あっと言う間に駆けてきた。
「そんなに待っててくれたんだ?」
「うっせ」
「うれしいなあ」
ザマァ見ろ。ナマエは気づいていないかもしれないけれど、いくつもの視線がこちらに向いている。それをひとつずつしっかり睨み付けて、それからナマエの手を攫った。
「おら、帰んだろ」
「うん。ママも堅治に会いたがってたから寄ってく?」
「いく」
@kanabos.bsky.social
20↑/字書き 819(フタクチ)、刀(肥)、MHA(⚡️中心に派閥)に絶賛狂ってる夢女 ジャンルによって掛け算も嗜みます 他:twst⚗️、tst🐶、HP、MCU等 ※自我強め 𝐋𝐢𝐧𝐤 ⇢ https://lit.link/KanaBoS 𝐂𝐥𝐢𝐩 𝐟𝐞𝐞𝐝 ⇢ https://bsky.app/profile/did:plc:eaxla5vyn4gjjfk3rqpborq3/feed/18cc21fd33ab334
あっと言う間に駆けてきた。
「そんなに待っててくれたんだ?」
「うっせ」
「うれしいなあ」
ザマァ見ろ。ナマエは気づいていないかもしれないけれど、いくつもの視線がこちらに向いている。それをひとつずつしっかり睨み付けて、それからナマエの手を攫った。
「おら、帰んだろ」
「うん。ママも堅治に会いたがってたから寄ってく?」
「いく」
そう思った。なのに、あいつは俺のことなんてお見通しらしい。
『会いたいからお迎えきてくれる?』
そんなメッセージが届いたせいで、やさぐれてささくれだらけだった心がちょっぴり元気を取り戻した。
『しょうがねえな。店送っといて』
そんなことを言いながらも即座に既読をつけて、レスを返しているんだから俺の負け。きっと今頃、喉を震わせて笑っている。
「おっせーよ」
店の前。ガードレールに腰掛けてどれくらい時間が経ったか。ようやく現れたナマエは、他の女の子たちに二、三言葉をかけると
雑誌を漁って。どうしようもなく落ち着かなくて、ひっきりなしにナマエとのトーク画面を開いてみて、ナマエのSNSをチェックしていた。
こんなのダサくて、ゼッテェー知られたくない。好きな女に格好よく思われたいに決まってる。だから敢えて俺からの連絡をしないでいるけど、ナマエからの連絡を待ち続けている。
ナマエのことを信じていないわけじゃない。同窓会に行っても俺のことを好きだと言ってくれると思う。そうじゃなくて、俺の知らないナマエを知っている男たちに、今のナマエを見られたくないだけ。
「はやく帰ってこーい」
ぼやき声とともに、ベッドの上に大の字で転がった。このままふて寝でもしようか、
かわいいの記録を更新するから
#HQプラス #819プラス #HQ夢 ✎೯フタクチ
愛する相互へ
______
2年前に俺も経験した成人式が、今年も行われていた。そこに恋人が、華やかで綺麗な振袖を着て出席している。その時点で色んな奴がその格好を見て見惚れているだろうに、その上で同窓会に出席するなんて。
あんな可愛いとは違う綺麗な恋人の写真が送られてきたのに、会うことができないまま、その姿を見た野郎共も参加している同窓会だなんて。自分も出席した以上、嫌だなんて言えなくて、同意をした。
結局、落ち着かない時間を数時間過ごし続けている。SNSを漁って、ソシャゲをプレイしてみて、
きっと寒がるだろう彼女のために暖房をいつもより強めにかけて車を会場近くの駐車場へと走らせた。
-
会場の目の前の駐車場も、閉幕時刻よりも随分早ければなんとか駐車できた。じっと彼女の出てくるまでの時間を待つ。そわそわとした落ち着きのない感覚がずっと身体の内側に燻る。
ぽつりぽつり、と色とりどりの装いの新成人が出てきたと思えば、あっと言う間に人が溢れかえる。
