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14.03.2025 14:06 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0@makisaka-satoshi.bsky.social
20↑|読み(まきさか さとし)|WB/出モグ|好きなものを好きなだけ X→ https://x.com/MakisakaSatoshi 支部→ https://www.pixiv.net/users/112149484
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14.03.2025 14:06 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0やまさく(⛰🌸)
非日常な経験を🌸に体験させることで、彼を育てて隣に置いておきたい欲深い⛰と、術中に嵌まりかけてる🌸で、ホワイトデーに特別なデザートを一緒に食べるだけの話
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かめさく(🐢🌸)
Dom/Subでtgm(Dom)×skr(Sub)
🦁を立て直している(or終えたか否かの)頃のtgmと対KÈĒLとの抗争を終えた後のskrによる「拒絶」の重要性の話
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「、一緒に、シャワー浴びようぜ」 「っ、後ろ洗わねぇ、と……ぁ、ばか、噛むな……」 「お預けすんなよ桜」 桜の首筋に鼻尖をうずめて甘噛みすればふるりと身が震えた。利口にも棪堂から与えられる刺激をつぶさに性感として拾えるようになった桜。教え込んだのは棪堂なので火を点けることは容易い。 「、……風呂場でなし崩しにスんのかよ……⁉ か、形も大事って言ったのお前だろ」 「そこでその言葉出すかぁ普通?」 「ムード大事にしろ」 「ならサービスしてくれ」 「っ」 「オレはどっちでもいんだぜ」 最終的にぐずぐずに蕩けさせて慈しむことに変わりはないのだから。 「……す、する、から……っ、お前がしてほしいように、抱かれる、から……」 「――言ったな?」 二言は許さぬと念を押せば、含羞して潤んだ瞳のまま小さくこくんと頷いた。棪堂の気分は有頂天。 「じゃあオレが先。桜が後な」 「ちゃんと洗えよ」 「マッハで出る」 「バカ! 洗え隅々まで! 身体あっためろ!」 普段、棪堂が桜に言っている言葉をそっくりそのまま返された。自分が放った言葉が自分に返ってくるとは、なんというか因縁じみていて感慨深い。 無我夢中で身体を洗った。シャンプーなんてしてたら時間がもったいない。早く早くと気ばかり急いてしまう。 時間にしてきっと五分少々。普段の入浴よりずっと短いのはそれ程この後に期待を寄せているからだ。
シャワーを被ったせいで湿ってしまった髪をガシガシと拭きながらリビングに向かい桜の姿を視界にとらえる。 桜はキッチンに立って何かをやっていた。 「何してんの?」 台には棪堂のカップと、エスプレッソマシーン、直火にかけるタイプのマキネッタ。コーヒーを嗜む彼にと棪堂が贈ったものであるので見覚えがありすぎた。そしてコーヒー豆を挽いたのであろうミル。牛乳と茶色い小さなボトル。 「カフェモカ」 「カフェモカ? え? シャワーは?」 「浴びるけど。……浴びた後だと、多分作れねぇから」 何故カフェモカ? しかもそのマグカップは己のもの。つまり棪堂のために作っているのだ。何故、今このタイミングで? と、頭上は疑問符が出現しては消えていく。 カフェモカなど飲んでいる姿を一度もみたことがない。そうだというのに随分と手際よく作られていく。 小さなボトルをひっくり返してスプーンに中身を出し、温めた牛乳に溶かしていく。カフェモカならば、おそらくチョコレートソース。 そこで棪堂は勘づいた。 桜はバレンタインを忘れていたのでもなく、考えていなかったのでもなく、そしてもっと言えば用意していなかった訳でなかった。彼の「ちゃんと用意できてねぇ」とはつまり、花だとかレストランの予約だとか、そういう特別感のある行動ができていないというだけの意味だったのだ。 「お前っ、ほんと……」 背後から覆い被るように抱きすくめた。「やり辛ぇだろ」と静かに諫められてもなりふり構わず腕に力をこめた。
