ハリガネ@遅筆's Avatar

ハリガネ@遅筆

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Latest posts by harigane823.bsky.social on Bluesky

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📕🍹で140文字
「同じ顔、同じ傷」
⚠️転生

#とある無機物のホンライ雑録

11.07.2025 11:16 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.212
「海軍と書いて鬼ごっこ相手と読む」

#とある無機物のホンライ雑録

01.07.2025 11:05 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.207
「情報収集が得意なもので」

#とある無機物のホンライ雑録

25.06.2025 10:17 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.206
「一番怒らせたらいけない男」

#とある無機物のホンライ雑録

24.06.2025 10:36 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

ありがとう!そう言ってもらえてめちゃ嬉しい🥰

21.06.2025 10:35 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.205
「心を許した獣の可愛さは異常だと思う」

#とある無機物のホンライ雑録

21.06.2025 10:34 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.204
「俺が唯一、アイツにできること」

#とある無機物のホンライ雑録

20.06.2025 10:49 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

私もすごい好き😊
たまにこう言うシチュ書きたくなっちゃうんだよね......

19.06.2025 10:12 — 👍 1    🔁 0    💬 1    📌 0
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📕🍹で140文字 No.203
「迷信と言うにはあまりにも」

#とある無機物のホンライ雑録

19.06.2025 10:11 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.202
「孤独な暗闇」

#とある無機物のホンライ雑録

18.06.2025 10:24 — 👍 1    🔁 0    💬 1    📌 0
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📕🍹で140文字 No.201
「火照る肌、目立つ赤」

#とある無機物のホンライ雑録

17.06.2025 10:10 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.200
「ライラを一杯頼んでも?」

#とある無機物のホンライ雑録

16.06.2025 10:38 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.199
「俺の相棒がこんな弱い訳が無い」

#とある無機物のホンライ雑録

15.06.2025 10:07 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.198
「よふかしたのし」

#とある無機物のホンライ雑録

14.06.2025 11:17 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.197
「一つ歳を取る前に」

#とある無機物のホンライ雑録

13.06.2025 10:51 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.196
「いつかは俺が、その指に」

#とある無機物のホンライ雑録

12.06.2025 11:38 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.195
「まんざらでもない」

#とある無機物のホンライ雑録

11.06.2025 10:08 — 👍 1    🔁 1    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.194
「かわいいのフィルター」

#とある無機物のホンライ雑録

10.06.2025 11:29 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.192
「愛ある拘束」

#とある無機物のホンライ雑録

07.06.2025 10:48 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.191
「俺には勿体なさすぎるくらいに」

#とある無機物のホンライ雑録

06.06.2025 11:13 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.189
「夏場のアイスはすぐ溶ける」

#とある無機物のホンライ雑録

04.06.2025 08:53 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.188
「しあわせなまどろみ」

#とある無機物のホンライ雑録

03.06.2025 08:53 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.187
「魅惑の声」

#とある無機物のホンライ雑録

02.06.2025 10:26 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.186
「40℃の俺と平熱のアイツ」

#とある無機物のホンライ雑録

01.06.2025 10:26 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

Twitterで投稿している📕🍹の140文字を、こちらでも投稿始めました!

31.05.2025 10:42 — 👍 2    🔁 0    💬 0    📌 0
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📕🍹で140文字 No.185
「これでおあいこ」

#とある無機物のホンライ雑録

31.05.2025 10:40 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
「……自分でも良く分からねぇ。でも惚れ込んでなきゃ、医者がこの歳で独身なんかやってねぇとは思うんだ」
 沈んだ顔から一転、ホンゴウは困ったように笑いながら俺にそう言って見せた。
 周りの歳が近い奴らは結婚がどうだ、家を建てるのがどうだと話していたっけ。お見合いの話ってのも耳にタコが出来るくらい聞かされてきた。
 俺らは恋人では無い。でももしこの世が俺たちを認めてくれたなら、俺に勇気があったなら……どうなっていただろうかと思う時がある。指を繋ぎながら歩いたり、唇に触れたり、その先だってもしかしたらと。
「ホンゴウ」
「ん?」
 俺は短くなったタバコを灰皿に押し付けて殺し、開けたばかりのPiratesをくずかごに放り投げた。あれだけ手放せないと思っていた執着を無理やり引き剥がした瞬間、思っていたよりずっと胸がすく感覚がした。
「……え、ライム」
「シガレット、まだあるだろ?」
 ホンゴウは信じられないものを見るように目を見開きながら、濃い青色の箱を俺に手渡した。ラスト二本のそれを一本つまんで、俺は甘い後味の残る口で咥えた。……煙と混ざって変な味がする。正直マズイ。
「っち、タバコの後に食うもんじゃねェな」
「なあライム。どう言う風の、吹き回しだ?」
 目の前の男はポカンと呆気に取られた顔のまま、俺にそう聞いてきた。
「お前は俺に惚れてんだろ? なら、惚れ直して