そして電話をかける彼女の姿を見つけたけれど、同時に彼女が奪った無数の視線にも気づいてしまう。自然と眉が寄って胸を占める薄暗い気持ち。
それでも、俺の車を見つけた瞬間、彼女の顔がパッと華やぐから。
「おつかれ。すっごいきれーだな」
メッセージを送ってから盛大な溜息を吐き出す。
余裕がないってのがバレバレでかっこ悪い。きっと察しのいい彼女のことだから、小さな笑みを浮かべていると思う。でもまあ、そのしてやったりと言わんばかりの悪戯の笑みに隠れた、喜びを隠しきれない笑顔は俺の特権だから。多少かっこ悪くてもいいかと思ってしまう。
「いいの? 秋紀に振袖見せたかったから嬉しい」
そして帰ってきた寛容で愛らしい返事に、なんかもうどうでも良くなった。大切な彼女が喜んでくれるなら、多少かっこ悪くてもいいじゃないか。
少し早い気もするけれど、アウターを羽織って車の鍵を持つ。
「君のことかわいいと思っていたのに、」
#HQプラス #819プラス #HQ夢 ✎೯コノハ
新成人の皆さんおめでとう御座います。
愛する相互が新成人なので、おめでとうを込めて
---
当時は高校の後輩。今はかわいくてしょうがない恋人が、俺から二年遅れて成人式を迎えた。少し前に成人していたものの、やはり成人式というのは特別で。
朝には、綺麗におめかしした晴れ姿がメッセージアプリで送られてきた。いつもかわいいけれど、今日のそれは綺麗でその格好をたくさんの人が見ると思うと気が気でない。
「ごめん、迎え行ってもいい?」
家で悶々としていたけれど、やっぱり我慢しきれない。彼女への
あからさまに落ち込む鶴丸に、もう一度ため息を零す。神経を使う集会だった。正直疲労困憊で、明日・明後日は審神者業を休みたいと思っていた。鶴丸もかなり堅苦しい場に押し込めてしまっていたし、お互いストレスの貯まる一日だった。
鶴丸なりの気遣いなのだろう。
張り詰めていた糸が緩んだのは間違いなく鶴丸のおかげだ。
仕方がないから、少しだけ多めに買い物をすることを許可してあげよう。そして早く私たちの本丸に帰ろう。
それらしい建前をひとつ紡ぐ。この”心”の変化はまだ知らないものだ。この心の行く先を知りたいと思うし、どんなものを齎すのか興味がある。
「あ、ありがとうございます。北の街道を行ったところの茶屋まで」
「茶屋の娘か」
「はい。良ければお礼にお団子でも召し上がっていってください」
恥じらうように目を伏せて、斜め後ろを歩く若い娘の頬は色づいていた。
どう見たってその小柄な身体には不釣り合いな大きな紙袋は山盛りで、前なんて見えてなさそうだ。
「荷物はこれだけか?」
「はい」
「持とう。どこまでだ」
どうしてそんなお節介の虫が騒いだのか自分のことながら疑問だ。気づけばそう口から飛び出ていたのだから、しょうがない。
前言撤回をするような無責任さは持ち合わせていない。手にしていた、袋を腕にかけ直してから彼女から袋を奪い取る。ずっしりとした重みのあるこれを、あの細腕で持っていたかと思うと小さいながらも驚愕が芽生える。
「え!そんな。膝丸様にそこまでして頂くわけには!」
「今度は転ばれでもしたら後味が悪いからな」
理由なんてわからないけれど、
渡された覚書きどおりに買い物を済ませていく。
「わ、」
雑踏の中で聞こえた鈴の音。慌てた様子の音の主を視線で探れば、呉服屋の斜め向かいあたりでひとりの若い娘が大きな荷物を抱えながらよろけていた。走り抜けていく男の姿も視認できるので、恐らくぶつかられたのだろう。
「大丈夫か」
溢れた小さい包を拾い上げてから声をかければ、その若い娘は大きく目を見開いた。丁寧に施された化粧によって、弧を描くまつ毛が震えた。
心臓が鼓動する。雷にでも打たれたかのような衝撃が俺を襲う。