「好き」 くぐもった声で思いの丈を述べる。言わずにはいられなかった。 「知ってる」 くふり、と忍び笑う。 「……百貨店の上にも行った。けど、どれがいいかわかんなくて買えなかった」 ――うわ可愛い! オレのためにチョコレート探しに行ってやがる! 胸中で叫んだ棪堂は歓天喜地。心臓が止まりかけて危うく召されるところだった。 「甘いの、別にすごい好きな訳じゃねぇだろ? 手作りは、ハードル高ぇし、でも、オレもバレンタインだから何かしたくて」 チョコレート感があって、桜が準備しやすく棪堂でも気軽に口にできそうなもの。きっとココアでは甘すぎると踏んだのだろう。だからエスプレッソを用いて作るカフェモカに白羽の矢が立ったのだ。チョコレートソースがあるということは、前もってカフェモカを作る算段を立てていたに違いない。 牛乳とチョコレートソースをよくかき混ぜたそこに豊かで濃密な香りのエスプレッソを注ぎ入れた。 「できたけど、棪堂がイヤじゃなければ、の、飲むか?」 「いやなんで飲まねぇと思ってんの? 何杯でも飲むわ」 天にも舞い上がる心地で、桜からの特別なカフェモカをはやく味わって腹に収めてしまいたいと食い気味に答える。 「じゃあそれ飲んで待ってろよ。……身体洗ってくる」 手を伸ばした桜が頭のてっぺんをゆるりと撫でた。キッチンから去ったその背を視線で追うこともままな
らず、しゃがみ込んで身悶える。誑しめ、と愛おしさがたっぷり含まれた声で詰った。 恋人となってはじめてのバレンタイン。今宵は長くなりそうである。
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14.02.2025 23:35 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0と出会ってから四回目の二月十四日だが、この関係性になってからは初めての二月十四日だ。巷ではバレンタインデーの特集が組まれ、桜の周りもバレンタインに浮足立っている。美容師を目指すための学校であるからか同期には女性も多く、自分用のチョコレートを買い漁っている。一方、男性であっても行事や流行には敏感だ。先週など何人かで連れ立って百貨店に赴きチョコレートを見繕ったと聞き及んでいる。 ――《どこ行く?》 平日の夜のデートは大抵食事だ。この前はイタリアンだったから、和食か、中華か……。焼肉がいいなと脳内で食欲を膨らませる。次の給料日までおよそ十日。懐が寂しくなっているせいで最近はもっぱら魚や豆腐が多い。棪堂が帰ってくる夕餉には肉を出すが、給料日前の時期になると専ら豚肉になってしまう。豚肉だって調理方法によってはボリュームも出るし美味しい。疲労回復にもってこいだが、懐事情を気にせず牛肉を堪能したかった。 ――《肉食おうぜ》 ――《おう》 文面の落ち着きとは裏腹に、桜の表情は仄かに笑みを浮かべている。提案にご満悦の証だ。 ――《旨いトコ予約してあっから》 へぇ、と小さく感嘆が漏れた。リサーチ上手な上に根回しも巧みな彼の強みが遺憾無く発揮されている。 ――《肉食いたかったから楽しみ》 本心から文字を打ち込む。 ――《ステーキだから腹空かせとけよ!》 「ステーキ……!」 表示された単語をなぞって音に乗せる。それは感情表現の苦手な桜なりの歓声でもあった。
◆ 昨晩独りでベッドを温めたであろう桜は果たしてよく眠れただろうか。自分は寝付きが悪くて、ちょっと度数の高い酒を煽って無理やり目を閉じた。 棪堂哉真斗、二十一歳。寒い冬の木枯らしが吹き荒んでも、或いは不運が襲っても気にならない、世界一の幸せ者だと自負している常春の住人とは自分ことだ。 彼が近くにいる事実に高鳴る胸を押さえつつも、朝を迎えるのが楽しくてしょうがない毎日。それでも半同棲という中途半端な形で、焚石と同居していた家との間を行き来しているのは偏に桜を過剰摂取して日々の生活に手がつかなくなることを危惧したからである。彼を慮るためなんて出まかせ。つまり方便である。 朴念仁のような状態に陥ってしまっている棪堂は綱渡りで手探り状態なのだ。 