃあするでしょ〜!」
びっくりしたなんてものじゃない。
今まで美味しく味わっていたケーキの味が分からなくなってしまった。
鏑木は今上手く笑えているだろうか。
「鏑木が聞くの最初で良かったの?」
「そうそれなんだよ、実はさろこちゃんに結婚式のスピーチお願いできないかなって」
それを聞いて、ズキズキとする胸の痛みを必死に抑えてどうにか笑顔を作った。
「おい任せろって〜! 鏑木が全米が泣いちゃうぐらいエモいスピーチしちゃうぜ!」
「さっすがろこちゃん!」
こうして鏑木の恋は想い人に想いを伝えるまでもなく、あっけなく終わりを迎えた。
それからしばらくしてめるちから正式に結婚式の招待状が届いた。
あの日からずっと考えているのは、もっと早く気持ちを伝えていれば今頃めるちの隣に立っていたのは鏑木だったんだろうか、なんていうくだらないこと。
好きな人が幸せになるのを素直に喜べない自分が嫌になる。
これは勇気を出せずに行動することも出来なかった鏑木の自業自得。
鏑木にできることはめるちの幸せを願って最高のスピーチをすることだけ。
分かっていても鏑木の頭はぐるぐると考えてしまう。
当日までにはちゃんとこの気持ちはもう過去のものとして、なんでもないような
顔で心からお祝いできるようにならなくちゃ。
溢れ出そうな涙を必死に堪えてベッドに身体を預けて意識を落とした。
ステンドグラスから光が差し込んでいる綺麗な教会に足音が響く。
純白のドレスに身を包みゆったりとバージンロードを歩むめるちに拍手の雨が降りかかる。
鏑木は綺麗という言葉以外で形容しようがないめるちの姿に見惚れていた。
やっぱりこの恋心を綺麗さっぱり捨てることは鏑木にはできなくて今もこんなに苦しんでいる。
あぁここで鏑木が「その結婚ちょっと待ったー!」なんて言い出したら大問題になるんだろうな。
現実は映画の主人公のように愛する人を連れ出したらそのままハッピーエンドという訳にはいかない。
社会性というべきものに縛られ身動きが取れなくなる。
なにより、めるち自身がそんな事を望んでいない。
幸せそうな笑顔で隣に並ぶお相手の人と見つめあっている。
その笑顔を奪う勇気も資格も鏑木にはないのだ。
映画みたいにはいかないな
胸の中でぽつりと呟いた。
rcmr ⚠️失恋注意
『映画みたいにはいかなくて』(4/4)
初rcmrだし初失恋ネタ
10.11.2024 02:43 — 👍 3 🔁 0 💬 0 📌 0
「やるじゃん石神」
「ろこちゃんこそ」
お互いここまで拮抗した戦いになると思っておらず少し笑いながら称え合う。
この控え室のテーブルは横一列に五人まで座れるから次がラストの射撃だ。ここで外した方が負け、なんともシンプルで分かりやすい。
「鏑木、行きます!」
気合いの入った声を上げて、ろこちゃんが輪ゴムをセットする。
片目を閉じて狙いを定めて、ゆっくり息を吐く。
絵面はただの輪ゴム指鉄砲なのになんだか顔つきは真剣で、まるで歴戦のスナイパーのようだ。
見ているだけのこちらもなんだか雰囲気に飲まれてきた瞬間、ろこちゃんが小指を動かした。
ぱちんっ。見事命中だ。
「やったぁ! こーれは鏑木間違いなく世界大会優勝です」
「うわガチか〜! ろこちゃん上手すぎ〜!」
少しプレッシャーを感じながらあたしも輪ゴムをセットする。
テーブルの端から端までとなるとその距離は結構遠いもので全く当たる気がしない。
左目を閉じて、狙いを定めつつ腕を伸ばす。
そして、あたしは当たるよう祈りながらそっと小指を動かした。
輪ゴムの軌道をろこちゃんと二人で目で追っていく。
輪ゴムはペットボトルの少し上を通過して壁にぶつかって撃墜した。
「うわ!!! 惜しい〜!」
「今の惜しかったな〜!?」
思わず背もたれに身体を預け手を見上げてしまった。
すぐ横で見ていたろこちゃんも一緒に悔しがってくれている。
「ろこちゃんどれ飲みたい〜?」
「ん〜これ!」
「おっけー」
控え室を一旦後にして、二人ですぐ近くの自販機に歩いた。
お金を入れて、ろこちゃんが指さした飲み物のボタンを押す。
ガコン。落ちてきたペットボトルを拾ってろこちゃんに手渡す。
「ありがと」
続けて前から気になっていた飲み物のボタンを押して、落ちてきたペットボトルを拾う。
「あ、それ鏑木も気になってたやつだ」
「一口飲む?」
「良いの?」
「いいよ、はいどーぞ」