「あ、ありがとうございます」
「いや。構わない」
抱えていた大きな紙袋の上に、拾ったそれを乗せてやる。けれど、
町娘を助ける膝丸
※別垢再掲(初回:2025.09.17)
#刀さに #膝さに #not審神者
城下町はいつだって賑わいがある。方方へ伸びる道の最果てに、それぞれの本丸へ繋がる門があり、中央の区域には演練場が用意されている。政府以外で、他の本丸と接するのは城下町くらいだろう。
珍しく、買い出しの担当に選ばれたのが俺だった。平時であれば、もっと若い刀たちが嬉々として請け負っているけれど、今日ばかりは編成の都合で向かうことができないらしく、感情の表現がわかりやすい刀たちは肩を落としていた。
成り行きとはいえ、任された仕事はきちんと全うしなくては、源氏の名折れだ。気合を入れて、
この時代で流行っていたお菓子でも買おうと、入店早々鶴丸と別れて店内を物色する。
「なあ、キミ!コンビニってのは戦場か!?」
プラスチックの籠を抱えて、現れた鶴丸。その籠の中にはこれでもかというほどの商品が詰め込まれていた。雑誌、日用品、ご飯、スイーツ、お菓子。バラエティに富んだラインナップではあるけれど、どう考えても異常な量。
「鶴丸……あのねえ……」
この刀から目を離したのは誰だ。私だ。野放しにすべきでない刀筆頭ではないか。どうしてこうなった。
頭を抱えて、体の奥底から大きな息を吐き出した。
「なあ、そんな怒ってくれるなよ。驚きを届けたかっただけなんだ」
視線を落として
鶴丸と現代遠征でコンビニに立ち寄った
※別垢再掲(初回掲載:2025.07.11)
#鶴さに #刀さに
丑三つ時。人々も街も寝静まる。それでも煌々と明かりを灯して営業を続けているのが、コンビニエンスストア。20世紀終わりから21世紀にかけて、あちこちでその存在を主張する。なくてはならないお店の一つ。
「本丸に帰る前にご飯調達しておこうか」
「いいのか!コンビニってやつは気になってたんだ!」
声も足取りも弾ませてご機嫌な鶴丸を引き連れて、自動ドアを潜る。
この時間に本丸に帰還しても、さすがに起きているのは夜警の当番だけでなんにもありつけない。お弁当と、
まさしく軍の大将のものだった。
「それとも元主の名を傷つけるかもしれない?護衛はあなたには荷が重いかな?」
「ッハ!言ってろ!」
挑発だとわかっている。それでもなんだか気分がいいからノッてやっただけだ。
聞こえていないと言わんばかりに、穏やかな声色でそう告げた。
「おい。おれの話、聞いてんのか」
「聞いてるけど……」
唸り声が溢れるけれど、そんなものは他の刀でも慣れきった審神者には、微塵も気にした素振りを見せない。
それどころか、呑気に茶なんか飲みやがった。緩慢な動作で茶器を置いた審神者は、小首を傾げておれを見据えた。
「あなたには、暗殺じゃなくて、護衛の力を期待しているんだけど」
抑揚の少ない声で、平安のジジイたちみてーに目を細めて笑った様は、
肥前くんに護衛をお願いしたら
※別垢再掲(初掲載:2025.07.08)
#刀さに #肥さに
「人斬りの刀なんか連れて、誰か斬るつもりかよ」
審神者が政のために集会へと赴くことが決まった日、おれに付き添いの主命がおりた。
こういう改まった席ならば、もっと相応しい刀が大量にいる。
おれなんかをわざわざ選ぶには”そういった理由”があるからに決まっている。どんなにヘラヘラ笑っていても、刀剣男士なんていう意志の持った武器の大軍を抱えた大将だ。ましてや、十年以上も審神者を勤めていれば、大なり小なり啀み合いが生じるもんだろう。
「正装が必要みたいだから見繕っておいて」
おれの言葉なんか
わたしが特別だって思う瞬間もあるけれど、それは勘違いなんじゃないかと思う瞬間もある。