「……自分でも良く分からねぇ。でも惚れ込んでなきゃ、医者がこの歳で独身なんかやってねぇとは思うんだ」  沈んだ顔から一転、ホンゴウは困ったように笑いながら俺にそう言って見せた。  周りの歳が近い奴らは結婚がどうだ、家を建てるのがどうだと話していたっけ。お見合いの話ってのも耳にタコが出来るくらい聞かされてきた。  俺らは恋人では無い。でももしこの世が俺たちを認めてくれたなら、俺に勇気があったなら……どうなっていただろうかと思う時がある。指を繋ぎながら歩いたり、唇に触れたり、その先だってもしかしたらと。 「ホンゴウ」 「ん?」  俺は短くなったタバコを灰皿に押し付けて殺し、開けたばかりのPiratesをくずかごに放り投げた。あれだけ手放せないと思っていた執着を無理やり引き剥がした瞬間、思っていたよりずっと胸がすく感覚がした。 「……え、ライム」 「シガレット、まだあるだろ?」  ホンゴウは信じられないものを見るように目を見開きながら、濃い青色の箱を俺に手渡した。ラスト二本のそれを一本つまんで、俺は甘い後味の残る口で咥えた。……煙と混ざって変な味がする。正直マズイ。 「っち、タバコの後に食うもんじゃねェな」 「なあライム。どう言う風の、吹き回しだ?」  目の前の男はポカンと呆気に取られた顔のまま、俺にそう聞いてきた。 「お前は俺に惚れてんだろ? なら、惚れ直して

欲しいってだけだ」
 これは正真正銘俺の本音。重く大きすぎる、執着にも似た愛情を俺はさっきホンゴウから受け取った。でも俺だって一緒に生きたいって想いは負けてないし、負けたくない。同じ気持ちだって知って欲しい。
 ……だから俺はコイツの目の前でタバコを捨てた。もちろん後からこっそり拾って吸おうなんて思ってない。俺はもう、無二の友人のあんな(・・・)顔は見たくもねェし、させたくもねェ。
「……今のライム見て、惚れ直さねぇ方が無理だな」
 表情を柔らかく緩ませ、ゆっくり立ち上がったホンゴウは持っていたタバコを砂糖菓子に変えて、再び俺の隣に座り込んだ。
 さっきまでは手の届かない距離にいた友人。今は互いの肩が触れる距離で、子供騙しの砂糖菓子を分け合って味わっている。
その肩越しに伝わる仄かな体温に、鼻と喉を満たす淡い清涼感。……それがただ、ひたすらに心地良かった。

欲しいってだけだ」  これは正真正銘俺の本音。重く大きすぎる、執着にも似た愛情を俺はさっきホンゴウから受け取った。でも俺だって一緒に生きたいって想いは負けてないし、負けたくない。同じ気持ちだって知って欲しい。  ……だから俺はコイツの目の前でタバコを捨てた。もちろん後からこっそり拾って吸おうなんて思ってない。俺はもう、無二の友人のあんな(・・・)顔は見たくもねェし、させたくもねェ。 「……今のライム見て、惚れ直さねぇ方が無理だな」  表情を柔らかく緩ませ、ゆっくり立ち上がったホンゴウは持っていたタバコを砂糖菓子に変えて、再び俺の隣に座り込んだ。  さっきまでは手の届かない距離にいた友人。今は互いの肩が触れる距離で、子供騙しの砂糖菓子を分け合って味わっている。 その肩越しに伝わる仄かな体温に、鼻と喉を満たす淡い清涼感。……それがただ、ひたすらに心地良かった。

(10/10)

