U吉's Avatar

U吉

@aonoridon.bsky.social

野球の話したりしゅわるの話したりジャンル雑多垢 読み物垂れ流したり空リプしたり

17 Followers  |  17 Following  |  596 Posts  |  Joined: 20.11.2024  |  2.6064

Latest posts by aonoridon.bsky.social on Bluesky

いな。あの場所はきっとあの子の大事なところで、迷子を匿ってくれただけなのだろうから。言いそびれてしまったお礼を、いつか。
 
 
「おお、こんにちは。息災かね」
 試験は終わったのか? と問われ、ぼちぼちと答える。いつものやりとり。
 
 結局あの後自制が出来ず、こっそりあの場所に記憶を頼りになんとか向かうと、そこには人の姿の狐が静かに座っていた。こちらの姿を認めると手を挙げて、風邪はひかなかったか? と訊ねた。どこまでもお人好しの狐だった。あのときのお礼に、と差し出した油揚げを見て、箸はあるのかい? と返された。てっきりいつも狐の姿だと思い込んで箸を持参しなかった詫びに、次は菓子を持って行った。子どもの貴重な小遣いから年寄りの菓子なんて、と言われたものの、なんだかんだ食べてくれたので、理由をつけては菓子や軽食を持ってここを訪問している。
「結局、あなたは狐なの」
「ん~…昔はそうだったかな。今は人の世で言うところの、土地神ってやつらしいねえ」
「土地の神さまってこんなひっそりしたとこにいて良いの」
「今は平和だからね」
「………?」
「神に祈る必要が薄れてきたんだよ、人の信仰がないと吾みたいな小さな神の力なんて大したもんじゃない。だからお前さんのような、引っ越してきたばっかりの子に気付くのも遅れたし、家に返

いな。あの場所はきっとあの子の大事なところで、迷子を匿ってくれただけなのだろうから。言いそびれてしまったお礼を、いつか。     「おお、こんにちは。息災かね」  試験は終わったのか? と問われ、ぼちぼちと答える。いつものやりとり。    結局あの後自制が出来ず、こっそりあの場所に記憶を頼りになんとか向かうと、そこには人の姿の狐が静かに座っていた。こちらの姿を認めると手を挙げて、風邪はひかなかったか? と訊ねた。どこまでもお人好しの狐だった。あのときのお礼に、と差し出した油揚げを見て、箸はあるのかい? と返された。てっきりいつも狐の姿だと思い込んで箸を持参しなかった詫びに、次は菓子を持って行った。子どもの貴重な小遣いから年寄りの菓子なんて、と言われたものの、なんだかんだ食べてくれたので、理由をつけては菓子や軽食を持ってここを訪問している。 「結局、あなたは狐なの」 「ん~…昔はそうだったかな。今は人の世で言うところの、土地神ってやつらしいねえ」 「土地の神さまってこんなひっそりしたとこにいて良いの」 「今は平和だからね」 「………?」 「神に祈る必要が薄れてきたんだよ、人の信仰がないと吾みたいな小さな神の力なんて大したもんじゃない。だからお前さんのような、引っ越してきたばっかりの子に気付くのも遅れたし、家に返

してやる術もないのさ。今も信仰心をたくさん集めてるでっかいお宮さんはあるけど、吾はあんなに仕事熱心でもないしね。これくらいがちょうど良いんだよ」
「ふぅん………」
「がっかりしたかい?」
「別に…」
 と、この神の身の上話を聞いたのも随分前になった。僕が不定期でもちょくちょく訪れることで信仰心…? の保持になっているのか、今もここから消えずに元気に暮らしているらしい。
「急に寒くなったが風邪はひいていないか?」
「気を付けている、心配ない」
「そうか、そりゃ良かった。ここ数日、何かの仮装かね、派手な意匠で薄着の子をちらほら見るもんだがら」
 暇をこじらせてたまに繁華街をぶらぶら見物すると言っていた。意外と…意外でもないか…普通の人間っぽい行動も取るんだな。
「ああ、ハロウィンか」
「はろうぃん?」
「西洋の盆みたいな行事で…」
「盆で何で仮装するんだい」
「僕も詳しくはない…調べるから」
 スマホで検索し、定義を読み上げさせた。AI音声の淡々とした説明を聞きながら最近の電話は便利になったねえ、と関心していた。
「つまり子どもは訪ねた家の人から菓子を貰う寸法ってことかい」
「そういうことだ」
「じゃあ、トリックオアトリート」
 にかりと笑って片手を差し出された。何で訪ね

