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こっちでもたい焼き

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「俺の印?
 主の服の襟、ちょっとめくって見なよ。
 今ならはっきり残ってると思う」 | 審神者に自分のものだという印をつけたい男士 | 加州清光

「俺の印?  主の服の襟、ちょっとめくって見なよ。  今ならはっきり残ってると思う」 | 審神者に自分のものだという印をつけたい男士 | 加州清光

チキチキ⭐︎審神者に自分のものだという印をつけたい男士選手権 | 加州清光

04.09.2025 19:47 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
|永遠に《ずっと》、その顔で俺を見ていて欲しい。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | へし切長谷部

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01.09.2025 20:46 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
|夢《これ》が終わっちまうのなら、その時は、折れろ。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 同田貫正国

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01.09.2025 17:56 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
これで天に罰されようとも、あの方を手放したくない。
覚悟は、できている。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 蜻蛉切

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01.09.2025 17:54 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
不義を犯す事になろうとも、今が続いて欲しいと思う。
そういう男だったのか、俺は。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 長曽祢虎徹

不義を犯す事になろうとも、今が続いて欲しいと思う。 そういう男だったのか、俺は。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 長曽祢虎徹

恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 長曽祢虎徹

01.09.2025 17:51 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
不義を犯す事になろうとも、今が続いて欲しいと思う。
そういう男だったのか、俺は。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 長曽祢虎徹

不義を犯す事になろうとも、今が続いて欲しいと思う。 そういう男だったのか、俺は。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 長曽祢虎徹

恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 長曽祢虎徹

01.09.2025 17:51 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
卑怯にも、このままでいて欲しいと願ってしまった。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 大包平

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01.09.2025 17:48 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
めざめさせるような『へま』をするとでも? | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 小豆長光

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01.09.2025 17:40 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
目覚めさせるつもりなど、|最初《はな》からない。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 小竜景光

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01.09.2025 17:38 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
――|幻《ゆめ》よ、覚めてくれるな。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 大般若長光

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01.09.2025 17:32 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
|狡《ずる》い男と|誹《そし》られようとも、
貴女が夢から覚めぬ事を願ってしまうのです。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 一期一振

|狡《ずる》い男と|誹《そし》られようとも、 貴女が夢から覚めぬ事を願ってしまうのです。 | 恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 一期一振

恋だと誤解したままでいて欲しいと願う | 一期一振

01.09.2025 17:29 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
「この人が主のお婿さん候補?
 うーんカッコいいね。
 でもさ、それってごっちんじゃダメ?
 絶対に誰よりも大事にするんだけど」 | 審神者にお似合いの相手の見合い写真 | 後家兼光

「この人が主のお婿さん候補?  うーんカッコいいね。  でもさ、それってごっちんじゃダメ?  絶対に誰よりも大事にするんだけど」 | 審神者にお似合いの相手の見合い写真 | 後家兼光

審神者にお見合いの写真が来た
後家兼光

29.08.2025 23:43 — 👍 2    🔁 1    💬 0    📌 0
「こういう時、もっと堅い感じのコーデが良かったかな。
 でもボクらしい装いはこういうのだし……。
             よし。

 結婚して下さい。幸せにします。
 
 …………いいかな?」
 びっくりして声の出ない私に、最後に
 そっと小声で確認するのはずるいと思う。 | 正装でプロポーズ | 後家兼光

「こういう時、もっと堅い感じのコーデが良かったかな。  でもボクらしい装いはこういうのだし……。              よし。  結婚して下さい。幸せにします。    …………いいかな?」  びっくりして声の出ない私に、最後に  そっと小声で確認するのはずるいと思う。 | 正装でプロポーズ | 後家兼光

正装でプロポーズ | 後家兼光

29.08.2025 22:33 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
「板についてるって? そりゃどうも」
 普段がラフな姿の日本号は正装が自然に馴染んで見えた。
「お手をどうぞ、姫君」
 スマートな仕草に思わず手を差し出すと、私の指にそっと
 ダイヤのついた指輪がはめられた。
「いずれは我が奥方様と呼ばせてもらいたいんだが」
 承諾をもらえるか?と問われて私はうなずいた。 | 正装でプロポーズ | 日本号

「板についてるって? そりゃどうも」  普段がラフな姿の日本号は正装が自然に馴染んで見えた。 「お手をどうぞ、姫君」  スマートな仕草に思わず手を差し出すと、私の指にそっと  ダイヤのついた指輪がはめられた。 「いずれは我が奥方様と呼ばせてもらいたいんだが」  承諾をもらえるか?と問われて私はうなずいた。 | 正装でプロポーズ | 日本号

正装でプロポーズ | 日本号

29.08.2025 22:11 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
「一応はそれなりな扱いを受けてたからな、俺。
 あんたにそういう顔してもらえたなら本望だ」
 本番はこれからなんだが、と言いながら
 そっと差し出された指輪の箱は、御手杵の手の上では
 とても小さく見えた。 | 正装でプロポーズ | 御手杵

「一応はそれなりな扱いを受けてたからな、俺。  あんたにそういう顔してもらえたなら本望だ」  本番はこれからなんだが、と言いながら  そっと差し出された指輪の箱は、御手杵の手の上では  とても小さく見えた。 | 正装でプロポーズ | 御手杵

正装でプロポーズ | 御手杵

29.08.2025 22:00 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
「そのまま『良い子』で僕に抱かれてくれないか?
                お願いだから」 | 押し倒した時のセリフseason2 | 一文字則宗

「そのまま『良い子』で僕に抱かれてくれないか?                 お願いだから」 | 押し倒した時のセリフseason2 | 一文字則宗

押し倒した時のセリフseason2 | 一文字則宗

29.08.2025 18:09 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「八さに」と記載されています。
以下は本文の内容です。

昨夜この刀と寝てしまったのだ。
私は本丸に来てくれた時から雲生が好きだった。はっきり言うと顔を見た瞬間からの一目惚れで、口を開いて出た声で二度目の一目惚れをした。
だから男性としての見た目と声で好きになったと言われても否定はできない。だけど刀剣男士の人間体は刀自身の来歴や拵え、逸話から編まれている。あのふんわりとした白銀の髪と目は雲の名を持つ刀にふさわしいと思った。だから私は自信を持って刀剣男士として刀も含めた彼が好きだと思っていた。なのに。
「物に懸想なさるのはお止めにになった方が良いかと」
「私の事、好きになれない?」
「そういう話ではありません。――私は刀ですから」
その時初めて、私は雲生の笑顔を見た事がないという事に気付いた。柔らかな声と外見の雰囲気で勘違いしていた。彼はいつであっても真顔で、一度たりとも私に微笑んだ事はなかったのだ。その事実に打ちのめされ、私はそれ以上言い募るのはやめた。
次の日から、気まずかった。主と刀剣男士だから必ず主の気持ちを受け入れる義務はない。むしろそれを理由に好きでもないのにOKをもらう方が辛いかもしれない。本当であれば私が普段通りの態度を取るべきなのはわかっていた。けれど、雲生と話したくな

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「八さに」と記載されています。 以下は本文の内容です。 昨夜この刀と寝てしまったのだ。 私は本丸に来てくれた時から雲生が好きだった。はっきり言うと顔を見た瞬間からの一目惚れで、口を開いて出た声で二度目の一目惚れをした。 だから男性としての見た目と声で好きになったと言われても否定はできない。だけど刀剣男士の人間体は刀自身の来歴や拵え、逸話から編まれている。あのふんわりとした白銀の髪と目は雲の名を持つ刀にふさわしいと思った。だから私は自信を持って刀剣男士として刀も含めた彼が好きだと思っていた。なのに。 「物に懸想なさるのはお止めにになった方が良いかと」 「私の事、好きになれない?」 「そういう話ではありません。――私は刀ですから」 その時初めて、私は雲生の笑顔を見た事がないという事に気付いた。柔らかな声と外見の雰囲気で勘違いしていた。彼はいつであっても真顔で、一度たりとも私に微笑んだ事はなかったのだ。その事実に打ちのめされ、私はそれ以上言い募るのはやめた。 次の日から、気まずかった。主と刀剣男士だから必ず主の気持ちを受け入れる義務はない。むしろそれを理由に好きでもないのにOKをもらう方が辛いかもしれない。本当であれば私が普段通りの態度を取るべきなのはわかっていた。けれど、雲生と話したくな