01.04.2025 13:11 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
ちまうぞ』って口酸っぱく言っていたホンゴウが、タバコを吸い始めたのは。
「手本ね……これでもお前が俺の隣でタバコを吸い始めた時は、本当に驚いたんだぜ?」
 ホンゴウは大抵、口内で煙と風味を味わうだけ。一度盛大に咽せてからは、この吸い方で落ち着いてる。
「医者がタバコで早死にしちゃあ説得力無いんじゃねェの?」
「暇がありゃスパスパ吸ってるお前には言われたくねぇなあ」
 ガラスの灰皿には一箱分のタバコの死骸。それも肺まで煙を満たす吸い方で最後まで味わい尽くしたヤツ。その死骸たちを見つめながらホンゴウは口を開く。
「なぁライム。俺がどうしてタバコ吸い始めたか、お前に教えたっけか」
「あ? 教えられてはねェな。もしかして俺が吸ってるのを見て吸いたくなっちまったとか?」
「半分正解、かな。じゃあもう一つ。お前がタバコを吸う時、いつも俺が風下にいるのはどうしてだと思う?」
 俺が煙を吐けばその煙はホンゴウの元を一度通ってから消えていく。隣にいる事が多かったとはいえ、コイツは意識的に風下に行っていたらしい。でも、わざわざそうする理由までは分からなかった。
「……どうしてなんだ」
 にこにこと微笑みを崩さずに、ホンゴウは白煙を外に吐き出した。
「正解は、俺が喫煙者になるよりも早く死ねると思ったから」

ちまうぞ』って口酸っぱく言っていたホンゴウが、タバコを吸い始めたのは。 「手本ね……これでもお前が俺の隣でタバコを吸い始めた時は、本当に驚いたんだぜ?」  ホンゴウは大抵、口内で煙と風味を味わうだけ。一度盛大に咽せてからは、この吸い方で落ち着いてる。 「医者がタバコで早死にしちゃあ説得力無いんじゃねェの?」 「暇がありゃスパスパ吸ってるお前には言われたくねぇなあ」  ガラスの灰皿には一箱分のタバコの死骸。それも肺まで煙を満たす吸い方で最後まで味わい尽くしたヤツ。その死骸たちを見つめながらホンゴウは口を開く。 「なぁライム。俺がどうしてタバコ吸い始めたか、お前に教えたっけか」 「あ? 教えられてはねェな。もしかして俺が吸ってるのを見て吸いたくなっちまったとか?」 「半分正解、かな。じゃあもう一つ。お前がタバコを吸う時、いつも俺が風下にいるのはどうしてだと思う?」  俺が煙を吐けばその煙はホンゴウの元を一度通ってから消えていく。隣にいる事が多かったとはいえ、コイツは意識的に風下に行っていたらしい。でも、わざわざそうする理由までは分からなかった。 「……どうしてなんだ」  にこにこと微笑みを崩さずに、ホンゴウは白煙を外に吐き出した。 「正解は、俺が喫煙者になるよりも早く死ねると思ったから」

「……は」
「知ってるだろ? 喫煙者よりも喫煙者の吐く煙の方が毒が強いって。それに俺は、苦い煙よりも甘い砂糖菓子の方がずっと好きだ」
 コイツ今、なんて言った。早く死ねるって言ったよな?しかも吸いたくて吸っている訳じゃないときた。
「おい待て、死にたくて俺の側でタバコを吸ってる? バカ言ってんじゃ――」
「バカ言ってんのはどっちだ?」
 心臓が縮こまる様な低い声がした。静かな怒りを称えたような、そんな声。俺の中で沸々と湧き上がっていた苛立ちを一瞬忘れちまうくらいの。
「俺は何度もお前に言った。医者としてタバコで死んだ患者を何人も見てきたって。友人としてそれは見過ごせねぇって……なのにお前は、俺の前でヘラヘラ笑いながら今日もタバコを咥えてる」
 その目に光は無く、何度もホンゴウと喧嘩してきた俺でさえ見た事がない顔をしていた。怒っているはずなのに、感情が見えない。それが俺の中にある恐怖心を掻き立てる。
「お前とできるだけ長く一緒にいたいって思ってるのは俺だけか? 大事な友人を失いたく無いと思うのは俺だけか?」
「そんな訳ねェだろ‼︎ でももう俺は、お前に会う前からこれが身に染みついちまってる。今更やめるなんて……」
「できないって?」
 怒気を孕んだ自分の声は情けなく萎んでいった。俺はできるともできないとも答えられなかった。黙り込めば勝手に灰が落ちていく。
「……うん。分かってた。分かってたよ。こうで