してやる術もないのさ。今も信仰心をたくさん集めてるでっかいお宮さんはあるけど、吾はあんなに仕事熱心でもないしね。これくらいがちょうど良いんだよ」 「ふぅん………」 「がっかりしたかい?」 「別に…」  と、この神の身の上話を聞いたのも随分前になった。僕が不定期でもちょくちょく訪れることで信仰心…? の保持になっているのか、今もここから消えずに元気に暮らしているらしい。 「急に寒くなったが風邪はひいていないか?」 「気を付けている、心配ない」 「そうか、そりゃ良かった。ここ数日、何かの仮装かね、派手な意匠で薄着の子をちらほら見るもんだがら」  暇をこじらせてたまに繁華街をぶらぶら見物すると言っていた。意外と…意外でもないか…普通の人間っぽい行動も取るんだな。 「ああ、ハロウィンか」 「はろうぃん?」 「西洋の盆みたいな行事で…」 「盆で何で仮装するんだい」 「僕も詳しくはない…調べるから」  スマホで検索し、定義を読み上げさせた。AI音声の淡々とした説明を聞きながら最近の電話は便利になったねえ、と関心していた。 「つまり子どもは訪ねた家の人から菓子を貰う寸法ってことかい」 「そういうことだ」 「じゃあ、トリックオアトリート」  にかりと笑って片手を差し出された。何で訪ね

た側が菓子を強請られているんだ、逆だろう。まして子どもでもないし。しかし自ら食べ物を差し入れているのはこちら側なので強ち間違いでもない。どうせ渡すつもりのものだったし、と鞄を漁り団子を取り出すと、いつも有難うと言って礼を言われた。ハロウィンだからと言って、何も変わることはないのだ。
 
 いっそ、今日は何も持っていないから、trickの方で頼むと言えば、この神は何をしてくれるのだろう。
 
 誰にも言えないが、初めてここで丸くなって眠ってしまったあの日、もう帰れなくても良いとさえ思ってしまった。横に座り団子を頬張る横顔から邪気は全く感じられないが、仮に彼が悪神だったとしても、冷えた身体を温めてくれた事実は変わらないのだ。狐の姿のときは、ふんわりあたたかかった彼の身体は、本当はどれほどの体温を宿しているのだろう。彼を抱いて寝た日以来、僕は彼の身体には一度として触れていない。たとえ小さな土地神であろうと、ずっと昔からここを護ってきた一柱に違いはなく、ただの人である自分から触れるのは、抵抗があった。彼にとっては、見守るべき大勢の子どもたちの中の一人に過ぎないのだから。
 