かった。八つ当たりとわかっていても私に微笑んでもくれなかったという事実が、悔しかった。
「主、すみません。明日の内番の変更のご確認をお願いします」
夜になって執務が終わった後、雲生が変更の希望があったと確認に来た。
私は差し出されたタブレットの画面を見て認証すると黙ってそれを返した。突き返すような乱暴に仕草にはならないよう、それだけは注意した。
「――もう、私とは口を聞いて下さらないのでしょうか」
途方に暮れた声だった。それで私はかっとなった。
「物ってお話できるんですか」
ダメだ、八つ当たりだ、と必死に黙ろうとしたけど止まらなかった。泣きそうになったけど必死にこらえた。これ以上雲生を悪者にしてはいけないと思ったし、傷つけたくなかった。
「出て行って下さい。――明日からは気をつけます」
泣くのは卑怯だと思ったので顔を背けて言った。
「――あなたは、私でいいのですか。人と刀だなんて、きっと後悔させてしまう。そう思ったんです」

かった。八つ当たりとわかっていても私に微笑んでもくれなかったという事実が、悔しかった。 「主、すみません。明日の内番の変更のご確認をお願いします」 夜になって執務が終わった後、雲生が変更の希望があったと確認に来た。 私は差し出されたタブレットの画面を見て認証すると黙ってそれを返した。突き返すような乱暴に仕草にはならないよう、それだけは注意した。 「――もう、私とは口を聞いて下さらないのでしょうか」 途方に暮れた声だった。それで私はかっとなった。 「物ってお話できるんですか」 ダメだ、八つ当たりだ、と必死に黙ろうとしたけど止まらなかった。泣きそうになったけど必死にこらえた。これ以上雲生を悪者にしてはいけないと思ったし、傷つけたくなかった。 「出て行って下さい。――明日からは気をつけます」 泣くのは卑怯だと思ったので顔を背けて言った。 「――あなたは、私でいいのですか。人と刀だなんて、きっと後悔させてしまう。そう思ったんです」

聞いた事のない色の声だった。思わず振り返ると雲生は跪いて私の手を取った。
「我が身鉄なれど、海誓山盟の誓いを以てお慕い申し上げる。我に御身を与え給え」
古い言葉で一瞬での理解はできなかったけれどプロポーズという事は理解できた。
私は多分曖昧には頷けたと思う。それが返事になって、そのまま、私は雲生と結ばれた。

「雲生ってプロポーズするなら絶対英語だと思っていた」
思いがけない古めかしい言葉だった事に驚いたと告げると雲生は私の手を取った。
「あれは仕事ではありませんでしたから」
そう言うと私の指に口づけて笑った。
「もしかして、今まで笑ってなかったのって」
「仕事でしたからね。今もそうです」
柔らかく乱れた髪の間から微笑んだ目が私を見ていた。
晴れの空の色の瞳を見て、ああ、やっぱり好きだなあ、と私は雲生に微笑み返した。

聞いた事のない色の声だった。思わず振り返ると雲生は跪いて私の手を取った。 「我が身鉄なれど、海誓山盟の誓いを以てお慕い申し上げる。我に御身を与え給え」 古い言葉で一瞬での理解はできなかったけれどプロポーズという事は理解できた。 私は多分曖昧には頷けたと思う。それが返事になって、そのまま、私は雲生と結ばれた。 「雲生ってプロポーズするなら絶対英語だと思っていた」 思いがけない古めかしい言葉だった事に驚いたと告げると雲生は私の手を取った。 「あれは仕事ではありませんでしたから」 そう言うと私の指に口づけて笑った。 「もしかして、今まで笑ってなかったのって」 「仕事でしたからね。今もそうです」 柔らかく乱れた髪の間から微笑んだ目が私を見ていた。 晴れの空の色の瞳を見て、ああ、やっぱり好きだなあ、と私は雲生に微笑み返した。

「昨夜この刀と寝てしまったのだ」雲生編

28.08.2025 23:15 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
「怖がらなくてもいい、小鳥。
 優しくするだけの猶予はまだ残っている」 | 押し倒した時のセリフseason2  | 山鳥毛

「怖がらなくてもいい、小鳥。  優しくするだけの猶予はまだ残っている」 | 押し倒した時のセリフseason2 | 山鳥毛

押し倒した時のセリフseason2 | 山鳥毛

28.08.2025 20:21 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
「許されるとは思っちょらん。
 ――諦められたはずだったんじゃがなあ」 | 押し倒した時のセリフseason2  | 陸奥守吉行

「許されるとは思っちょらん。  ――諦められたはずだったんじゃがなあ」 | 押し倒した時のセリフseason2 | 陸奥守吉行

押し倒した時のセリフseason2 | 陸奥守吉行

28.08.2025 20:18 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「八さに」と記載されています。
以下は本文の内容です。

昨夜この刀と寝てしまったのだ。
頼み込んで、主であるという立場を笠に着て無理矢理そういう事をしてもらった。最低だと思う。
理由は簡単だ。片思いが実らないのがわかったから最後に思い出が欲しかったのだ。
私が八丁を好きだというのは態度が見え見えすぎて本人にもバレていたと思う。気付いていないという態度を貫かれていたので脈がないのは私も察していた。だからあきらめるつもりでいた。なのに、私を気遣って「主をどう思っているのか」と聞いてくれた刀がいた。私がいるのに気付かないまま交わされている会話に、心臓から口が飛び出そうになった。その時だった。
「正直、困るというか。俺はそんなつもりないので」
その言葉を聞いて目の前が真っ暗になった。迷惑がられているのは明白だった。悲しかったし、情けなかった。気持ちを受け取ってもらえない可能性は理解していたけれど迷惑がられるとは思ってもみなかった。涙すら出なかった。そうして私は夜、八丁を部屋に呼んだ。
「雇い主~?何かあった?」
見事に「何も気付いていません」という態度で部屋に来た八丁に、夜伽をするように、

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「八さに」と記載されています。 以下は本文の内容です。 昨夜この刀と寝てしまったのだ。 頼み込んで、主であるという立場を笠に着て無理矢理そういう事をしてもらった。最低だと思う。 理由は簡単だ。片思いが実らないのがわかったから最後に思い出が欲しかったのだ。 私が八丁を好きだというのは態度が見え見えすぎて本人にもバレていたと思う。気付いていないという態度を貫かれていたので脈がないのは私も察していた。だからあきらめるつもりでいた。なのに、私を気遣って「主をどう思っているのか」と聞いてくれた刀がいた。私がいるのに気付かないまま交わされている会話に、心臓から口が飛び出そうになった。その時だった。 「正直、困るというか。俺はそんなつもりないので」 その言葉を聞いて目の前が真っ暗になった。迷惑がられているのは明白だった。悲しかったし、情けなかった。気持ちを受け取ってもらえない可能性は理解していたけれど迷惑がられるとは思ってもみなかった。涙すら出なかった。そうして私は夜、八丁を部屋に呼んだ。 「雇い主~?何かあった?」 見事に「何も気付いていません」という態度で部屋に来た八丁に、夜伽をするように、