「……は」 「知ってるだろ? 喫煙者よりも喫煙者の吐く煙の方が毒が強いって。それに俺は、苦い煙よりも甘い砂糖菓子の方がずっと好きだ」  コイツ今、なんて言った。早く死ねるって言ったよな?しかも吸いたくて吸っている訳じゃないときた。 「おい待て、死にたくて俺の側でタバコを吸ってる? バカ言ってんじゃ――」 「バカ言ってんのはどっちだ?」  心臓が縮こまる様な低い声がした。静かな怒りを称えたような、そんな声。俺の中で沸々と湧き上がっていた苛立ちを一瞬忘れちまうくらいの。 「俺は何度もお前に言った。医者としてタバコで死んだ患者を何人も見てきたって。友人としてそれは見過ごせねぇって……なのにお前は、俺の前でヘラヘラ笑いながら今日もタバコを咥えてる」  その目に光は無く、何度もホンゴウと喧嘩してきた俺でさえ見た事がない顔をしていた。怒っているはずなのに、感情が見えない。それが俺の中にある恐怖心を掻き立てる。 「お前とできるだけ長く一緒にいたいって思ってるのは俺だけか? 大事な友人を失いたく無いと思うのは俺だけか?」 「そんな訳ねェだろ‼︎ でももう俺は、お前に会う前からこれが身に染みついちまってる。今更やめるなんて……」 「できないって?」  怒気を孕んだ自分の声は情けなく萎んでいった。俺はできるともできないとも答えられなかった。黙り込めば勝手に灰が落ちていく。 「……うん。分かってた。分かってたよ。こうで

も言えば、タバコを少しでも控えてくれるかなって思っただけ」
 ホンゴウは力なく微笑んだ後、再びタバコに口付けた。
「でも、さっきのは本気だろ。『早く死ぬため』って」
「いやいや、あれが本気な訳」
「言えホンゴウ。言わねェなら俺はもう一本行くぞ」
 コイツは嘘を吐く時、唇を噛み締めるんだ。下唇を上の前歯で軽く食んで、嘘を悟らせないようにわざとらしく声色を変えて。
 ホンゴウは逸らしていた目線を俺に向ける。そして一言。
「……本気だよ」
 刹那、頭から氷水をかけられたように体が一気に冷え切った。
「俺も隣でタバコを吸ってた方が、お前と離れ離れになる時間が少なくて済むと思ったんだ。今のこの時間も一緒にいられるし……たとえお前が死んだって、肺を黒くしておけばすぐに後を追えるしな」
「そんなの」
「でももう言わない。お前がそれと一緒に死ぬつもりなら、俺も隣に居させて。今の俺の望みはそれだけ」
 そこまでして俺と居たいのか。自分の命を削る事になっても、お前は俺の隣に居続けたいのか。ものすごく嬉しいはずなのに、心臓と喉がぎりりと締まっていく感覚がした。きっとこれはタバコのせいじゃない。
「……ホンゴウ、もし俺がタバコやめたら」

も言えば、タバコを少しでも控えてくれるかなって思っただけ」  ホンゴウは力なく微笑んだ後、再びタバコに口付けた。 「でも、さっきのは本気だろ。『早く死ぬため』って」 「いやいや、あれが本気な訳」 「言えホンゴウ。言わねェなら俺はもう一本行くぞ」  コイツは嘘を吐く時、唇を噛み締めるんだ。下唇を上の前歯で軽く食んで、嘘を悟らせないようにわざとらしく声色を変えて。  ホンゴウは逸らしていた目線を俺に向ける。そして一言。 「……本気だよ」  刹那、頭から氷水をかけられたように体が一気に冷え切った。 「俺も隣でタバコを吸ってた方が、お前と離れ離れになる時間が少なくて済むと思ったんだ。今のこの時間も一緒にいられるし……たとえお前が死んだって、肺を黒くしておけばすぐに後を追えるしな」 「そんなの」 「でももう言わない。お前がそれと一緒に死ぬつもりなら、俺も隣に居させて。今の俺の望みはそれだけ」  そこまでして俺と居たいのか。自分の命を削る事になっても、お前は俺の隣に居続けたいのか。ものすごく嬉しいはずなのに、心臓と喉がぎりりと締まっていく感覚がした。きっとこれはタバコのせいじゃない。 「……ホンゴウ、もし俺がタバコやめたら」