「わーい! ありがと!こっちも飲んでいいよ」
「ありがと〜」
二人で飲み物をシェアしながら近くの椅子に座る。
「めっちゃ久々に指鉄砲したけど楽しかった〜」
「んね、石神最後ほんとに惜しかったよ」
「ろこちゃんめっちゃ上手いね」
「へへっ、天才すぎたな」
ちびちび飲み物を飲みながらさっきの勝負を振り返る。
時計をちらりと確認するとそろそろ収録の時間が近づいていて、手元のペットボトルを勢いよく飲み干して立ち上がった。
「そろそろ収録だから行くね〜」
「ほんとだ、鏑木も打ち合わせの時間だ」
「またこうやって時間ある時遊ぼうね」
「うん! 次は紙飛行機とかで勝負しよ!」
「良いね、楽しみにしてるね」
「「ばいばーい」」
飲み終わったペットボトルをゴミ箱に入れて、収録ブースへと歩く。
次はろこちゃんに勝つぞ〜、そんなことを考えながら少し笑みがこぼれた。
(8/8)
17.10.2024 09:09 — 👍 3 🔁 0 💬 0 📌 0
ぱちん。
小気味良い音と共に軽い衝撃が手に伝わり、びっくりしてスマホから目を上げた。
見ると、向かいに座っていたろこちゃんが何やら指を銃の形にして固まっていた。
「ごめん、石神! 痛くなかった?」
自分の手を見ると、ちょうどスマホの影に隠れて輪ゴムが一つ目に入った。
あぁ、輪ゴムを飛ばしたのか。
「びっくりしたぁ」
「ごめん!指にセットしてたら飛んでっちゃって」
「全然平気だよ、指鉄砲? 懐かしいなぁ〜」
「でしょ〜? さっきお弁当に輪ゴム付いてたから何となく残しといたんだよね」
話しながら飛んできた輪ゴムを手に取り、手を銃の形にしてから小指に輪ゴムを引っ掛けて、親指にぐるっと巻き付けて、人差し指の指先に引っ掛ける。
これで小指を曲げれば輪ゴムが発射される、輪ゴム指鉄砲の完成だ。
「お、石神もやる?」
「えいっ」
勢いよく発射された輪ゴムはテーブルの上にあったペットボトルに当たった。
「ナイスショット! やるやん!」
「そりゃあ勿論スーパーカリスマインフルエンサーですから〜?」
「スーバー(以下略)関係ある?」
「略すな! 関係ないけど......」
「ないんかーい! あ、ねぇ石神? 勝負しようよ」
「お、負けんが?」
「このペットボトルからどんどん離れていってさ、先に外した方が負けね?」
「負けた方後でジュース奢りで」
「おっけー!」
「「最初はグー、じゃんけんぽいっ」」
じゃんけんの結果、先攻はろこちゃんに決まった。
さっき飛ばした輪ゴムを取ってろこちゃんの手のひらに乗せる。
ルールは二人で話し合って、横長テーブルの端っこの方にペットボトルを置いて当てたらどんどん横の椅子にずれていく、という方式になった。
第一射目、ろこちゃんが輪ゴムを指にセットする。
そして間髪入れずに輪ゴムを発射した。
ぺちっ。見事ペットボトルに的中。
「へへーん!流石にね?」
次はあたしの番だ。
ろこちゃんから輪ゴムを受け取り、指にセットする。
小指をくいっと動かし発射。
ぺちっ。成功だ。
そこから続けて二射目。
ろこちゃんが狙いを定めて指を動かした瞬間、ピロンとろこちゃんのスマホから通知音が鳴った。
驚いた拍子に小指を動かしてしまったようで、輪ゴムが発射されてしまった。
「「あっ」」
シュッ。輪ゴムはペットボトルをかすりそのままテーブルの奥まで飛んで行った。
「びっっっっくりしたぁ〜!!!」
「よく当たったねぇ?!」
ろこちゃんがスマホを確認するとマネさんからの連絡だったようで、急いで返信をしていた。
「提出物のリマインドだったわ、流石にこれは出してない鏑木が悪いか......」
「うわあたしもまだ出してないかも」
「良くないんだ〜!」
「ろこちゃんが言えないよそれ」
「それはそう」
気を取り直して、あたしの番だ。
近いようで少しだけ遠くなったペットボトルに狙いを定め、セットした輪ゴムを飛ばす。
輪ゴムはペットボトルの蓋に直撃し、ペットボトルを数cm動かした。
「よしっ」
この流れに乗ってそのまま三射目、四射目と二人とも成功が続いた。
直近で出した文章をお試しで
nzrc 恋愛要素なし
「ねらいうち」(4/8)
17.10.2024 09:08 — 👍 4 🔁 0 💬 1 📌 0
本人らしき垢は一応B済ですがこれから開設される場合は順次Bしていきます
17.10.2024 03:37 — 👍 1 🔁 0 💬 0 📌 0