と告げた。
私の言葉にしばらく返事はなかった。
「――雇い主、言葉の意味がわかって言ってる?」
慌てるだろうかと思ってのに冷たいと言える程に静かな声だった。
「わかってる。――これは命令です」
拒否権はないのだと告げるといよいよ八丁は真顔になった。反論して抗うだろうか。だとしたら、何と言葉を重ねようかと考えた。沈黙はそれなりに長く続いた。けれど、八丁は居住まいを正して私に向かって手を付いて頭を下げた。
「御身を拝領する栄、謹んで承ります」
一礼が終わると八丁は部屋の明かりを消して私の手を取った。
昼間の言葉を聞いた今となっては空しくなるほどに八丁は私に優しかった。

「――悪かったわね、私なんかが貴方を好きになって」
明け方になって目が覚めたらしい八丁が床を抜け出す気配がしたのでそう声をかけた。
「安心して。気は済んだからもうあきらめる」
顔を見てその言葉は言えなかった。そう決めてした事だったのにぼろぼろと涙がこぼれ

と告げた。 私の言葉にしばらく返事はなかった。 「――雇い主、言葉の意味がわかって言ってる?」 慌てるだろうかと思ってのに冷たいと言える程に静かな声だった。 「わかってる。――これは命令です」 拒否権はないのだと告げるといよいよ八丁は真顔になった。反論して抗うだろうか。だとしたら、何と言葉を重ねようかと考えた。沈黙はそれなりに長く続いた。けれど、八丁は居住まいを正して私に向かって手を付いて頭を下げた。 「御身を拝領する栄、謹んで承ります」 一礼が終わると八丁は部屋の明かりを消して私の手を取った。 昼間の言葉を聞いた今となっては空しくなるほどに八丁は私に優しかった。 「――悪かったわね、私なんかが貴方を好きになって」 明け方になって目が覚めたらしい八丁が床を抜け出す気配がしたのでそう声をかけた。 「安心して。気は済んだからもうあきらめる」 顔を見てその言葉は言えなかった。そう決めてした事だったのにぼろぼろと涙がこぼれ

た。
八丁に背を向けたままだったので彼には泣いているのは見えていないはずだった。
「待って!」
慌てた声と同時に八丁の方を向かされた。
「……ごめん、俺は貴女にふさわしくないと、ずっと思っていた」
「どうして?」
「だって俺、自分が何かよくわかってないでしょ。そりゃあ、刀としては精一杯仕えるつもりだったけど一人だけ特別の相手に選んでもらうって――皆を差し置いて俺なんかでいいのかなって」
八丁がそれにどれほど悩んだか、その言葉で私にも理解できた。
「ごめん。傷つけた」
伸びた手が私の頬に触れた。
「もし許して貰えるのなら、貴女の特別に、俺はなりたい」
私の返事を待つ八丁の目は不安に揺れていた。
貴女が好きです、という囁きに私も八丁が好き、と囁きを重ねて私達はようやく思いを通じ合わせる事ができた。

た。 八丁に背を向けたままだったので彼には泣いているのは見えていないはずだった。 「待って!」 慌てた声と同時に八丁の方を向かされた。 「……ごめん、俺は貴女にふさわしくないと、ずっと思っていた」 「どうして?」 「だって俺、自分が何かよくわかってないでしょ。そりゃあ、刀としては精一杯仕えるつもりだったけど一人だけ特別の相手に選んでもらうって――皆を差し置いて俺なんかでいいのかなって」 八丁がそれにどれほど悩んだか、その言葉で私にも理解できた。 「ごめん。傷つけた」 伸びた手が私の頬に触れた。 「もし許して貰えるのなら、貴女の特別に、俺はなりたい」 私の返事を待つ八丁の目は不安に揺れていた。 貴女が好きです、という囁きに私も八丁が好き、と囁きを重ねて私達はようやく思いを通じ合わせる事ができた。

昨夜この刀と寝てしまったのだ。
頼み込んで、主であるという立場を笠に着て無理矢理そういう事をしてもらった。最低だと思う。
理由は簡単だ。片思いが実らないのがわかったから最後に思い出が欲しかったのだ。
私が八丁を好きだというのは態度が見え見えすぎて本人にもバレていたと思う。気付いていないという態度を貫かれていたので脈がないのは私も察していた。だからあきらめるつもりでいた。なのに、私を気遣って「主をどう思っているのか」と聞いてくれた刀がいた。私がいるのに気付かないまま交わされている会話に、心臓から口が飛び出そうになった。その時だった。
「正直、困るというか。俺はそんなつもりないので」
その言葉を聞いて目の前が真っ暗になった。迷惑がられているのは明白だった。悲しかったし、情けなかった。気持ちを受け取ってもらえない可能性は理解していたけれど迷惑がられるとは思ってもみなかった。涙すら出なかった。そうして私は夜、八丁を部屋に呼んだ。
「雇い主~?何かあった?」
見事に「何も気付いていません」という態度で部屋に来た八丁に、夜伽をするように、

昨夜この刀と寝てしまったのだ。 頼み込んで、主であるという立場を笠に着て無理矢理そういう事をしてもらった。最低だと思う。 理由は簡単だ。片思いが実らないのがわかったから最後に思い出が欲しかったのだ。 私が八丁を好きだというのは態度が見え見えすぎて本人にもバレていたと思う。気付いていないという態度を貫かれていたので脈がないのは私も察していた。だからあきらめるつもりでいた。なのに、私を気遣って「主をどう思っているのか」と聞いてくれた刀がいた。私がいるのに気付かないまま交わされている会話に、心臓から口が飛び出そうになった。その時だった。 「正直、困るというか。俺はそんなつもりないので」 その言葉を聞いて目の前が真っ暗になった。迷惑がられているのは明白だった。悲しかったし、情けなかった。気持ちを受け取ってもらえない可能性は理解していたけれど迷惑がられるとは思ってもみなかった。涙すら出なかった。そうして私は夜、八丁を部屋に呼んだ。 「雇い主~?何かあった?」 見事に「何も気付いていません」という態度で部屋に来た八丁に、夜伽をするように、

「昨夜この刀と寝てしまったのだ」
八丁念仏編

25.08.2025 00:00 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「燭さに」と記載されています。
以下は本文の内容です。

昨夜この刀と寝てしまったのだ。
好きだったからではない。
私を抱いてくれたのが彼だったからだ。
自分の生まれた家が嫌いだった。私だけが大切にされない家だった。だから私は自分に価値がないと思って生きてきた。仕事をするようになってからもそれは変わらなかった。自信を持って意見が言える人と私では勝負にならなかった。私にできる事はただ日々を諦めて暮らす事だった。
審神者にならないかと勧誘された時は意味がわからなかった。きっと誰かに騙されているのだろうと思いながら俸給に惹かれて任についた。そんな私だったのに刀達は私を大切にしてくれた。
信じられなくて、うれしかった。
天国のような日々だった。
そしてふと立ち止まった時、私は自分が愛情に餓(かつ)えている事に気付いた。
演練で、万屋で、そして本部で。刀剣男士に選ばれ、愛されている人を見た。もうとうの昔に手に入らないと諦めていた物が、もしかしたら手に入るかもしれない。その望みを持った瞬間、天国だった本丸は出口のない牢獄に変わった。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「燭さに」と記載されています。 以下は本文の内容です。 昨夜この刀と寝てしまったのだ。 好きだったからではない。 私を抱いてくれたのが彼だったからだ。 自分の生まれた家が嫌いだった。私だけが大切にされない家だった。だから私は自分に価値がないと思って生きてきた。仕事をするようになってからもそれは変わらなかった。自信を持って意見が言える人と私では勝負にならなかった。私にできる事はただ日々を諦めて暮らす事だった。 審神者にならないかと勧誘された時は意味がわからなかった。きっと誰かに騙されているのだろうと思いながら俸給に惹かれて任についた。そんな私だったのに刀達は私を大切にしてくれた。 信じられなくて、うれしかった。 天国のような日々だった。 そしてふと立ち止まった時、私は自分が愛情に餓(かつ)えている事に気付いた。 演練で、万屋で、そして本部で。刀剣男士に選ばれ、愛されている人を見た。もうとうの昔に手に入らないと諦めていた物が、もしかしたら手に入るかもしれない。その望みを持った瞬間、天国だった本丸は出口のない牢獄に変わった。