 込み上げるように出た言葉は、友人を振り向かせるには力不足だった。
「約束する。もう絶対に一日に一箱潰すような吸い方はしねェ。少しづつでも減らす努力はする」
「……本当?」
「もちろん本当だ。だから、後を追うなんて馬鹿げた事言うな。こんなの……お前らしくない」
 今俺が持っている数センチの紙筒。その先からゆらめく煙がホンゴウに纏わりついて、今も少しずつ友人を蝕んでいるように見える。
「いいや、これも俺だよ。ずっと隠してただけ。女々しくて重い奴だと思われたくなくて、嫌われたくなくて、頑張って取り繕ってただけ」
 未だ友人の表情は落ちたまま。俯きながらタバコを咥え、ホンゴウは深呼吸をひとつ。本音と共に色が薄くなった煙がふわりと揺蕩い消える。憂を帯びた瞳は瞼で閉ざされ、無色透明の溜息が胡座の上に落ちた。
 深く煙を吸い込んでいたはずなのに、コイツがむせる事は無かった。……きっと、慣れちまったんだ。俺の隣でタバコを吸う生活に。その事実に、目の前が少しずつ暗くなっていく。
「ホンゴウ。お前、相当俺の事気に入ってんだな」
「そうだな。お前が思ってるよりずっと、俺はライムの事を考えてるかもしれねぇ」
「俺のどこがいいんだよ。教えてくれ。タバコすらやめられない俺と、どうしてそこまでして一緒にいたいんだ」
 その質問に友人は目を瞑りながら考え込み始めた。時間として十数秒の沈黙。互いに煙だけは真っ直ぐに伸びて、灰色が耐え切れずに落ちて行った。

 込み上げるように出た言葉は、友人を振り向かせるには力不足だった。 「約束する。もう絶対に一日に一箱潰すような吸い方はしねェ。少しづつでも減らす努力はする」 「……本当?」 「もちろん本当だ。だから、後を追うなんて馬鹿げた事言うな。こんなの……お前らしくない」  今俺が持っている数センチの紙筒。その先からゆらめく煙がホンゴウに纏わりついて、今も少しずつ友人を蝕んでいるように見える。 「いいや、これも俺だよ。ずっと隠してただけ。女々しくて重い奴だと思われたくなくて、嫌われたくなくて、頑張って取り繕ってただけ」  未だ友人の表情は落ちたまま。俯きながらタバコを咥え、ホンゴウは深呼吸をひとつ。本音と共に色が薄くなった煙がふわりと揺蕩い消える。憂を帯びた瞳は瞼で閉ざされ、無色透明の溜息が胡座の上に落ちた。  深く煙を吸い込んでいたはずなのに、コイツがむせる事は無かった。……きっと、慣れちまったんだ。俺の隣でタバコを吸う生活に。その事実に、目の前が少しずつ暗くなっていく。 「ホンゴウ。お前、相当俺の事気に入ってんだな」 「そうだな。お前が思ってるよりずっと、俺はライムの事を考えてるかもしれねぇ」 「俺のどこがいいんだよ。教えてくれ。タバコすらやめられない俺と、どうしてそこまでして一緒にいたいんだ」  その質問に友人は目を瞑りながら考え込み始めた。時間として十数秒の沈黙。互いに煙だけは真っ直ぐに伸びて、灰色が耐え切れずに落ちて行った。

(10/8)

01.04.2025 13:11 — 👍 0    🔁 0    💬 1    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「燻る情愛 煙と揺蕩え」、「@Harigane_81」と記載されています。
画像情報:generated by 新書ページメーカー / フォント:源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

