駄ウサギの焼肉。

イタリア、ヴェローナ。
世界的にも有名な劇場で開かれたオペラコンサートで、未だあどけなさを残す顔立ちの日本人女性が堂々とスポットライトを浴びていた。
長く艶やかな黒髪を風に遊ばせ、くるりくるりと舞いながら、天まで届けとばかりに声を響かせる。
楽奏の盛り上がりすら超える伸びやかな声に誰しもが圧倒され、息継ぎさえも忘れるほど。びりびりと心腑まで震わせる歌声に釘付けにされる。一挙手一投足から目を離せず、ただ彼女の世界に引き込まれるばかり。やがて、高らかに章節を歌い上げた彼女を闇が包み、舞台の暗転を以て観客達は呼吸を取り戻した。
彼女の名は北上麗花。天才少女の名を縦にしたオペラ歌手だ。

"この指先は雲を薙ぎ、この足跡は地を巻き上げる
大いなる風よ、我と共に駆けよ
疾く、高く、この空で踊ろうか

高らかに奏でよ、この舞踏に調べを添えよ
肌を打つ雨を祝福と呼ぼう
叫べ 謳え 遥か彼方へ響き渡れ
ああ、そうだ 聞くがいい
我が名こそは 嵐の女王！"

───北上麗花『嵐の女王(Regina delle Tempeste)』 序幕 より

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てすと

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