皆は私を大事にしてくれたがそれは審神者としてだ。私が望んで望んで手に入らなかった物はそれではない。自分自身が明確な恋をしている相手すらいなかったのに、恋情を向けてくれる刀はいないと逆恨みのような感情に溺れて死にそうになっていた。
「もしかして悩みがあるんじゃないのかな」
遠慮がちに察しの良い美声が私に問いかけた。その日、近侍だった。ただそれだけの理由で。
限界だった私はそのまま、抱えていた感情の全てをぶちまけた。
一日の終わり、就寝前の確認事項の時間だったので語り終えた私はそのまま泣き続けた。
それがどのくらいの時間だったのかわからない。
気付いた時、大きな手が優しく私の背をなでてくれた。
泣き終わったのは気が済んだからではない。泣き止ませるように口づけされたからだ。燭台切に。
同意を問う言葉はなかった。私は抗わず彼の背に腕を回した。それ以上の返答はなかった。
私が好きなのかとは問わなかった。答えを聞くのが怖かった。ただ、燭台切はやさしかった。

皆は私を大事にしてくれたがそれは審神者としてだ。私が望んで望んで手に入らなかった物はそれではない。自分自身が明確な恋をしている相手すらいなかったのに、恋情を向けてくれる刀はいないと逆恨みのような感情に溺れて死にそうになっていた。 「もしかして悩みがあるんじゃないのかな」 遠慮がちに察しの良い美声が私に問いかけた。その日、近侍だった。ただそれだけの理由で。 限界だった私はそのまま、抱えていた感情の全てをぶちまけた。 一日の終わり、就寝前の確認事項の時間だったので語り終えた私はそのまま泣き続けた。 それがどのくらいの時間だったのかわからない。 気付いた時、大きな手が優しく私の背をなでてくれた。 泣き終わったのは気が済んだからではない。泣き止ませるように口づけされたからだ。燭台切に。 同意を問う言葉はなかった。私は抗わず彼の背に腕を回した。それ以上の返答はなかった。 私が好きなのかとは問わなかった。答えを聞くのが怖かった。ただ、燭台切はやさしかった。

私の好きな物を作ってあげようかと尋ねるのと同じで、つまりはこれは私に対するケアの延長だった。そう感じた。そんな風な顔をしていた。
「ごめんね、こんな事までさせて」
終わった後で謝った。私の言葉への否定は来なかった。わかっていたけど一瞬胸が痛くなった。
「――うん。ごめん、ずっと君に恋をしていたとかではないよ」
はっきりと告げられて燭台を切る切れ味を我が身で味わった気がした。
でもその時、私の手がそっと握られた。
「だけど、初めて君が隠していた気持ちを聞いて、こうしたいと思った。誰より近い距離で、抱きしめたくなった。……これって、刀が主に向ける気持ちではないよね?」
どこか戸惑ったような声。けれど真剣な目が私を見る。
「これから好きになってもいいだろうか、君を」
すぐに返事ができなかった。私は彼の手を握り返して黙って目を閉じてうなずいた。涙をこらえるために。
「OK。ここから始めていこう」
甘く、熱を含んだささやき声が、私の髪を揺らした。

私の好きな物を作ってあげようかと尋ねるのと同じで、つまりはこれは私に対するケアの延長だった。そう感じた。そんな風な顔をしていた。 「ごめんね、こんな事までさせて」 終わった後で謝った。私の言葉への否定は来なかった。わかっていたけど一瞬胸が痛くなった。 「――うん。ごめん、ずっと君に恋をしていたとかではないよ」 はっきりと告げられて燭台を切る切れ味を我が身で味わった気がした。 でもその時、私の手がそっと握られた。 「だけど、初めて君が隠していた気持ちを聞いて、こうしたいと思った。誰より近い距離で、抱きしめたくなった。……これって、刀が主に向ける気持ちではないよね?」 どこか戸惑ったような声。けれど真剣な目が私を見る。 「これから好きになってもいいだろうか、君を」 すぐに返事ができなかった。私は彼の手を握り返して黙って目を閉じてうなずいた。涙をこらえるために。 「OK。ここから始めていこう」 甘く、熱を含んだささやき声が、私の髪を揺らした。

「昨夜この刀と寝てしまったのだ」
燭台切光忠

22.08.2025 20:59 — 👍 2    🔁 0    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「ずおさに」と記載されています。
以下は本文の内容です。

昨夜この刀と寝てしまったのだ。
「――前の俺の方が良かった?」
そうたずねられた時、そんな事はないと即答できなかった。
私が審神者になったのは十代前半で、その当時、私から見た鯰尾は少し年上のお兄さんめいた雰囲気があった。実際の年齢は十代の少年でなくとも外見上は青年と呼ぶにはまだ幼い姿の彼が、子供の私を上役として敬った態度を取っている事がとても大人びて見えたのだ。
正直に言えば、ちゃんとした初恋の相手は鯰尾だった。だけど次第に私の姿の方が年上に見えるようになって行き、成人を迎えた時に私はそれをあきらめて手放す事にした。
単に成就を望む事をやめて、箱の中にしまった感情を時々眺めて楽しむようになっただけだから気持ちが完全になくなったわけではないけれど苦しくなるような激しい思いは、過去に置いて行ったつもりだった。
そして私の鯰尾も修行の時期を迎え、旅立ち、戻ってきてくれた。
口調が変わった事に少なからず驚いたし、吹っ切れたようにからりと明るく笑うようになった気がした。もらった手紙の内容を思えば、彼が抱えていた何かが整理できたなら良かった事なのだと思う。ただ、彼が変わらずにそこにある事で楽しむ事ができた過去

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「ずおさに」と記載されています。 以下は本文の内容です。 昨夜この刀と寝てしまったのだ。 「――前の俺の方が良かった?」 そうたずねられた時、そんな事はないと即答できなかった。 私が審神者になったのは十代前半で、その当時、私から見た鯰尾は少し年上のお兄さんめいた雰囲気があった。実際の年齢は十代の少年でなくとも外見上は青年と呼ぶにはまだ幼い姿の彼が、子供の私を上役として敬った態度を取っている事がとても大人びて見えたのだ。 正直に言えば、ちゃんとした初恋の相手は鯰尾だった。だけど次第に私の姿の方が年上に見えるようになって行き、成人を迎えた時に私はそれをあきらめて手放す事にした。 単に成就を望む事をやめて、箱の中にしまった感情を時々眺めて楽しむようになっただけだから気持ちが完全になくなったわけではないけれど苦しくなるような激しい思いは、過去に置いて行ったつもりだった。 そして私の鯰尾も修行の時期を迎え、旅立ち、戻ってきてくれた。 口調が変わった事に少なからず驚いたし、吹っ切れたようにからりと明るく笑うようになった気がした。もらった手紙の内容を思えば、彼が抱えていた何かが整理できたなら良かった事なのだと思う。ただ、彼が変わらずにそこにある事で楽しむ事ができた過去