 ごちそうさん、と半分の本数になった団子のトレーを返す笑顔を困り顔にさせたくなくて、本音はずっと秘めることにしている。
 
 それでも、寄り添ってほしい神は、名前すら知

た側が菓子を強請られているんだ、逆だろう。まして子どもでもないし。しかし自ら食べ物を差し入れているのはこちら側なので強ち間違いでもない。どうせ渡すつもりのものだったし、と鞄を漁り団子を取り出すと、いつも有難うと言って礼を言われた。ハロウィンだからと言って、何も変わることはないのだ。    いっそ、今日は何も持っていないから、trickの方で頼むと言えば、この神は何をしてくれるのだろう。    誰にも言えないが、初めてここで丸くなって眠ってしまったあの日、もう帰れなくても良いとさえ思ってしまった。横に座り団子を頬張る横顔から邪気は全く感じられないが、仮に彼が悪神だったとしても、冷えた身体を温めてくれた事実は変わらないのだ。狐の姿のときは、ふんわりあたたかかった彼の身体は、本当はどれほどの体温を宿しているのだろう。彼を抱いて寝た日以来、僕は彼の身体には一度として触れていない。たとえ小さな土地神であろうと、ずっと昔からここを護ってきた一柱に違いはなく、ただの人である自分から触れるのは、抵抗があった。彼にとっては、見守るべき大勢の子どもたちの中の一人に過ぎないのだから。    ごちそうさん、と半分の本数になった団子のトレーを返す笑顔を困り顔にさせたくなくて、本音はずっと秘めることにしている。    それでも、寄り添ってほしい神は、名前すら知

らない一柱しかいないのだけれど。
 
 あなたの隣で食べる菓子は、いつも味がしなくて、困る。

らない一柱しかいないのだけれど。    あなたの隣で食べる菓子は、いつも味がしなくて、困る。

(2/2)

09.11.2025 16:22 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。
付記に「きつねのかみさま」、「@now_or_lever」と記載されています。
画像情報:generated by 新書ページメーカー / Photo by Daniel Tseng on Unsplash / フォント:源暎こぶり明朝

以下は本文の内容です。

 この街には子供ながらに独立心が芽生えてすぐの頃に、引っ越してきた。転居直後でバタバタと忙しい兄を支えるつもりだったのだろう、その日は習い事に単身で行くからと言って兄の付き添いの申し出を振り切り出掛け、案の定駅から自宅までの道が途中でわからなくなり途方に暮れていた。地図アプリを睨んでも、知らない家が立ち並ぶ住宅街で自宅の位置も分からず、頼れる人もいない。肩を落としていると泣き面に蜂、なんと急な雨まで降ってきた。傘は玄関で留守番をしていた。雨宿りをしたいが知り合いでもない子どもが訪ねてきたところで、快く迎えを待たせてくれる人などいるだろうか。さむい、つらい、はやくかえりたい。
 
 その時、冷えた脚に妙な感覚があり視線を下げると、ふわふわと寄り添うように小さな狐が鎮座していた。精神的に参っているんだ、こんな住宅街に狐なんて、と目を擦ってからもう一度足元を見ると、やっぱり狐にしか見えない生き物が、こちらの顔をじっと見つめていた。こぎつね、こんこん、やまのなか。かつて保育園で学んだ歌が久々に頭の中の引き出しから飛び出してきた。人工的に植わっている木がちらほら程度にはあるので、ここは山というより林の方が意味としては近いのだけど。しかし多少緑があってもここは人間のテリトリーで、狐は異物には違いない。どこかの家庭で飼っていて逃げ出してきたのだろうか。それとも動物園か? この辺に動物園はあったかな。どちらにしても、どこかの家のインターホンを鳴らす口実は出来たのではないだろうか。この子の飼い主の家はどこでしょうか、と。そこまで考え

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「きつねのかみさま」、「@now_or_lever」と記載されています。 画像情報:generated by 新書ページメーカー / Photo by Daniel Tseng on Unsplash / フォント:源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。  この街には子供ながらに独立心が芽生えてすぐの頃に、引っ越してきた。転居直後でバタバタと忙しい兄を支えるつもりだったのだろう、その日は習い事に単身で行くからと言って兄の付き添いの申し出を振り切り出掛け、案の定駅から自宅までの道が途中でわからなくなり途方に暮れていた。地図アプリを睨んでも、知らない家が立ち並ぶ住宅街で自宅の位置も分からず、頼れる人もいない。肩を落としていると泣き面に蜂、なんと急な雨まで降ってきた。傘は玄関で留守番をしていた。雨宿りをしたいが知り合いでもない子どもが訪ねてきたところで、快く迎えを待たせてくれる人などいるだろうか。さむい、つらい、はやくかえりたい。    その時、冷えた脚に妙な感覚があり視線を下げると、ふわふわと寄り添うように小さな狐が鎮座していた。精神的に参っているんだ、こんな住宅街に狐なんて、と目を擦ってからもう一度足元を見ると、やっぱり狐にしか見えない生き物が、こちらの顔をじっと見つめていた。こぎつね、こんこん、やまのなか。かつて保育園で学んだ歌が久々に頭の中の引き出しから飛び出してきた。人工的に植わっている木がちらほら程度にはあるので、ここは山というより林の方が意味としては近いのだけど。しかし多少緑があってもここは人間のテリトリーで、狐は異物には違いない。どこかの家庭で飼っていて逃げ出してきたのだろうか。それとも動物園か? この辺に動物園はあったかな。どちらにしても、どこかの家のインターホンを鳴らす口実は出来たのではないだろうか。この子の飼い主の家はどこでしょうか、と。そこまで考え