だから、悪いとは思いつつもこんな作戦を決行させてもらった。
ぐっと押し黙った秋紀。ねえ、もう少しだけ。お願い。
「嫌いだから?」
「それはない。ちがう」
きっぱりと否定をした秋紀は、一度深く息を吸い込んだ。そして酔っ払った状態のまま真剣な顔をする。
バレーでよくみるその顔は、正直わたしも“その顔に弱いからやめてほしい”ところ。
「すき。ずっとすきなんだよ」
「うん。わたしもだよ」
「おれ、そのかおよわいから、やめて」
真っ赤な顔で眉毛を下げて、目の大きさの割に小さい瞳をきょろきょろと彷徨わせる秋紀。その姿をかわいいって言ったら、さらに困った表情をするんだと思う。
わかっているからそれは我慢しておいてあげることにした。
だからね、代わりに。もう少しだけ勇気を出してほしいなーなんて思う。
「なんで弱いの?」
少しだけ身体を傾けて、秋紀の顔を覗き込む。
ずっとずっと大好きだった男の子。きっと、秋紀だってわたしのことを意識してくれていると思う。
それでもわたしから“好き”だって伝えるには、確信が足りなかった。
だって秋紀は誰にだってやさしいから。
残念というよりは寂しいと言うように眉を下げて上目遣いでこちらを見る。
ぐらり、と何かが揺れる。視界か、決意か、理性か。それとも全部かもしれない。極めつけに首をこてん、と傾げた動作に、心臓を撃ち抜かれる。
「じゃあ、レモンサワーで」
「やった。頼んじゃうね~」
ああ、悲しいかな。儚かった俺の決意。たった数分の命だったな。
もうどうにでもなれ、と残っていたレモンサワーを一気に煽ったところまでは記憶は明確に残っている。
◎
誘ってくれるんだろうし、こんなに気を許してくれるんだと思う。
とはいえ、飲んでも飲んでも顔色の変わらない彼女に、少しだけ焦る。
だって、俺の頭の芯はすでにじんわりと輪郭を失いつつあるし、正直顔色に出ていないか不安でしょうがない。
体質とかもあるから一概には言えないけれど、できれば好きな女の子より酒は強くありたかった。けれど悲しいかな、それは叶わないと知った。せめて彼女に介抱されるなんてことにならないように、自身のペース配分を気をつける必要がある。
「秋紀は次何飲む?」
「あー、俺まだあるから」
「え、呑まないの?」
アルコールメニューが表示されるタブレットから顔を上げた彼女は、
お題:情けない秋紀
#HQプラス #819プラス #HQ夢 ✩ コノハ
高校の頃からずっと好きで、気づけば視線で追ってしまっていた女の子。幸運なことに、高校を卒業する前も、その後も、比較的仲のいい友人のポジションは掴み取れていた。
大学を卒業してもその距離感に変化を加えることはできなかったけれど、彼女からの信頼は確実に勝ち得ていた。
「……まじ? 酒強くね?」
「そうかなぁ?」
間延びした声は、さも酔っているようでありながら、彼女が気を緩めただけだと知っている。すでに頼んだビールとサワーの数は両手の指の数を超えていた。
信頼されているからこそ、ふたりで飲みに行くことに
「は?うますぎ」
「本当?うれしい!」
「まじ。すげえわ」
止まらなくなる。もう一口かぶりつけば、これ以上ないほどに表情をゆるめたナマエ。そのかわいい笑みと、美味しいシュークリームを堪能できるなんて、最高の正月休みだった。
ひとつ掴む。
持った感触も質量もしっかりしていて、すでに感動している。
「いただきます」
ゆっくりかじりつく。クッキーのようなサクサクの食感。それからふんわりと卵の香りとバニラビーンズの香りのするもったりとしたなめらかさのあるクリームが口の中に広がっていく。生地の食感と香ばしい香りと重なり合うと絶妙だった。