の甘酸っぱい感情の行き場がなくなった事は確かだった。
その落胆が、彼に伝わらないはずがなかったのに、きっと私は隠しもせずにそんな目で彼を見ていた。自分の迂闊さを呪うと同時に、鯰尾の手が私の手首をつかんでいる事に戸惑っていた。
質問だけなら刀と主の会話だった。けれどその手がある事で質問は別の意味を帯びていた。
「答えてくれよ」
鯰尾の指に力が入る。痛いと感じるギリギリがわかっていてその上限いっぱいに調節したと思える強さだった。
人間の、女の体の脆さを知っている。
そう気付いた瞬間、目の前にいるのは少年ではなく男になっていた。
「俺の中身は変わったわけじゃない。最初から今もずっと。……いや、だからダメだったんだよな」
「え?」
「人間の形(なり)がこの姿だから、もう男としては扱えなくなったんだよな。そうだろ?」
さっきまでの私の気持ちを言い当てられて息を飲む。鯰尾がそれで苦しんでいるのがわ

の甘酸っぱい感情の行き場がなくなった事は確かだった。 その落胆が、彼に伝わらないはずがなかったのに、きっと私は隠しもせずにそんな目で彼を見ていた。自分の迂闊さを呪うと同時に、鯰尾の手が私の手首をつかんでいる事に戸惑っていた。 質問だけなら刀と主の会話だった。けれどその手がある事で質問は別の意味を帯びていた。 「答えてくれよ」 鯰尾の指に力が入る。痛いと感じるギリギリがわかっていてその上限いっぱいに調節したと思える強さだった。 人間の、女の体の脆さを知っている。 そう気付いた瞬間、目の前にいるのは少年ではなく男になっていた。 「俺の中身は変わったわけじゃない。最初から今もずっと。……いや、だからダメだったんだよな」 「え?」 「人間の形(なり)がこの姿だから、もう男としては扱えなくなったんだよな。そうだろ?」 さっきまでの私の気持ちを言い当てられて息を飲む。鯰尾がそれで苦しんでいるのがわ

かったからだ。
「こんな事なら、躊躇うんじゃなかった。好きだと、言っておけば良かった」
重い吐息と同時に鯰尾が視線をそらす。
どう答えればいいのかわからなかった。けれど、体が動いて鯰尾を抱きしめていた。私の腕が背に回った時、鯰尾の体が一瞬強ばった。かろうじて好き、と囁けたと思う。だってその後、鯰尾は私に対して男して振る舞ったから。

「情けをかけられた、って事じゃないよな?」
並んで横たわった鯰尾の指が私の手に重なっていた。
「違う」
首を振る私の返事にそっか、と笑みを含んだ息を吐いて、優しい仕草で抱きしめられた。
「ずーっと好きでした。大切にします」
懐かしい言葉遣いが私に思いを告げてくれた。

かったからだ。 「こんな事なら、躊躇うんじゃなかった。好きだと、言っておけば良かった」 重い吐息と同時に鯰尾が視線をそらす。 どう答えればいいのかわからなかった。けれど、体が動いて鯰尾を抱きしめていた。私の腕が背に回った時、鯰尾の体が一瞬強ばった。かろうじて好き、と囁けたと思う。だってその後、鯰尾は私に対して男して振る舞ったから。 「情けをかけられた、って事じゃないよな?」 並んで横たわった鯰尾の指が私の手に重なっていた。 「違う」 首を振る私の返事にそっか、と笑みを含んだ息を吐いて、優しい仕草で抱きしめられた。 「ずーっと好きでした。大切にします」 懐かしい言葉遣いが私に思いを告げてくれた。

昨夜この刀と寝てしまったのだ。
「――前の俺の方が良かった?」
そうたずねられた時、そんな事はないと即答できなかった。
私が審神者になったのは十代前半で、その当時、私から見た鯰尾は少し年上のお兄さんめいた雰囲気があった。実際の年齢は十代の少年でなくとも外見上は青年と呼ぶにはまだ幼い姿の彼が、子供の私を上役として敬った態度を取っている事がとても大人びて見えたのだ。
正直に言えば、ちゃんとした初恋の相手は鯰尾だった。だけど次第に私の姿の方が年上に見えるようになって行き、成人を迎えた時に私はそれをあきらめて手放す事にした。
単に成就を望む事をやめて、箱の中にしまった感情を時々眺めて楽しむようになっただけだから気持ちが完全になくなったわけではないけれど苦しくなるような激しい思いは、過去に置いて行ったつもりだった。
そして私の鯰尾も修行の時期を迎え、旅立ち、戻ってきてくれた。
口調が変わった事に少なからず驚いたし、吹っ切れたようにからりと明るく笑うようになった気がした。もらった手紙の内容を思えば、彼が抱えていた何かが整理できたなら良かった事なのだと思う。ただ、彼が変わらずにそこにある事で楽しむ事ができた過去

昨夜この刀と寝てしまったのだ。 「――前の俺の方が良かった?」 そうたずねられた時、そんな事はないと即答できなかった。 私が審神者になったのは十代前半で、その当時、私から見た鯰尾は少し年上のお兄さんめいた雰囲気があった。実際の年齢は十代の少年でなくとも外見上は青年と呼ぶにはまだ幼い姿の彼が、子供の私を上役として敬った態度を取っている事がとても大人びて見えたのだ。 正直に言えば、ちゃんとした初恋の相手は鯰尾だった。だけど次第に私の姿の方が年上に見えるようになって行き、成人を迎えた時に私はそれをあきらめて手放す事にした。 単に成就を望む事をやめて、箱の中にしまった感情を時々眺めて楽しむようになっただけだから気持ちが完全になくなったわけではないけれど苦しくなるような激しい思いは、過去に置いて行ったつもりだった。 そして私の鯰尾も修行の時期を迎え、旅立ち、戻ってきてくれた。 口調が変わった事に少なからず驚いたし、吹っ切れたようにからりと明るく笑うようになった気がした。もらった手紙の内容を思えば、彼が抱えていた何かが整理できたなら良かった事なのだと思う。ただ、彼が変わらずにそこにある事で楽しむ事ができた過去

「昨夜この刀と寝てしまったのだ」鯰尾藤四郎編

18.08.2025 11:59 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
「――少し時間を貰いたい。総務に確認を」
表情も声も冷静だったけれど目には困惑の色があった。当然だろう。
何しろ本多忠勝の槍なのだ。組むなら相応の戦闘力を求めて然るべきだ。
「二十五体、十二秒。仮想戦闘施設での物ですが、私の最高スコアです」
私の言葉に、電話に伸びた手が止まった。
「これは、失礼した。実際に遡行軍と交戦した経験は?」
声が見知らぬ小娘から異動して来た同僚への物になった。
「五回ほどです」
「そうか。――能力的には問題ない。だが貴方の、女性用の部屋がない」
どうした物か、という顔だった。 | バディに小娘をねじ込まれた | 蜻蛉切

「――少し時間を貰いたい。総務に確認を」 表情も声も冷静だったけれど目には困惑の色があった。当然だろう。 何しろ本多忠勝の槍なのだ。組むなら相応の戦闘力を求めて然るべきだ。 「二十五体、十二秒。仮想戦闘施設での物ですが、私の最高スコアです」 私の言葉に、電話に伸びた手が止まった。 「これは、失礼した。実際に遡行軍と交戦した経験は?」 声が見知らぬ小娘から異動して来た同僚への物になった。 「五回ほどです」 「そうか。――能力的には問題ない。だが貴方の、女性用の部屋がない」 どうした物か、という顔だった。 | バディに小娘をねじ込まれた | 蜻蛉切

「バディに小娘をねじ込まれた年上の男」選手権
蜻蛉切

17.08.2025 22:38 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「ソハさに」と記載されています。
以下は本文の内容です。