 自転車を漕ぐ小せェガキ、買い物帰りの婦人。この時間帯になると人間の種類が少しづつ増えていく。俺はタバコを咥えながら、その情景を二階からぼうっと見下ろしていた。アイツは俺を呼び出して置いて、まだ書斎に篭っているらしい。『この論文書き終えるまで』だなんて言ってたのに。灰皿にはタバコの死骸が数本。濃紺の着流しにも匂いが染み付いちまうくらいには暇を持て余しちまって。
「待たせたなライム」
 灰色の着流しに身を包み、麦色の髪を後ろで結えながら友人は俺の目の前に現れた。数時間前に会った時よりもげっそりとくたびれているように見える。
「やっと終わったのか」
「ああやっとな。俺にもそれくれよ」
「あいにく今俺が吸ってるので最後だ」
「そっか、そりゃあ残念」
「……お前俺を呼び出してから何時間経ってると思ってんだ?」
 振り子時計を指差しながらそう問えば、友人の眉はハの字にしゅんと垂れ下がった。
「悪い悪い、思っていたより全然終わらなくって……待たせちまったお詫びに何か奢るよ。何がいい?」
「コロッケ」
 腹の虫が何かを寄越せとさっきからうるさくて仕方ねェんだ。だから商店街の肉屋が売ってるあのコロッケが食べたい。
 入っている具がじゃがいもだけの素朴なそれは、いつも揚げたてでほくほくで馬鹿みたいに美味ェ。いくつかコロッケを売っている店は知っているが、

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「燻る情愛 煙と揺蕩え」、「@Harigane_81」と記載されています。 画像情報:generated by 新書ページメーカー / フォント:源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。  自転車を漕ぐ小せェガキ、買い物帰りの婦人。この時間帯になると人間の種類が少しづつ増えていく。俺はタバコを咥えながら、その情景を二階からぼうっと見下ろしていた。アイツは俺を呼び出して置いて、まだ書斎に篭っているらしい。『この論文書き終えるまで』だなんて言ってたのに。灰皿にはタバコの死骸が数本。濃紺の着流しにも匂いが染み付いちまうくらいには暇を持て余しちまって。 「待たせたなライム」  灰色の着流しに身を包み、麦色の髪を後ろで結えながら友人は俺の目の前に現れた。数時間前に会った時よりもげっそりとくたびれているように見える。 「やっと終わったのか」 「ああやっとな。俺にもそれくれよ」 「あいにく今俺が吸ってるので最後だ」 「そっか、そりゃあ残念」 「……お前俺を呼び出してから何時間経ってると思ってんだ?」  振り子時計を指差しながらそう問えば、友人の眉はハの字にしゅんと垂れ下がった。 「悪い悪い、思っていたより全然終わらなくって……待たせちまったお詫びに何か奢るよ。何がいい?」 「コロッケ」  腹の虫が何かを寄越せとさっきからうるさくて仕方ねェんだ。だから商店街の肉屋が売ってるあのコロッケが食べたい。  入っている具がじゃがいもだけの素朴なそれは、いつも揚げたてでほくほくで馬鹿みたいに美味ェ。いくつかコロッケを売っている店は知っているが、

あの安さであの美味さを提供できる店は、あそこしか知らない。
「了解。ライムも一緒に行くだろ?」
 ホンゴウは微笑みながらがま口の財布を懐に入れ、ギィギィと軋む階段を先導するように降りていく。
「もちろん。お前は寄るところとかねェの?」
「んー……考えてねぇや。駄菓子屋で飴でも買おうかな」
 コイツは口寂しくなる時によく舐めてる。ニッキやハッカ、黒飴もよく舐めてる。舐めるもんがなくて台所のザラメ食ってた時は俺ですら引いたけど。
 頬を撫でる風はひんやりと心地よく、橙色の陽が俺とホンゴウの影を長く伸ばしていた。商店街までは歩いて五分も掛からない。コイツの隣を歩き続けているうちに人通りや声が少しづつ増え、腹が空く匂いが濃くなり始めた。
 ホンゴウが頼んだコロッケの数は三つ。『誰かにやるのか?』と聞けば『これはお前の分』と俺の両手に熱々のコロッケが二つ手渡された。
 空きっ腹に嬉しい温もりが二つ。きっとこのまま食えば火傷する。でも俺は我慢できずに湯気ごと頬張った。
「あ゛っつ! あふ……うま……」
 甘くてなめらかな芋が美味い。大きな口でさくり、さくり。冷めないうちにもう一個。俺が二つ食べ終わった頃に、ホンゴウも一つ食べ終えた。
 タバコ屋と駄菓子屋は商店街の外れ。婦人服店と布団屋の間の路地から進めば近道だったはず。俺はホンゴウの『ここは猫が通る道だろ?』の言葉を無視して先を歩く。二人で横並びで通れば浴