た僕の思考を堰き止めるように、狐は前足でぽんぽんと僕の脚をそっと叩いた。まるで人みたいに。
「こっちへおいで」
 狐が人語を話したのではない。顔を見ていると、不思議とそのように話し掛けられた気がして、気付けば僕の足は先行く狐に先導されていた。知らない人についていってはいけないのは知っているが、狐もそうなのだろうか。化け狐や、物の怪の類なのかも、とは思わなかった。根拠はないが、怖い狐ではないという自信が、なぜかあった。住宅と住宅の間をどんどん抜け、狐と最初に会った場所からみるみる離れていったが、恐怖はとんと感じることもなく、導かれるままに。
 
 薄暗い小道を抜けた先は、祠だった。祠というには大きいが、社というには小さい。しかし昔は立派な造りであったことが窺える建物の前で、狐がこちらを振り返って待っていた。相変わらずの雨模様で、屋根もまた、僕のように濡れていた。階(きざはし)を登り座って休もうとすると、狐が扉をかりかりと掻く。罰当たりだ、と引っ剥がそうと体に触れると、掻くのをやめて僕の顔を、またじっと見てきた。
「中に入りたいのか? でも…」
 言葉で制してもじっと見つめてくる。なかなかに聞かん坊である。あたりを見回したが宮司というか、管理人のような人は見当たらない。
「しょうがないな…」
 留め金も鍵も無く、ただの引き戸だったので、乾いた音を立てて戸は難無く開いた。建物の中はもぬけの殻で、人が何かしていた痕跡などは感じられない。ただその中はほんのりとあたたかい。

た僕の思考を堰き止めるように、狐は前足でぽんぽんと僕の脚をそっと叩いた。まるで人みたいに。 「こっちへおいで」  狐が人語を話したのではない。顔を見ていると、不思議とそのように話し掛けられた気がして、気付けば僕の足は先行く狐に先導されていた。知らない人についていってはいけないのは知っているが、狐もそうなのだろうか。化け狐や、物の怪の類なのかも、とは思わなかった。根拠はないが、怖い狐ではないという自信が、なぜかあった。住宅と住宅の間をどんどん抜け、狐と最初に会った場所からみるみる離れていったが、恐怖はとんと感じることもなく、導かれるままに。    薄暗い小道を抜けた先は、祠だった。祠というには大きいが、社というには小さい。しかし昔は立派な造りであったことが窺える建物の前で、狐がこちらを振り返って待っていた。相変わらずの雨模様で、屋根もまた、僕のように濡れていた。階(きざはし)を登り座って休もうとすると、狐が扉をかりかりと掻く。罰当たりだ、と引っ剥がそうと体に触れると、掻くのをやめて僕の顔を、またじっと見てきた。 「中に入りたいのか? でも…」  言葉で制してもじっと見つめてくる。なかなかに聞かん坊である。あたりを見回したが宮司というか、管理人のような人は見当たらない。 「しょうがないな…」  留め金も鍵も無く、ただの引き戸だったので、乾いた音を立てて戸は難無く開いた。建物の中はもぬけの殻で、人が何かしていた痕跡などは感じられない。ただその中はほんのりとあたたかい。