昨夜この刀と寝てしまったのだ。
そもそも私が本丸に入ったのは男女の煩雑な関係から逃げたかったからなのに。
かつて私には夫がいた。学生の頃に知り合って、社会に出た後に恋人となって、ありふれた恋愛の結果、夫婦になった。互いに仕事をしながら家庭を営んで数年が過ぎ、そろそろ子供をと考えた所で夫が身罷った。
持病もなにもなく、まだ若かったのに突然、命に関わる病態が起きて亡くなってしまった。手を尽くす暇などなかった。病院に連れて行くのが遅かったとか、そういう後悔の原因すら与えられず「起きてしまった時点で命は助からなかった」と説明されて呆然としている間に何年も経っていた。
私はまだ、何も飲み込めていないのに周囲は違った。まだ若いのだから、もう○年も過ぎたのだから、と色々な理由をつけて私を再び誰かと添うようにと追い立てられた。そんな時、審神者となる話が来て、私はすぐにうなずいた。本丸の主となる事で現世での煩わしい問題から逃げられるならそれで良かった。
主である審神者とその刀剣が恋に落ちる事もあるとは聞いたがそんなつもりが一切なかった私には関係ない事だと思った。事実、私の刀剣達は同僚や後輩のような態度で私に接してくれていた。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「ソハさに」と記載されています。 以下は本文の内容です。 昨夜この刀と寝てしまったのだ。 そもそも私が本丸に入ったのは男女の煩雑な関係から逃げたかったからなのに。 かつて私には夫がいた。学生の頃に知り合って、社会に出た後に恋人となって、ありふれた恋愛の結果、夫婦になった。互いに仕事をしながら家庭を営んで数年が過ぎ、そろそろ子供をと考えた所で夫が身罷った。 持病もなにもなく、まだ若かったのに突然、命に関わる病態が起きて亡くなってしまった。手を尽くす暇などなかった。病院に連れて行くのが遅かったとか、そういう後悔の原因すら与えられず「起きてしまった時点で命は助からなかった」と説明されて呆然としている間に何年も経っていた。 私はまだ、何も飲み込めていないのに周囲は違った。まだ若いのだから、もう○年も過ぎたのだから、と色々な理由をつけて私を再び誰かと添うようにと追い立てられた。そんな時、審神者となる話が来て、私はすぐにうなずいた。本丸の主となる事で現世での煩わしい問題から逃げられるならそれで良かった。 主である審神者とその刀剣が恋に落ちる事もあるとは聞いたがそんなつもりが一切なかった私には関係ない事だと思った。事実、私の刀剣達は同僚や後輩のような態度で私に接してくれていた。

そうしてどのくらい時間が過ぎただろうか。
心に出来た傷が生々しさを失った今になって突然、ソハヤに思いを告げられた。
「俺があんたを好いてる事、気付いていないだろう?」
最初はなんでもない、些細な打ち明け事のような声だった。ちょうど子供の頃好きだったと大人になったお酒の席で笑い話として語られるような色の声だった。
だから私は警戒しないままに「知らなかったわ」と笑って応えた。
私の反応に、ソハヤは苦い物を口に含んだような顔で笑った。
「だよなあ。眼中に全くない事はわかってる」
そうしてとつとつと、私を好きになった経緯を話し始めた。初めて会った時からほのかな好意を抱いていた事。そしてそれがやがてはっきりと女に向ける情だと気付いて長く戸惑い、思いを消そうとした事。
次第に熱を帯びて真剣になって行く声にまずい、と思った時だった。
「ご亭主への気持ちはわかっている。それでもいい。その気持ち毎、あんたの事が欲しい」
そう言われた時、既に私は組み敷かれていた。
回避する方法はいくらでもあったはずだった。私は確かに「いや」とも「やめて」とも

そうしてどのくらい時間が過ぎただろうか。 心に出来た傷が生々しさを失った今になって突然、ソハヤに思いを告げられた。 「俺があんたを好いてる事、気付いていないだろう?」 最初はなんでもない、些細な打ち明け事のような声だった。ちょうど子供の頃好きだったと大人になったお酒の席で笑い話として語られるような色の声だった。 だから私は警戒しないままに「知らなかったわ」と笑って応えた。 私の反応に、ソハヤは苦い物を口に含んだような顔で笑った。 「だよなあ。眼中に全くない事はわかってる」 そうしてとつとつと、私を好きになった経緯を話し始めた。初めて会った時からほのかな好意を抱いていた事。そしてそれがやがてはっきりと女に向ける情だと気付いて長く戸惑い、思いを消そうとした事。 次第に熱を帯びて真剣になって行く声にまずい、と思った時だった。 「ご亭主への気持ちはわかっている。それでもいい。その気持ち毎、あんたの事が欲しい」 そう言われた時、既に私は組み敷かれていた。 回避する方法はいくらでもあったはずだった。私は確かに「いや」とも「やめて」とも

言ったけれど、それに全く意味がない事もわかっていた。私から出たその声は変に甘ったるく「いいわよ」と言ってるのと同じだったからだ。
普段のソハヤのからりとした顔からは想像できない、暴かれるような抱き方だった。終わった後、しばらく互いに荒い息を吐いていた。

「なかった事にするつもりか?」
明け方近くになって不意にそう問われた。その時私達は一つに重なったままで、身じろぎも出来ない状態だった。
「――わからない」
本心からの私の返事にソハヤが息を吐いた。
「済まなかった。――だが、あきらめるつもりはない」
指を絡めるように繋がれた手が強く握られた。逃すつもりはない、と赤い瞳が言っていた。
私は応える代わりに目を閉じて為されるがままで夜明けを待つしかできなかった。

言ったけれど、それに全く意味がない事もわかっていた。私から出たその声は変に甘ったるく「いいわよ」と言ってるのと同じだったからだ。 普段のソハヤのからりとした顔からは想像できない、暴かれるような抱き方だった。終わった後、しばらく互いに荒い息を吐いていた。 「なかった事にするつもりか?」 明け方近くになって不意にそう問われた。その時私達は一つに重なったままで、身じろぎも出来ない状態だった。 「――わからない」 本心からの私の返事にソハヤが息を吐いた。 「済まなかった。――だが、あきらめるつもりはない」 指を絡めるように繋がれた手が強く握られた。逃すつもりはない、と赤い瞳が言っていた。 私は応える代わりに目を閉じて為されるがままで夜明けを待つしかできなかった。

「昨夜この刀と寝てしまったのだ」ソハヤノツルキ版

16.08.2025 23:25 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「蜻蛉さに」と記載されています。
以下は本文の内容です。

昨夜この槍と寝てしまったのだ。
雰囲気に流されてとか恋人になって自然と、ではなかった。妻になって欲しいと申し込まれたのだ。
「父、藤原正真の名にかけて御誓い申し上げる。蜻蛉切、永久(とこしえ)に傍目(あからめ)する事なく貴方を愛(めぐ)し、をしく想いましょう」
刀剣男士の中でも武器というより武人としての側面が強い彼が私にそう申し込むと決めるまでにどれほどの覚悟があったのか、伏して口上を告げた後、上げた顔をみてわかった。
――ああ、これはもう、逃げられない。
私は静かにそう思った。断るとしたらそれは彼を折ると同義だった。
一方的に気持ちを押しつけられたわけではない。私も蜻蛉切が好きだった。
けれど審神者とその刀剣男士という立場にあって結婚という形はあまりにも現実味がなかった。
婚礼衣装は和装にしたので私は地色が淡いピンクの色打ち掛けを着て、蜻蛉切は紋付き袴という出で立ちで本丸から結婚式をした。祝いの言葉を浴るほど受け取って、私は笑っていたと思う。

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「蜻蛉さに」と記載されています。 以下は本文の内容です。 昨夜この槍と寝てしまったのだ。 雰囲気に流されてとか恋人になって自然と、ではなかった。妻になって欲しいと申し込まれたのだ。 「父、藤原正真の名にかけて御誓い申し上げる。蜻蛉切、永久(とこしえ)に傍目(あからめ)する事なく貴方を愛(めぐ)し、をしく想いましょう」 刀剣男士の中でも武器というより武人としての側面が強い彼が私にそう申し込むと決めるまでにどれほどの覚悟があったのか、伏して口上を告げた後、上げた顔をみてわかった。 ――ああ、これはもう、逃げられない。 私は静かにそう思った。断るとしたらそれは彼を折ると同義だった。 一方的に気持ちを押しつけられたわけではない。私も蜻蛉切が好きだった。 けれど審神者とその刀剣男士という立場にあって結婚という形はあまりにも現実味がなかった。 婚礼衣装は和装にしたので私は地色が淡いピンクの色打ち掛けを着て、蜻蛉切は紋付き袴という出で立ちで本丸から結婚式をした。祝いの言葉を浴るほど受け取って、私は笑っていたと思う。