甘すぎないのに、風味は豊か。これならそこまで甘いものが得意でなくてもいくらでも食べられる気がする。
美味しそうな匂いを漂わせて、ローテーブルの上に移動されたそれ。
白い粉糖が振りかけられてめかしこまれたシュークリームは、さっきまで漂っていた甘い香りと同じ匂いがする。
「これ作ったのかよ」
「そう!美味しそうでしょー」
「まじ?シュークリームって家で作れんのかよ」
皿の上に鎮座するシュークリーム。コンビニのものとは違って、カリカリの層が覆っていて、いかにも手が込んでいるとわかるそれ。
シュークリームとナマエの顔を交互に視線を向けていれば、俺の反応にさらに笑みを深める。
「食べてみて」
俺を促して期待に満ちた視線を向けたナマエに、姿勢を正す。天辺で存在を主張していたシュークリームを
「もう、大人しくしててよね」
そんなことを言って腕から逃げ出したものの、俺を見下ろす表情はご機嫌そのもの。にこにことゆるめた表情は、ナマエのことを好きだと再認識させられる。
スマホ持って、再びキッチンに籠もってしまったナマエ。もうゲームに戻る集中力も残っていなくて、ソファーに上半身も身を委ねてみる。
オーブンが鳴った後も、カチャカチャと作業をする音に耳を傾けながらゆるやかに瞼を下ろして空腹から意識を逸らすことにした。
「ねえ、天才かもしれない!」
弾む声に目をあける。うちにある中でも一番大きな皿を抱えたナマエ。その上にはふっくらとしたシュークリームがいくつも乗っている。
焼き菓子の類を作っているのは間違いない。ただ、その幅が広いことは、妹が実家でお菓子作りをしていたから知っている。
「クッキー?」
「んーん。違うよ」
「この匂い腹減るんだけど」
すっかり空腹を訴える身体に、いますぐ何かを摘みたい衝動が湧き上がる。けれどそんなことをしたらナマエの怒りを買うのは必須。
仕方がないから、同じ甘い匂いをまとっているナマエを腕の中に閉じ込めて、その匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。
「ねえ、くすぐったい」
「すっごい甘い匂い」
身を捩って、喉を鳴らして笑う。その声を聞けば余計に腹が減る気がした。低い位置にある肩に額を押し付ければ、ナマエが空気を揺らす振動は増す。
お題:堅治にシュークリームを作る話
#HQプラス #819プラス #HQ夢 ✩ フタクチ
こんがりとした甘い匂いが部屋中に充満する。絶対にキッチンに入るなという命令を受けて、仕方がなくソファーの上でゲームをしているけれど、正直この匂いは気になって仕方がない。
「あと三十分ね」
捲っていた袖を正しながら、隣りに座ったナマエは甘い香りをまとっていた。
「何作ってんの?」
「ないしょ~」
ふふふ~、と上機嫌に目を細めて微笑んだナマエに、ぐっと押し黙る。押し問答を繰り返してみてもいいけれど、こうして笑われてしまうとついつい言う事を聞いてしまいたくなる。部屋中を満たす甘い匂いからして、
期待してもいいだろうか。
ただのクラスメイトのいまは、抱きしめることはできない。だから、かわりに大好きを込めて君に伝えるな。
「ありがとう」
「どうしても試合前に渡しておきたくて」
ポケットから取り出されたのは、必勝祈願の御守り。視線は手元と俺の顔を行ったり来たりして定まらない。
込み上げてくるのは当然喜び。嬉しくて、嬉しくて、叫び出したいほど。だけど、そんなの格好悪いから、ぐっと喜びを飲み込んだ。
「絶対勝つ。頑張ってくるな」
「うん、応援してるね」
頬や耳が赤いのは、寒さのせいだけじゃないと思っていいのだろうか。わざわざ早朝に学校まで足を伸ばしてくれるんだから、多少自惚れたっていいだろうか。御守りまで用意してくれるんだから、