ニコラの部屋はとりわけ異様だった。この《家》に住み着いたほかの誰のものと比べても。彼のねぐらは得体が知れないもので半ば埋め尽くされている。
「知れてるさ。楽器だよ」
彼は言う、子供じみた顔をして。
「音楽は空間を支配する」
@nil-ta.bsky.social
超長編小説《歪のアール》のためのアカウント 主に覚え書きのための場所 話の内容についても書き留めながら、しかしそれが小説として採用されるかはわかりません
ニコラの部屋はとりわけ異様だった。この《家》に住み着いたほかの誰のものと比べても。彼のねぐらは得体が知れないもので半ば埋め尽くされている。
「知れてるさ。楽器だよ」
彼は言う、子供じみた顔をして。
「音楽は空間を支配する」
「これはすでに終わったこと」
(ほんとうに?)
「取り返しはつかない」
(ほんとうに?)
「あとはただ悪くなっていくだけ」
(――ほんとうに?)
ひとつのものはふたつにわけることができる。
けれどもふたつに裂かれてしまったものは、二度とはもとに戻らない。
起こってしまったあとで、いまさらなかったことにすることは、誰にも、どんなものにみできはしなかった。
ほんの小さな子供でさえ知っているように。
衝撃、
ただ衝撃があった、
なにもかものはじめに、
そればかり、
ないことだけがあった世界へ響きわたった、
あの痛烈な光、
自分のものか相手のものか判然としない濁った悲鳴、
そこに自分と相手が存在しはじめている、
ということに気づいた、
おそるべき認識の火花、
記憶の底に灼きついた最初の感触、
他者があるということの決定的な断絶、
果てしない喪失感と痛み、
苦しみ、悲しみ、憐れみ、怒り、
ほかのすべてをはるか上回る嘆き、
それは瞬きにも満たない間に起こり、
終わった。
覆しようもなく。
オリジナルキャラクター 緑のひとみ
バーレケト
19.11.2024 08:06 — 👍 1 🔁 0 💬 0 📌 0この世界は病んでいる
ほかの多くの世界がそうであるように
世界は平らにできている
西にひとつ大きな土地と、東にいま少し小さな土地がある
あとはごく小さな島々が、それらの広い土地を飾るように浮かんでいる
世界のすべての始まりの話
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