夜になって新しく寝室にした部屋に先に入ったのは私だった。ここに来ても結婚したという現実味がなかった。
しばらくして蜻蛉切がやって来た。多分私は夫を待つ新妻らしい顔をしていなかったのだと思う。
「斯様な顔を為されずとも、許しがあるまでは指一本触れるつもりはありません。ご安心を」
物わかりの良い大人の顔と声だった。
「――なら、どうして私と結婚したいと言ったの」
「貴方様が愛しかったからです」
即答だった。
嘘、と喉まで声が出かかった。そこで気付いた。私がこの結婚を他人事だとしか思えなかった理由。
蜻蛉切が本心から私を好きと思ってくれていると信じられなかったからだ。私が彼を好きだったから、それを察してくれたのだと、そう思っていた。けれど私はそれを口にして真意を確かめる事はしなかった。だって一度として、彼からの恋情を感じた事はなかった。

夜になって新しく寝室にした部屋に先に入ったのは私だった。ここに来ても結婚したという現実味がなかった。 しばらくして蜻蛉切がやって来た。多分私は夫を待つ新妻らしい顔をしていなかったのだと思う。 「斯様な顔を為されずとも、許しがあるまでは指一本触れるつもりはありません。ご安心を」 物わかりの良い大人の顔と声だった。 「――なら、どうして私と結婚したいと言ったの」 「貴方様が愛しかったからです」 即答だった。 嘘、と喉まで声が出かかった。そこで気付いた。私がこの結婚を他人事だとしか思えなかった理由。 蜻蛉切が本心から私を好きと思ってくれていると信じられなかったからだ。私が彼を好きだったから、それを察してくれたのだと、そう思っていた。けれど私はそれを口にして真意を確かめる事はしなかった。だって一度として、彼からの恋情を感じた事はなかった。

「ありがとう。忠義に感謝します」
私はあきらめて本心からの礼を述べた。その時、自分でも思わない事に涙が落ちた。
「主」
不意に大きな手が私の肩に触れた。
「言った傍から誓いを翻して申し訳ありません。ですが、言葉ではきっと信じていただけないでしょう?」
許しを求められた事に気付いてうなずくと額に唇が触れた。
「御免。御身を頂戴仕ります」
そうして私は本当に蜻蛉切の妻になった。

「一度、恋情を表に出してしまえば箍が外れてしまうと思い、怖かったのです」
彼の危惧の理由は、初夜の間にしっかりと理解できた。
「貴方への想いは、信じていただけましたか」
返事の代わりに私はそっとうなずいた。
「それにしても、しまった。もっと時間をかけるつもりだったのに」
困ったような蜻蛉切の声に私は笑って首を振った。

「ありがとう。忠義に感謝します」 私はあきらめて本心からの礼を述べた。その時、自分でも思わない事に涙が落ちた。 「主」 不意に大きな手が私の肩に触れた。 「言った傍から誓いを翻して申し訳ありません。ですが、言葉ではきっと信じていただけないでしょう?」 許しを求められた事に気付いてうなずくと額に唇が触れた。 「御免。御身を頂戴仕ります」 そうして私は本当に蜻蛉切の妻になった。 「一度、恋情を表に出してしまえば箍が外れてしまうと思い、怖かったのです」 彼の危惧の理由は、初夜の間にしっかりと理解できた。 「貴方への想いは、信じていただけましたか」 返事の代わりに私はそっとうなずいた。 「それにしても、しまった。もっと時間をかけるつもりだったのに」 困ったような蜻蛉切の声に私は笑って首を振った。

「昨夜この刀と寝てしまったのだ」の蜻蛉切版
三名槍揃ってなかった

07.08.2025 01:46 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
「なるほど。貴方の御本心はそれですか。
 それでは膝を突き合わせての話し合いと洒落込みましょうか?
 時と場合によっては私の押しの強さも中々です。どの主の影響ですかな」

友達相手の軽口で「うちの一期はちょっと押しに弱い所があるから私に告られて断られなかったんだと思う。忠臣気性につけ込んで無理矢理突き合わせてるみたいで罪悪感ある」と言っていたのを聞かれてしまった結果、怖い笑顔で壁ドンされてしまった。

「なるほど。貴方の御本心はそれですか。  それでは膝を突き合わせての話し合いと洒落込みましょうか?  時と場合によっては私の押しの強さも中々です。どの主の影響ですかな」 友達相手の軽口で「うちの一期はちょっと押しに弱い所があるから私に告られて断られなかったんだと思う。忠臣気性につけ込んで無理矢理突き合わせてるみたいで罪悪感ある」と言っていたのを聞かれてしまった結果、怖い笑顔で壁ドンされてしまった。

物騒な一期一振

06.08.2025 08:29 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「たぬさに」と記載されています。
以下は本文の内容です。

昨夜この刀と寝てしまったのだ。
一応は恋人という事になってそれなりの時間、それらしく過ごしてきた。けれど一線を越える事はなかった。
恋人になるからそういう事に興味があるようには見えなかったし、好きだと言った私の気持ちを受け入れて男女の真似事めいた関係となる事を受け入れてくれたのが奇跡だと思っていた。
「あんたも物好きだな」
苦笑も呆れもない、強いて言えばきちんと使えるが知識不足か何かで多少突飛になってしまった戦術をやりたいと言った主の指示を受け入れて応じるのと変わらない返答で私達の関係に名前がついた。
その一方で意外な事に、彼は「恋人」と呼ぶべき間柄の相手をどう扱うかはきちんと知っていた。
折に触れて何か変わった何かを見聞きすれば私の手が空いた頃合いでやって来て「そろそろ福島が洋館の脇に増やしたバラが頃合いだ」とか「新しい菓子屋ができたらしい。行くか?」とか声をかけてくれ、私が見たい、行きたい、と言えば一緒に来てくれた。
刀剣男士の中でも武器の意識が強い彼が普通の、丁寧で優しい男の人みたいに私を扱っ

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「昨夜この刀と寝てしまったのだ。」、「たぬさに」と記載されています。 以下は本文の内容です。 昨夜この刀と寝てしまったのだ。 一応は恋人という事になってそれなりの時間、それらしく過ごしてきた。けれど一線を越える事はなかった。 恋人になるからそういう事に興味があるようには見えなかったし、好きだと言った私の気持ちを受け入れて男女の真似事めいた関係となる事を受け入れてくれたのが奇跡だと思っていた。 「あんたも物好きだな」 苦笑も呆れもない、強いて言えばきちんと使えるが知識不足か何かで多少突飛になってしまった戦術をやりたいと言った主の指示を受け入れて応じるのと変わらない返答で私達の関係に名前がついた。 その一方で意外な事に、彼は「恋人」と呼ぶべき間柄の相手をどう扱うかはきちんと知っていた。 折に触れて何か変わった何かを見聞きすれば私の手が空いた頃合いでやって来て「そろそろ福島が洋館の脇に増やしたバラが頃合いだ」とか「新しい菓子屋ができたらしい。行くか?」とか声をかけてくれ、私が見たい、行きたい、と言えば一緒に来てくれた。 刀剣男士の中でも武器の意識が強い彼が普通の、丁寧で優しい男の人みたいに私を扱っ