あの安さであの美味さを提供できる店は、あそこしか知らない。 「了解。ライムも一緒に行くだろ?」  ホンゴウは微笑みながらがま口の財布を懐に入れ、ギィギィと軋む階段を先導するように降りていく。 「もちろん。お前は寄るところとかねェの?」 「んー……考えてねぇや。駄菓子屋で飴でも買おうかな」  コイツは口寂しくなる時によく舐めてる。ニッキやハッカ、黒飴もよく舐めてる。舐めるもんがなくて台所のザラメ食ってた時は俺ですら引いたけど。  頬を撫でる風はひんやりと心地よく、橙色の陽が俺とホンゴウの影を長く伸ばしていた。商店街までは歩いて五分も掛からない。コイツの隣を歩き続けているうちに人通りや声が少しづつ増え、腹が空く匂いが濃くなり始めた。  ホンゴウが頼んだコロッケの数は三つ。『誰かにやるのか?』と聞けば『これはお前の分』と俺の両手に熱々のコロッケが二つ手渡された。  空きっ腹に嬉しい温もりが二つ。きっとこのまま食えば火傷する。でも俺は我慢できずに湯気ごと頬張った。 「あ゛っつ! あふ……うま……」  甘くてなめらかな芋が美味い。大きな口でさくり、さくり。冷めないうちにもう一個。俺が二つ食べ終わった頃に、ホンゴウも一つ食べ終えた。  タバコ屋と駄菓子屋は商店街の外れ。婦人服店と布団屋の間の路地から進めば近道だったはず。俺はホンゴウの『ここは猫が通る道だろ?』の言葉を無視して先を歩く。二人で横並びで通れば浴

衣が汚れてしまうくらいの細い道。俺は誰も見ていないのをいい事にホンゴウの手を引いてその道を駆け抜けた。
 開けた空き地に出ればもうすぐ。この時間は縄跳びで駆けたり、石灰で地面に落書きをして遊んでいるガキが沢山いる。その騒がしさの中を通り抜け、二つ目の十字路を右に曲がれば、お馴染みの赤い看板が見えてくる。
 俺はこの看板の前で立ち止まり、ホンゴウはその数十メートル先の店に向かって行った。
「これと同じタバコを買いたいんだ。あとマッチを一つ」
 懐に予め入れておいたがま口から大まかな金額を差し出して、俺は二つの箱を受け取った。パイプが描かれている小さい箱と、白文字でPiratesと書かれた紺色の箱。ほくほくとした気持ちで、俺は友人がいる駄菓子屋に向かう。
 きっとまたうんうん唸りながら今日買う飴を迷っているだろうから、一緒に決めてやるんだ。

「なぁライム。タバコ代わりにこれ食えば良いんじゃねぇの? その方が健康にだっていいしさ」
「……本気かお前」
 ホンゴウが俺に差し出したのは濃い青色のパッケージ。俺はコイツの揶揄いに呆れながら、一列に並んだ茶色混じりの白を端から抜き取り、ぽり、と齧った。
 ……ほんのりとココアの味。そしてハッカの清涼感が口の中に広がり鼻に抜ける。こり、ぽりと食べ進め、砂糖菓子はあっという間に胃に収まった。
「やっぱタバコの方が美味い」

衣が汚れてしまうくらいの細い道。俺は誰も見ていないのをいい事にホンゴウの手を引いてその道を駆け抜けた。  開けた空き地に出ればもうすぐ。この時間は縄跳びで駆けたり、石灰で地面に落書きをして遊んでいるガキが沢山いる。その騒がしさの中を通り抜け、二つ目の十字路を右に曲がれば、お馴染みの赤い看板が見えてくる。  俺はこの看板の前で立ち止まり、ホンゴウはその数十メートル先の店に向かって行った。 「これと同じタバコを買いたいんだ。あとマッチを一つ」  懐に予め入れておいたがま口から大まかな金額を差し出して、俺は二つの箱を受け取った。パイプが描かれている小さい箱と、白文字でPiratesと書かれた紺色の箱。ほくほくとした気持ちで、俺は友人がいる駄菓子屋に向かう。  きっとまたうんうん唸りながら今日買う飴を迷っているだろうから、一緒に決めてやるんだ。 「なぁライム。タバコ代わりにこれ食えば良いんじゃねぇの? その方が健康にだっていいしさ」 「……本気かお前」  ホンゴウが俺に差し出したのは濃い青色のパッケージ。俺はコイツの揶揄いに呆れながら、一列に並んだ茶色混じりの白を端から抜き取り、ぽり、と齧った。  ……ほんのりとココアの味。そしてハッカの清涼感が口の中に広がり鼻に抜ける。こり、ぽりと食べ進め、砂糖菓子はあっという間に胃に収まった。 「やっぱタバコの方が美味い」