夜も目が冴えるほどに緊張しているのは今日が二月十四日だからである。自分の中の常識は通用しない相手で且つ失敗できないともなれば慎重にもなるというもの。 二月十四日とは世間は言わずと知れたバレンタインデー。恋人たちの間では誕生日やクリスマスに次いでかなり重要性が高いイベントである。これまでのバレンタインデーは完全に受け身の貰う側。彼女やセフレからチョコレートを受け取っても実際には口にしていなかったし、一ヶ月後のお返しを考えないといけないという些か面倒な行事だった。 バレンタインに消極的だった棪堂が柄にもなく浮かれている。きっと歴代の彼女が目の当たりにすれば「天変地異の前触れか⁉」と慄くことだろう。 爛れた肉体関係も味わい尽くし、デートは無論のこと、交際相手を喜ばせる行動や好きそうな言葉を弄す
ることも得意である。だが、終生の人と定めた桜が相手となれば俄然やる気が沸いた。彼への想いを遂げた喜びからおよそ一年。恋人達のイベントであるクリスマスも終えたというのに、初めて迎えるバレンタインに棪堂はやきもきしているのである。 男同士であるしバレンタインとは縁が薄かったであろう桜だ。チョコレートを用意していることはないだろう。それは別に構わない。 一方の棪堂は違う。 目の前でシェフが焼いてくれるような少々お高めの鉄板焼きの店を予約し、花屋で数本の薔薇をフィルムで簡単にラッピングしてもらい、良い肉を食べに行くだけにしては小洒落た装いで車を走らせている。 黒のタートルネックのリブニットは薄手なのでスリムなシルエットだが質の良いカシミヤなので非常に温かく、それにジャケットを合わせて、ボトムスは細身。桜が気後れしないようにカジュアルさがありつつも、少し綺麗めに見えるものを意識した。折角の平日夜のデートなのだ。あわよくばそのまま二人で過ごす夜に耽溺したい。桜より物事を知ってはいるが棪堂だってまだ二十歳を過ぎたばかり。若さと情熱が先行し、どうしても本能が旺盛となっている年頃だ。ましてや視線がかち合っただけで熱情が滾る存在を前にすれば猶更だろう。 付き合って最初のバレンタイン。今後は特別なことをしないとしても、彼の中で最初の記憶くらいは素敵に彩られてほしかった。 誰がどう見ても浮かれ野郎な状態の棪堂と待ち合わせ場所で車に乗り込んだ桜は、その花瞼をまん丸く開いて戸惑っていた。 「わりぃ……。普段の格好で来ちまった」 棪堂の装いに、学校帰りでそのまま待ち合わせた桜
はバツが悪そうに眉尻を下げた。 「そんな顔すんなって桜。今日バレンタインだからさ、オレが勝手に格好良く見られたかっただけだから」 「! もしかして今日、肉食いに行くのって……」 「そ。付き合って最初のバレンタインは特別にしてぇだろ?」 「オレ、ちゃんと用意できてねぇ」 「なぁに、気にすんなよ。本来は男が恋人に花とかメッセージカードとかプレゼントするイベントなんだぜ? 女から男にチョコレートを、っつーのは菓子メーカーが考えた商戦だ」 「そ、そうなのか」 「そうそう。だからまぁ、オレらは野郎同士だけどバレンタインだしさ。……これ、受け取ってくんね?」 差し出したのは深緋色の薔薇三本。 「薔薇って……。棪堂、お前……ベタ……」 白皙の頬がみるみる内に真っ赤に染まりはじめる。照れと羞恥が綯い交ぜになった彼の頬に差した色は、薔薇の色より可憐で桜花の色よりずっと艶美である。 「言うなよ、似合ってねぇのはわかってンだ。……マジで全っ然、柄じゃねぇけど、形から入るのだって大事だろ?」 運転席のハンドルに突っ伏すようにして気恥ずかしさを誤魔化した。車内に流れる微妙な生温さとしとやかさのある甘さ。 「……さんきゅ」 潰さぬよう、桜はそれを大事そうに抱えていた。 目の前の鉄板で焼かれるステーキに気分を高揚させ、舌鼓みを打った二人は寄り道もせずまっすぐ自宅に帰る。お互い考えることは一緒だったのだろう。玄関に入るや否や、お互いをきつく掻き抱いた。