てくれていた。楽しかったし、幸せだった。
恋人になって半年が過ぎた頃、一度だけそういう雰囲気になった事があった。
唇が触れかけた時、何かに気付いたように体をかわされて、視線をそらされた。多分、その先は刀と主がする事ではないと思ったのだと思う。だから私はそういう物だと思ってそれを受け入れる事にした
昨夜は私と彼の休暇日の前日だったので夕食とお風呂の後で私の部屋から一緒に映画を見ていた。
体で触れあう事がないだけでそれ以外は普通の恋人同士のように過ごすのが常になっていた。ずっとシリーズを追っていた医療ドラマの劇場版で、主役の男性とヒロインが事件を通して結ばれるストーリーだった。
最後のシーンがロングショットでのキスシーンだったけれど私達には関係ない物と思っていたので特に気まずさもなく「やっとくっついたね、この二人。良かった」と感想を言いながら横を向いた時、不意に顔が近づいて来た時は、何が起きたかと思った。
どうして突然、と思って彼を見ると「……嫌か?」とたずねられた。戸惑いはしたけれど、嫌ではなかったので首を振った。
「――気の利いた口上はなしだ。あんたが欲しい」

てくれていた。楽しかったし、幸せだった。 恋人になって半年が過ぎた頃、一度だけそういう雰囲気になった事があった。 唇が触れかけた時、何かに気付いたように体をかわされて、視線をそらされた。多分、その先は刀と主がする事ではないと思ったのだと思う。だから私はそういう物だと思ってそれを受け入れる事にした 昨夜は私と彼の休暇日の前日だったので夕食とお風呂の後で私の部屋から一緒に映画を見ていた。 体で触れあう事がないだけでそれ以外は普通の恋人同士のように過ごすのが常になっていた。ずっとシリーズを追っていた医療ドラマの劇場版で、主役の男性とヒロインが事件を通して結ばれるストーリーだった。 最後のシーンがロングショットでのキスシーンだったけれど私達には関係ない物と思っていたので特に気まずさもなく「やっとくっついたね、この二人。良かった」と感想を言いながら横を向いた時、不意に顔が近づいて来た時は、何が起きたかと思った。 どうして突然、と思って彼を見ると「……嫌か?」とたずねられた。戸惑いはしたけれど、嫌ではなかったので首を振った。 「――気の利いた口上はなしだ。あんたが欲しい」

初めて同田貫からの私を望むという言葉が告げられて頭が真っ白になった。返事がしたいのに言葉が出てこない私を見て、同田貫は私の手をそっと持ち上げて指先に口づけた。
「ダメだと思ったら、その時に言え。すぐにやめる」
私がそれにどうにかうなずいた後、私がないと思っていた先の事が起きてしまった。

「――あんたが男を知らねえってのはわかったから、体に傷つけるような事をしたいっていうのは武器として変な方向に歪んじまったんじゃないかと思って不安だった。懇ろになっちまった後で男の体(こっち)じゃなくて刀本体(あっち)であんたに触れたいってなっちまったら洒落にならねェだろ」
終わった後で「こんな事がしてぇなんて武器の思う事じゃなかったからな」とため息を吐きながら私を抱きしめる声には不安が杞憂に終わった安堵があるのがわかった。
「すまねえな。とんでもなく大事なモン、全部オレが貰っちまった」
初めて見る、幸せそうな男の人の顔と声だった。
「今更だが、言ってなかったな。オレはあんたに惚れてる。心底からだ」
後になってすまなかった、という言葉に私はありがとうと返事をした。

初めて同田貫からの私を望むという言葉が告げられて頭が真っ白になった。返事がしたいのに言葉が出てこない私を見て、同田貫は私の手をそっと持ち上げて指先に口づけた。 「ダメだと思ったら、その時に言え。すぐにやめる」 私がそれにどうにかうなずいた後、私がないと思っていた先の事が起きてしまった。 「――あんたが男を知らねえってのはわかったから、体に傷つけるような事をしたいっていうのは武器として変な方向に歪んじまったんじゃないかと思って不安だった。懇ろになっちまった後で男の体(こっち)じゃなくて刀本体(あっち)であんたに触れたいってなっちまったら洒落にならねェだろ」 終わった後で「こんな事がしてぇなんて武器の思う事じゃなかったからな」とため息を吐きながら私を抱きしめる声には不安が杞憂に終わった安堵があるのがわかった。 「すまねえな。とんでもなく大事なモン、全部オレが貰っちまった」 初めて見る、幸せそうな男の人の顔と声だった。 「今更だが、言ってなかったな。オレはあんたに惚れてる。心底からだ」 後になってすまなかった、という言葉に私はありがとうと返事をした。

「昨夜この刀と寝てしまったのだ」の同田貫正国版
朝っぱらからすみません
#1032夢

06.08.2025 07:53 — 👍 2    🔁 0    💬 0    📌 0
「好き放題言ってくれるじゃねえか。
 この正三位の目が曇ってるって言うのか?」

オンライン女子会で刀剣男士が付き合っている組が「どうして好きになってくれたかわからない不安」で盛り上がってしまい、私が「見誤ってOKもらえた可能性はあるよね。大人の佳い女ってわけでもないし」と言っていたのを聞かれていたらしく二人きりになった瞬間、顎を持ち上げられて低い声でそう囁かれた。

「好き放題言ってくれるじゃねえか。  この正三位の目が曇ってるって言うのか?」 オンライン女子会で刀剣男士が付き合っている組が「どうして好きになってくれたかわからない不安」で盛り上がってしまい、私が「見誤ってOKもらえた可能性はあるよね。大人の佳い女ってわけでもないし」と言っていたのを聞かれていたらしく二人きりになった瞬間、顎を持ち上げられて低い声でそう囁かれた。

物騒な日本号

05.08.2025 17:26 — 👍 2    🔁 0    💬 0    📌 0
「――やはり気の迷いであったと告げられたとしても、恨み言は言うまいと自分を戒めておりました。逆の立場になって聞かされてみれば、なんと|腑《はらわた》が煮える話か。今後は考えを改めます。何卒、ご容赦お覚悟を」

友達の審神者との電話で「私は『付き合って貰ってる』感じがすごいから遠くないうちに振られそうで不安~」と笑って軽口を叩いていたら、その日の夜に話があると詰められてしまった。「逃げられると思わないで下さい」と微笑まれてドキドキした。

「――やはり気の迷いであったと告げられたとしても、恨み言は言うまいと自分を戒めておりました。逆の立場になって聞かされてみれば、なんと|腑《はらわた》が煮える話か。今後は考えを改めます。何卒、ご容赦お覚悟を」 友達の審神者との電話で「私は『付き合って貰ってる』感じがすごいから遠くないうちに振られそうで不安~」と笑って軽口を叩いていたら、その日の夜に話があると詰められてしまった。「逃げられると思わないで下さい」と微笑まれてドキドキした。

物騒な蜻蛉切さん

05.08.2025 17:07 — 👍 2    🔁 0    💬 0    📌 0
「『|理解《わから》せる』ってやつの意味がわからねェと
 思ってたんだが、今腑に落ちた。こういう時か」
 
 他本丸で自分の刀が本丸外で恋人を作った話を聞いてうっかり「私も他人事じゃないわね。主である事以外に取り得がないもの」と笑った直後、いつの間にか近侍兼恋人が背後から、笑っていない笑い声で私にそう告げた。

「『|理解《わから》せる』ってやつの意味がわからねェと  思ってたんだが、今腑に落ちた。こういう時か」    他本丸で自分の刀が本丸外で恋人を作った話を聞いてうっかり「私も他人事じゃないわね。主である事以外に取り得がないもの」と笑った直後、いつの間にか近侍兼恋人が背後から、笑っていない笑い声で私にそう告げた。

物騒な同田貫正国

05.08.2025 16:33 — 👍 2    🔁 0    💬 0    📌 0

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