濡れた体で座るのは憚られ突っ立っていると、後ろ足で立って前足でシャツを引っ張るなどと器用なことをするので、またもやしょうがなく座ることにした。屋根が風雨に晒される音は聞こえてくるが、傍らで丸くなる狐の頭を撫でていると、これまた不思議と不安の種は芽を出さず泡のように消えていく。ふわふわとした心地と、特にこれといってすることもなく、襲い来る眠気に耐えていた。
「お前は良いよな」
 そんなことはなく、野生動物(?)にだって何らかの苦労はあるのだろうに、深くものを考える力が消えていくのを、どこか他人事のようにぼんやり感じた。そうしていつの間にか畳に横になり、狐のごとく丸くなって動かないでいると、隙間に狐が身体を滑り込ませてきたので、抱きしめるように夢の中へ落ちていった。あとから考えると不用心にもほどがあるのだが、あらゆる懸念や不安が、この狐のそばにいると、無に帰していた。冷えた肌が、動物のぬくもりを求めてしまったのだろう。その後のことは暫く記憶がない。雨が屋根を打つ音が徐々に遠ざかっていった。
 
 名前を呼ばれて目を覚ますと、場所は変わらずあの祠だか社だかの中だが、抱いて寝たはずの狐の姿だけが見当たらない。かわりに、赤地に見事な金の刺繍の入った羽織が身体に掛けられていた。
「大丈夫か? 痛いところはないか?」
「ない…」
 起き上がって長兄のほっとした顔を見、続いて窓からの景色が真っ暗であることを確認し、ここに一人でいた経緯を思い出し、血の気が引いた。

濡れた体で座るのは憚られ突っ立っていると、後ろ足で立って前足でシャツを引っ張るなどと器用なことをするので、またもやしょうがなく座ることにした。屋根が風雨に晒される音は聞こえてくるが、傍らで丸くなる狐の頭を撫でていると、これまた不思議と不安の種は芽を出さず泡のように消えていく。ふわふわとした心地と、特にこれといってすることもなく、襲い来る眠気に耐えていた。 「お前は良いよな」  そんなことはなく、野生動物(?)にだって何らかの苦労はあるのだろうに、深くものを考える力が消えていくのを、どこか他人事のようにぼんやり感じた。そうしていつの間にか畳に横になり、狐のごとく丸くなって動かないでいると、隙間に狐が身体を滑り込ませてきたので、抱きしめるように夢の中へ落ちていった。あとから考えると不用心にもほどがあるのだが、あらゆる懸念や不安が、この狐のそばにいると、無に帰していた。冷えた肌が、動物のぬくもりを求めてしまったのだろう。その後のことは暫く記憶がない。雨が屋根を打つ音が徐々に遠ざかっていった。    名前を呼ばれて目を覚ますと、場所は変わらずあの祠だか社だかの中だが、抱いて寝たはずの狐の姿だけが見当たらない。かわりに、赤地に見事な金の刺繍の入った羽織が身体に掛けられていた。 「大丈夫か? 痛いところはないか?」 「ない…」  起き上がって長兄のほっとした顔を見、続いて窓からの景色が真っ暗であることを確認し、ここに一人でいた経緯を思い出し、血の気が引いた。

「ごめんなさい、僕」
「いい、謝るな。すぐ迎えに来れなかったわたしに非がある」
「でも」
「ここで雨宿りをしていることを教えてくれた者がいてな、叱らないでやってくれ、と頼まれたんだ」
「え…誰…?」
 問われた長兄は苦笑いをし、肩をすくめた。
「わからん、GPSを使ってここの近くまで着いた時に話しかけてきた老人がいたが、ここまで案内した後に煙のように消えたのだ」
「老人?」
「ああ」
「髪、短かった?」
「いいや、男だったが高い位置で結っていた…だがどうして」
「ううん、いい…本当にごめんなさい、帰ろう」
 夢の中で、退屈しないよう、兄に起こされるまでずっと話し相手を引き受けてくれた男がいた。年は祖父くらいに見えたが、背筋も伸びていて年齢を感じさせない、良い男だった。立ったところを僕は見ていないが、きっとすらりとした長身なのだろうな。
 