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14.02.2025 23:35 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0「えっ⁉ もしかしてずぅ~っと一緒にいること期待してくれてた感じ⁉」 「なッ! ち、違ぇし!」 「ふぅ~~ん?」 「そんな風に揚げ足取んなら住まねぇぞ!」 揶揄うような笑みに腹立たしくなり脅しをかける。 「嘘! 嘘! ごめんって桜ぁ! 期待してくれたのかと思って調子乗りました‼」 結局桜にとっては利益しかない同棲の持ち掛けにより、首を縦に振る以外に選択肢は無いと言っても過言ではなかった。 棪堂には奉仕精神を傾けて尽くしている焚石との生活拠点も残しているため、同棲ではなく正確には〝半同棲〟状態となったが、恙無く日々を送っている。 トントン拍子に半同棲の話は進み、高校卒業を機に移り住んだカップルやルームシェア向きの賃貸マンション。 築年数は五年程で、日当たりのとても良い1LDKのおよそ三十三平米。収納や調理設備、水回りなどが綺麗に整えられており、最寄駅までは徒歩十分未満という好立地。まこち町にいた時に住んでいた趣のある木造アパートとは異なりこちらは鉄筋コンクリート。高い耐震基準がクリアしているのは勿論のこと、しっかりと断熱材が使われているおかげで夏の暑さも和らいでいる。冬の早朝は以前よりはずっと暖かく感じる。 風呂は全自動で湯を張ることができ、浴室には乾燥機までついているので雨の日の洗濯も問題なかった。洗濯機は斜め式ドラム。こちらにも乾燥機能がついているので洗濯はかなり楽になった。 家賃は月十三万八千円。カップルやルームシェア向けの物件なので折半するのだと思えば広さの割にそこまで高くはない。棪堂が「オレの方が年上だし、収入
もあるから」と家賃の三分の二と光熱費を負担してくれている。もう三分の一と食費や日用品は桜のアルバイト代から出しているが、棪堂がこの家で食事をするのは朝と休日の夜で、毎日ではないのであまり食費はかからなかった。 二人で寝ても十分な広さのベッドは一人で眠るには大きすぎて、恋人が不在の夜は寒さを感じることもあるが、時折、無性に一人で眠りたい宵が訪れる桜には案外彼がいない日に胸を撫で下ろす心の揺れも起こっていた。この相反する二つの機微を行き交う人の心とはなんて難しいのだろう。いつか慣れる日が来ると信じて、桜は棪堂に「おかえり」と声をかけるのだ。 洗顔や歯磨きなどの身支度ですっかり冷えた肩を僅かに震わせながら、やかんに水を汲み火にかけた。ポトスでの朝食や棪堂との喫茶を経て、コーヒーや紅茶を飲むことがすっかり習慣となっていた。それらをある種の娯楽とするようになった桜は紅茶を淹れるためのポットや、コーヒーを一から楽しむためのコーヒーミルなど、風鈴高校時代の友人から誕生日プレゼントとして贈られており、今も愛用している。 コーヒー豆を入れたミルをガリガリと挽きながらくわぁと欠伸を噛み殺した。粉状になったコーヒーをステンレスフィルターに移し、ドリッパーの上にセットして下にはマグカップを設置。 湯が沸くのを待つ間に別のコンロでは目玉焼きの準備。 ハムやベーコンを先にサッと炙れば油がフライパンに落ち、テフロン加工が施されていることも相俟って、油を敷かずとも十分焦げ付きが防止できるのだ。ちょっぴり自炊をするようになった桜の便利技である。〝技〟などと大逸れたことを言っているが決して大層
なものではない。 台でコンコンと生卵の殻に罅。一つ、二つ、三つ……と割り入れて、しまったと眉を顰めた。 「今日いねぇじゃん……」 棪堂は夜の十時前には家に帰ってきてそのまま一晩を過ごし、朝食を共にしてからお互いに学校へ赴く。相手は大学、桜は専門学校だ。桜は料理が得意ではないのだが、普段の朝食くらいは一通りそれっぽいものが出せるので、棪堂の分も用意するのが日課だ。起きられない朝は棪堂が用意している。彼のせいで起きられないので、その時ばかりは彼が用意して然るべきである。 朝食では目玉焼きを棪堂は二つ、自分は一つ。一度の朝食で計三つ食べるので、つい癖で三つ割ってしまったのだ。慣れとは恐ろしいものである。 「……仕方ねぇな、夜か明日食うか」 流石に目玉焼き三つも朝から食べなくていい。夕飯のおかずに回してしまえと溜息を吐いた。沸きかけたやかんの湯をフライパンへ少量だけ加えて蓋をして蒸し焼き。こうすると比較的早く火が通る。時短テクニックを採用しておきながらも、桜は良く焼いた方が好みなので結局最後はひっくり返して両面焼きにしてしまうのだが……。 六枚入りの袋からパンを一枚出して、予熱しておいたコンロのグリルに放り込む。生憎トースターは無いが、魚を焼くグリルで十分表面は狐色になるので問題はない。 そうこうしている間に湯が沸いた。コーヒーの粉末を敷いたフィルターにゆったり注ぎ入れる。抽出している傍らで目玉焼きをフライパンから皿へ移しハムと並べ、表面が少し狐色になったパンを乗っければ朝食のワンプレートの出来上がり。
