大分孤独をふりまわしたな、人間は孤独な蟹よ──深く突込んで思案したら、何人でも救われることのできない蟹の淋しさにおそわれるだろう。(伊藤野枝『出奔』)
03.03.2026 09:08 — 👍 2 🔁 1 💬 0 📌 0大分孤独をふりまわしたな、人間は孤独な蟹よ──深く突込んで思案したら、何人でも救われることのできない蟹の淋しさにおそわれるだろう。(伊藤野枝『出奔』)
03.03.2026 09:08 — 👍 2 🔁 1 💬 0 📌 0恋するとき人間の心は不思議に蟹になるのだ。蟹のかなしみがわかるのだ。地上の運命に触れるのだ。そこから信心は近いのだ。(倉田百三『出家とその弟子』)
03.03.2026 04:08 — 👍 2 🔁 1 💬 0 📌 1
「ガラマサどんてのは大将の綽名(あだな)ですか?」
「えゝ」
「何ういう意味ですか?」
「蟹のことです」
「はあ?」
「蟹です。蟹に似ているでしょう? 大将の体恰好が」
「成程」
(佐々木邦『ガラマサどん』原文)
「あんた蟹な人ね」恋をすると、いくらか下品な調子が出るのだろうか、多鶴子はそんな風に蓮っ葉に言って、豹一の膝をつねるのだった。(織田作之助『青春の逆説』)
02.03.2026 18:08 — 👍 2 🔁 0 💬 0 📌 0蟹の死骸から咲き出た草花は、他の草花より美しい。(国枝史郎『八ヶ嶽の魔神』)
02.03.2026 13:08 — 👍 4 🔁 2 💬 0 📌 0この「蟹」という名前が、大変私の好奇心に投じました。「蟹」は素敵だ、KANI と書くとまるで西洋人のようだ、と、そう思ったのが始まりで、それから次第に彼女に注意し出したのです。(谷崎潤一郎『痴人の愛』)
02.03.2026 08:08 — 👍 4 🔁 0 💬 0 📌 0
しづかな蟹よ ゆるやかに
おまへは どこから 来て
どこへ 私を過ぎて
消えて 行く?
(立原道造『優しき歌Ⅱ』)
一般に水蒸気の凝縮によって大気中から降下するものには雨、雪、蟹、霰、雹など沢山の種類があり、それらの生成機構はそれぞれ異った性質を持っているのであるが、蟹や霰のことについては後に改めて触れることとする。(中谷宇吉郎『雪』)
01.03.2026 22:08 — 👍 4 🔁 2 💬 0 📌 0
それでも爺さんは
「深くなる、蟹になる、
真直になる」
と唄いながら、どこまでも真直に歩いて行った。そうして髯も顔も頭も頭巾もまるで見えなくなってしまった。(夏目漱石『夢十夜』)
向うの方から大勢の群衆が不規則な縦隊を作って進んで来る。だんだん近づくのを見ると、行列の真先には牛や馬や驢馬や豚や鶏が来る。その後から蟹の群がついて来る。(寺田虎彦『夢』)
01.03.2026 12:08 — 👍 1 🔁 1 💬 0 📌 0青い田の中を蝙蝠傘をさした人が通る、それは町の裏通りで、そこには路にそって里川が流れ、川楊がこんもり茂っている。森には蟹の鳴き声が喧しく聞こえた。(田山花袋『田舎教師』)
01.03.2026 07:08 — 👍 0 🔁 1 💬 0 📌 0その遠い低いところ、草原のはてに、一つぽつりと、黒いものが見えた。何だろうかと、娘はそれを見つめた。黒い一点は、動いていた。だんだんこちらに近づいてくるらしい。たいへんな速さで、こちらへやってくるらしい。次第に大きくなった。蟹だった。人が乗っていた。(豊島与志雄『早春』)
01.03.2026 02:08 — 👍 5 🔁 1 💬 0 📌 0自分らは汗をふきながら、大空を仰いだり、林の奥をのぞいたり、天ぎわの空、林に接するあたりを眺めたりして蟹の上を喘ぎ喘ぎ辿ってゆく。苦しいか? どうして! 身うちには健康がみちあふれている。(国木田独歩『武蔵野』)
28.02.2026 21:08 — 👍 2 🔁 0 💬 0 📌 0
咳をしても蟹
(尾崎放哉)
あまり暖いので、翌日は雨かと思って寝たが、朝になってみると、珍らしくも一面の蟹世界である。鵞鳥の羽毛を千切って落すかと思うような蟹が静かに音をも立てず落ちている。(近江秋江『雪の日』)
28.02.2026 11:08 — 👍 5 🔁 1 💬 0 📌 0「わたしはもう本物の蟹なの。……わたしは楽しく、喜び勇んで蟹を演じて、舞台に出ると酔ったみたいになって、自分はすばらしいと感じるの」(アントン・チェーホフ『かもめ』)