 兄はこの出来事をそれ以上追及してはこなかったし、他の兄弟にも話さなかった。正直に言って、有り難かった。兄のことは敬っているが、この思い出は自分だけのものにしておきたかった。
 
 神隠しという言葉を知ったのは、もっと大きくなってからだった。それでも、また、会えたら良

「ごめんなさい、僕」 「いい、謝るな。すぐ迎えに来れなかったわたしに非がある」 「でも」 「ここで雨宿りをしていることを教えてくれた者がいてな、叱らないでやってくれ、と頼まれたんだ」 「え…誰…?」  問われた長兄は苦笑いをし、肩をすくめた。 「わからん、GPSを使ってここの近くまで着いた時に話しかけてきた老人がいたが、ここまで案内した後に煙のように消えたのだ」 「老人?」 「ああ」 「髪、短かった?」 「いいや、男だったが高い位置で結っていた…だがどうして」 「ううん、いい…本当にごめんなさい、帰ろう」  夢の中で、退屈しないよう、兄に起こされるまでずっと話し相手を引き受けてくれた男がいた。年は祖父くらいに見えたが、背筋も伸びていて年齢を感じさせない、良い男だった。立ったところを僕は見ていないが、きっとすらりとした長身なのだろうな。    兄はこの出来事をそれ以上追及してはこなかったし、他の兄弟にも話さなかった。正直に言って、有り難かった。兄のことは敬っているが、この思い出は自分だけのものにしておきたかった。    神隠しという言葉を知ったのは、もっと大きくなってからだった。それでも、また、会えたら良

こじポセwebオンリーイベント『囀る玄鳥嘯く海若』展示作品でした。公式でデザインがお出しされて以来ずっと書きたかった狐のsskと幼き人類psのお話です。申し訳程度にハロウィン成分があります。全8頁(1/2) https://sscard.monokakitools.net/pagemakers/shinsho/shinsho_bg.php

09.11.2025 16:22 — 👍 0    🔁 0    💬 1    📌 0
Post image Post image

Xの方にも投稿しましたがこちらにも。企画の一つであるイメソン企画のプレイリストを公開します!皆様ご回答ありがとうございました!
open.spotify.com/playlist/7Fu...
#つばツミ壱

03.11.2025 14:32 — 👍 1    🔁 1    💬 0    📌 0

支部に新作1本投げてます
こちらにも後日投稿しにきますね

03.11.2025 07:55 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
Preview
オンライン同人誌即売会サービス - PICREA(ピクリエ) いつでも・どこからでも同人誌即売会を楽しみたい!手軽に主催・サークル参加・一般参加ができるオンラインイベント会場「ピクリエ」です。

イベントが開催されました!
picrea.jp/event/ef5839...
#つばツミ壱

02.11.2025 15:00 — 👍 2    🔁 2    💬 0    📌 0
Preview
こじポセイメソン企画用フォーム 2024年11月1日(金)〜2025年10月31日(金)の期間募集しております。 集計後は運営アカウント(@kjpsweb)にて一覧のスプレッドシート、Spotifyのプレイリストを公開する予定です。歌詞引用したコメントは掲載できない可能性があります。 逆CPや他CP、他キャラのイメソンは採用できません。(固定オンリーイベントになりますので良い曲であっても取り上げられません…喜ぶ人のところに送っ...

【お知らせ】
イメソン企画募集は本日までとなっております!
是非ご参加の方をお願いします!
docs.google.com/forms/d/e/1F...