野菜は今も得意では無いが、スープにしてしまえば意外と食べられることを知ったので何かしら野菜入りのスープが用意してある朝が多い。しかし今日は独りだとわかっていたので昨晩作っておかなかった。スープがない代わりに野菜はトマトジュースで代用しよう。 起床からおよそ三十分。桜は食卓のダイニングテーブルに座っていた。 パンに齧りつけばサクッと軽やかな音。小麦の香りがふわりと漂う。すかさず一口大に切り分けた目玉焼き。そしてコーヒーをちびりと含む。香ばしさが鼻腔をくすぐった。 味覚と嗅覚が桜の脳内を刺激して覚醒へと導かれることで一日は始まりを告げる。いつもの朝のルーティンだ。 ポコン! と短くスマホが鳴いた。呼ばれた桜は宥めるように画面をスライドさせる。もちろんパンは片手に持ったまま。 ――《明日の夕飯、一緒に食おうぜ》 メッセージの送信者は棪堂だった。 ――《バイトねぇだろ?》 返事をする前に新たなメッセージが続く。 ――《ない》 ――《じゃあ夜デートしよ》 桜はスタンプで承諾の意を示す。 スケジュールアプリを共有しているので、桜が放課後オフであることは一ヶ月以上前から訊くまでもなく知っているのだが、お伺いを立てるのはデートに誘うための様式美というやつなのだろう。 壁に吊り下げてあるカレンダーに目を向けた。明日は二月十四日、お誂え向きにもその日は金曜日。棪堂
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14.02.2025 23:35 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「Espresso and Chocolate sauce」、「巻逆 理(@MakisakaSatoshi)」と記載されています。 画像情報:generated by 新書ページメーカー / Photo by Charisse Kenion on Unsplash / フォント:源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 Espresso and Chocolate sauce ・棪堂×桜(やまさく) ・二十一歳の棪堂(高卒認定取得後に大学進学)と、十八歳の桜(高卒後、専門学校進学。誕生日前なのでまだ十八歳)で交際後はじめてのバレンタインを迎えた二人。 外に出ればまだ突き刺さるような寒さを覚える二月。強い北風が吹けば身は縮こまるが、風のない穏やかな昼間はぽかぽかと春の陽気を先取りしているかのような春情の走り。小さな木は花の蕾を膨らませ、心なしか日も延びはじめている。 朝起きて布団から這い出して向かう洗面所。捻った蛇口から流れる水。触れれば痛みを覚える程の冷たさで顔を洗う。目は覚めるが、指が悴む。 ――水ぬるくなってから顔洗えよ。あぁほら、言わんこっちゃねぇ、頬が冷えてやがる。 日頃そうやって諌めながら無骨になりつつある自分の手を握って指を絡めて体温を分け与える男の声が脳内で木霊した。 言わんとすることは理解できるが、これまではもっと雑で質素な暮らしをしていたのだから問題ない。……そうは思えども、朝を共にする男が桜自身の幼少期の不遇に対して眉をひくりと引き攣らせ、怒りと憐憫の狭間で揺れ動き、同情を覚えたことを自覚して苦虫を噛みつぶしたような顔をするので、彼が自己嫌悪を抱いてしまわぬように言わないことを心がけている。桜自身のことで男の感情が揺れ動くのであれば、それ