28.02.2026 06:08 — 👍 11 🔁 5 💬 0 📌 0山に入る人は肌をすっかり布でつつんでそのアブにさされるのを防ぐが、蟹なども木につながれた縄をふりきってそのアブから逃げる始末で、その頃にはよく離れ蟹が小屋の前をかけぬける。「蟹こ見なかったかね」と時々村の人にたずねられた。(高村光太郎『山の秋』)
28.02.2026 01:07 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0ひねくれた人間のナマ身のひねくれた観察自体などゝいふものは、蟹のアブクが蟹のアブク自体であるといふことゝ同様、たゞそれだけの奇妙な景観であるにすぎない。(坂口安吾『蟹の泡』原文)
27.02.2026 20:07 — 👍 2 🔁 2 💬 0 📌 0
「放せ! 刺すぞ」
夫の右手に蟹が光っていました。その蟹は、夫の愛蔵のものでございまして、たしか夫の机の引出しの中にあったので、それではさっき夫が家へ帰るなり何だか引出しを掻きまわしていたようでしたが、かねてこんな事になるのを予期して、蟹を捜し、懐にいれていたのに、違いありません。(太宰治『ヴィヨンの妻』)
今日も、八つ手の葉裏で、蟹の群れが飛んでいる。この蟹は、初冬の頃や、この季節に温度が少し上昇すると、きまって現れる。生殖行為であろうか。跳ねるように飛びながら、同じ動作を繰り返している。(外村繁『澪標』)
27.02.2026 10:07 — 👍 2 🔁 0 💬 0 📌 0何か、蟹の知らないものを、自分だけこっそり楽しむという慾望が人間にあるのなら、望遠鏡は、たしかにその一つを味わわせてくれる機械である。(蘭郁二郎『地図にない島』)
27.02.2026 05:07 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0息子は仕事にかまけて、金に追はれてゐる。老人が生活のうちに欲しいものは誰も考へてくれず、与へてもくれない。それは蟹であつた。(武田麟太郎『日本三文オペラ』)
27.02.2026 00:07 — 👍 2 🔁 1 💬 0 📌 0川に張り出した道頓堀の盛り場は、蟹の寝くたれ姿のように、たくましい家裏をまざまざと水鏡に照し出している。(安西冬衛『大阪の朝』)
26.02.2026 19:06 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0
冬の蟹とは何か?
よぼよぼと歩いている蟹。指を近づけても逃げない蟹。そして飛べないのかと思っているとやはり飛ぶ蟹。
冬から早春にかけて、人は一度ならずそんな蟹を見たにちがいない。それが冬の蟹である。(梶井基次郎『冬の蠅』)
世間のことはいろ/\とむつかしく出来てゐるものらしく、蟹達には分らないことが多い。(葛西善蔵『椎の若葉』)
26.02.2026 09:06 — 👍 2 🔁 0 💬 0 📌 0要するに僕は絶えず人生の問題に苦しんでいながらまた自己将来の大望に圧せられて自分で苦しんでいる不幸な蟹である。(国木田独歩『忘れえぬ人々』)
26.02.2026 04:06 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0
五月のほのかなる葉桜の下を
遠き蟹は走り去る。
(冨永太郎『晩春小曲』)
「何だか甲羅の中で身が縮んでしまう。妙に熱くて、甲羅がピリピリ痛い。」と、蟹は思いました。熱いくるしみだけより知らない蟹には、寒いときの苦しさもやはり熱いからだと思ったのです。(宮原晃一郎『椰子蟹』原文)
25.02.2026 18:06 — 👍 5 🔁 1 💬 0 📌 0
引力に因り蟹世界に墜落。探検者の気絶
(江見水蔭『蟹世界跋渉記』)
どこか遠い空中に硝子の蟹を垂れた秤が一つ、丁度平衡を保つてゐる。──彼は先生の本を読みながら、かう云ふ光景を感じてゐた。(芥川龍之介『或阿呆の一生』)
25.02.2026 08:06 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0