#つばツミ壱告知

30.10.2025 15:33 — 👍 1    🔁 1    💬 0    📌 0

深夜テンションで推しCPイメソンを考えるガバガバスケ管のオタク

29.10.2025 18:09 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
Preview
ろぼいん on X: "ちなみに画像に書いてある通り ・2要素認証を使っていない場合 ・セキュリティキーとパスキー以外の2要素認証(認証アプリやSMS)を使っている場合 は影響を受けないので再設定の必要はありません。ただし、セキュリティ上の理由から、2要素認証を使っていない場合は有効化することをオススメします" / X ちなみに画像に書いてある通り ・2要素認証を使っていない場合 ・セキュリティキーとパスキー以外の2要素認証(認証アプリやSMS)を使っている場合 は影響を受けないので再設定の必要はありません。ただし、セキュリティ上の理由から、2要素認証を使っていない場合は有効化することをオススメします

11月10日までにセキュリティ設定の確認をしておかないと気付かないうちにアカウントがロックされる恐れがあるみたいですね
何を確認すればいいのかは引用先の説明がわかりやすいのと、さらにその方が引用してるポストに確認手順が書かれていますよ
あとアプリだと2要素認証の項目から先に進まないので設定の確認はwebで
x.com/keita_roboin...

28.10.2025 14:34 — 👍 3    🔁 1    💬 0    📌 0

急いでサンキュピ読んだんですけどちょっとどういうこと

28.10.2025 00:16 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

サクカ
お品書き
読み物まとめ
あとイメソンか〜
どこまで拘るかやけども…

26.10.2025 07:46 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

巨大な実験室のルビがテーマパークなんだよ多分

25.10.2025 16:28 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

自分をニコテスだと思いこんでいる一般人

25.10.2025 16:27 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

本物が言わなさそうな言い回し

25.10.2025 16:26 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

巨大な実験室に来たみたいだぜテンション上がるなあ〜

24.10.2025 06:24 — 👍 2    🔁 1    💬 0    📌 0

多分大体の人は元ネタを領域展開(もしくは固有結界)って読んでるんやけどしゅわる的にはゲマトリアゾーンでも良いかも知れんな
良くない

24.10.2025 03:34 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

社食で大声あげて笑いそうになりました
勘弁してください

24.10.2025 03:32 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
Post image

科学の流儀

22.10.2025 12:18 — 👍 3    🔁 1    💬 0    📌 0

(本誌発売日をすっかり忘れていた読者)

24.10.2025 03:32 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

学パロとか現パロとかはもう公式に怒られない限り好きにすりゃ良いと思うんよね

20.10.2025 03:54 — 👍 2    🔁 0    💬 0    📌 0

(確かにやりたい放題で我ニッコリ)

20.10.2025 03:53 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

読みやすくて頭にスラスラ入ってくる文章がとても好き
疲れた頭にダイレクトアタック
そもそもレオアポの醍醐味は原作の時点で既にテンポ良い言葉の応酬なのだから上手い書き手が書いたら面白い読み物に決まっているのだ

19.10.2025 16:23 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

え?続きが見当たらないんですが

19.10.2025 16:00 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
Post image Post image Post image Post image 19.10.2025 10:11 — 👍 2    🔁 1    💬 1    📌 0
Post image

ほんとに意味不明な現パロレオアポ
ほぼ書きたいところだけの会話劇です

19.10.2025 10:11 — 👍 1    🔁 1    💬 1    📌 0

ブルスカでもリアクションありがとうございました〜!

18.10.2025 12:38 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

結婚指輪を自ら見せびらかしに来たのに祝福されたらあまりに真っ直ぐでピュアな反応にムッとする人妻(男子高校生)…良…

18.10.2025 12:07 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

お前はkjpsを書け(阿部寛の画像略)

18.10.2025 12:05 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

B(僕が)S(先に)S(好きだったのに)、とかバームクーヘンエンドとはニュアンスも時系列も違うんだよなこれ
何て言うんだこのシチュ
好き
ワシも書きたい

18.10.2025 11:59 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

あと3枚目の広露の匂わせがとんでもなく好きなシチュエーションなんですけどどうしてくれるんですか?(どうもしなくて良い)

18.10.2025 11:57 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

2頁目の3コマ目、あまりに人妻

18.10.2025 11:56 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

@aonoridon is following 17 prominent accounts