「栄養ドリンク味のもあったけど、そっちの方が良かったかな」
 ホンゴウもシガレットを一本取り出し口に咥えた。
「俺はこの味も好きだけど」
 ぽりぽりと食べ進め二本目に手を伸ばしたホンゴウを横目に、俺はマッチの箱を手に取った。
 赤い薬の箇所で箱の側面を擦れば、つんと鼻を柔く刺す火薬の匂いがした。その小さな灯火でタバコを付けて俺は深く息を吸い込む。
「……っはぁ」
 ほろ苦い、でも立ち昇る煙と後味は微かに甘い。だからくせになる。肺を埋め尽くした空気と煙を空に向かって吐けば、雲ひとつ無い夕焼けに薄い雲がかかった。
 ほんの少しの命と引き換えに、心が凪ぐような安堵を。俺はこの快感を知った時から肌身離さずタバコとマッチ、携帯灰皿を持ち歩かなくちゃ気が済まなくなった。何度か断とうと思った事もあるが、毎度失敗に終わっている。
 ふと隣を見ると、ホンゴウもごつごつと関節が目立つ指でタバコを挟みふかしていた。……俺のタバコ、勝手に一本持っていきやがったな。
 吐いた煙は俺よりも丸く白い。優しく揺蕩いながら消えていく。どこか物憂げな顔をしながら吸っているものだから、余計に二枚目を引き立てていた。
「っはは。様になってるな」
「そりゃあ、いつも近くに手本がいるからな」
 にこりと微笑みながらホンゴウは自分の持っているタバコで俺を指す。
 いつからだろう。『肺が黒くなるぞ』『早死にし

「栄養ドリンク味のもあったけど、そっちの方が良かったかな」  ホンゴウもシガレットを一本取り出し口に咥えた。 「俺はこの味も好きだけど」  ぽりぽりと食べ進め二本目に手を伸ばしたホンゴウを横目に、俺はマッチの箱を手に取った。  赤い薬の箇所で箱の側面を擦れば、つんと鼻を柔く刺す火薬の匂いがした。その小さな灯火でタバコを付けて俺は深く息を吸い込む。 「……っはぁ」  ほろ苦い、でも立ち昇る煙と後味は微かに甘い。だからくせになる。肺を埋め尽くした空気と煙を空に向かって吐けば、雲ひとつ無い夕焼けに薄い雲がかかった。  ほんの少しの命と引き換えに、心が凪ぐような安堵を。俺はこの快感を知った時から肌身離さずタバコとマッチ、携帯灰皿を持ち歩かなくちゃ気が済まなくなった。何度か断とうと思った事もあるが、毎度失敗に終わっている。  ふと隣を見ると、ホンゴウもごつごつと関節が目立つ指でタバコを挟みふかしていた。……俺のタバコ、勝手に一本持っていきやがったな。  吐いた煙は俺よりも丸く白い。優しく揺蕩いながら消えていく。どこか物憂げな顔をしながら吸っているものだから、余計に二枚目を引き立てていた。 「っはは。様になってるな」 「そりゃあ、いつも近くに手本がいるからな」  にこりと微笑みながらホンゴウは自分の持っているタバコで俺を指す。  いつからだろう。『肺が黒くなるぞ』『早死にし

「タバコ吸ってるこんなホラが見たい」ってアイデア頂いて書いたら楽しくなっちゃった、昭和っぽいパロディ📕🍹

「燻る情愛 煙と揺蕩え」
(10/4)

01.04.2025 13:10 — 👍 0    🔁 0    💬 1    📌 0

新刊が全部パロディのせいで、海賊軸の二人のお話が書きたくなる禁断症状が出てきてる。そしてRがつくお話も書きたくなってきてる。時間と頭と腕が足りないので誰かにめちゃくちゃ借りたい......

10.01.2025 06:12 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

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