はもっと熱く胸を振るわせるような感情であってほしいと贅沢にも思っているからだ。 それに何も冷たい水を朝から使うのは何も痩せ我慢やこれまでの生活習慣から来る行動ではない。 給湯器を動かしているとガス代がその分かかるので、節約のために夜中は止めてしまうという事情があるのだ。洗面台の蛇口を捻る前に給湯器をつけても暫くの間はどうしても出てくる水は冷え切っている。それを無駄に流すと今度は水道代が嵩むというジレンマが起こってしまう。 ならば少し我慢して顔を洗ったり歯磨きをしたり、身支度のために使ってしまった方が建設的だろう。 それを告げればきっと彼は光熱費も水道代も気にするなと言うのだろう。彼に負担してもらっている手前、桜なりのけじめだ。 今日は家にいないが、桜が指す〝彼〟とは棪堂哉真斗。 桜が風鈴高校一年の初夏に出会った人物のことである。 知り合った際の経緯は割愛するが、その後喫茶店で頻繁に顔を突き合わせ、他愛もない話をしながら〝顔見知り〟という段階を二年近く続けた。その関係性に変化が訪れたのは、桜が高校を卒業する頃、つまり今からおよそ一年前のことである。 「オレだけをお前の男にしてくれ」 良く言えば詩的で、端的に言えば迂遠的。そんな回りくどい懇願に、桜は自分の頬に熱が溜まるのを感じた。それはつまり齎された願いに満更でもなかったということで。気がつけば「オレでいいのかよ」と、まるで不貞腐れたように小さく頷いていた。
それ以前にも、棪堂から漏れるただならぬ感情の矢印に気がついていなかった訳ではない。桜は自己肯定感も自己価値も低く見積もってしまうきらいがあるが、他者から向けられ感情には敏感だったからだ。例に漏れず、彼から波及する熱と獲物を狙うようなヒリつく視線の貪婪さも瞭然と認識していた。欲を潜ませた感情に薄々勘付いてしまえば、見て見ぬふりをするのは容易ではない。とはいえ肝心の棪堂は行動を起こすでもなく、真意を探る確認も投げなかった。敵意もなく悪意もないのに狙いを澄まされたことに対してどう反応すれば良いのかわからず戸惑っていたのである。 真っ直ぐとは言い難くも棪堂の伺いは二人を収まる所に無事収めた。世間一般での価値観に当てはめると〝恋人〟という関係に腰を据えたことになる。 そんな棪堂は昨年の晩秋に誕生日を迎えて二十一歳となった。 高卒認定を取得後に大学受験を経て進学を果たし、今では法学部で学んでいる。高卒認定を取った関係で今は大学二年生だ。法学部に進んだのはあくまでも弁護士をはじめとした〝士〟業に繋がりやすいからという理由らしいが、弁護士になるか、他の道に進むかは漠然としているようだった。 将来何があってもいいように、彼は現在、株や仮想通貨、FXといった方法で自身の財産を増やしており、生活水準の面では桜とは天と地程にも開きがある。 価値観の不一致による破局もあるから、桜は経済的な立場の差が開いていることに複雑な気持ちもあるが、こればかりはどうしようもない。 小さな頃からずっと生活水準が低かった桜はまこち町に住んだことで人と関わるようになり「人の営み」を学んだ。高校の途中から自炊をするようにはなった
が、それでも棪堂から言わせてみれば「とても清貧で質素な暮らし」だったようで、常に不安を与えていたのである。 棪堂が桜の歩幅に合わせてお手頃な家賃の賃貸マンションで半同棲をしているのは、桜の生活水準を段階的に上げることで棪堂との暮らしに慣れさせ、価値観の不一致での破局を防ごうという狙いがあるのだろう。はっきり明言しなかったのでその真意を実際のところは図りかねている。 半同棲も一年近くになった。一緒に住もうと切り出されたのは交際直後で、自分の頭の中では同棲の〝ど〟の字もなかったため困惑の方が勝った。だが相手はそうではなかったらしい。 「桜が風鈴を出てフリーになんの待ってたんだぜ」 にやりと笑って差し出したのは物件情報の紙。まこち町のアパートから通学しようと思っていた桜に突如として提示された賃貸マンションは、専門学校がある最寄駅の沿線上。今の家よりもずっと通いやすく、家も駅近で情報面では悪くなかった。 「もしかして、お前がオレの進学先どこか聞いたのもこのためか⁉」 「リサーチは重要だろ~? 内見も周辺地域の下見も済ませといた」 用意周到すぎて、開いた口が塞がらないとはこのことか。 「いや……っつても焚石はどうすんだよ」 「行ったり来たりって感じ? まぁでも今焚石と住んでる場所からもそんなに離れてねぇから」 「完全に一緒に住む訳じゃねぇのか」 四六時中傍に人の気配があるわけではないことに安堵を覚えるような、同棲と言いながらも棪堂がいない日が頻繁にあるだろうことに物足りなさを感じるような……。
やまさく(⛰🌸)
end(21)×skr(誕生日前の18)で、交際後はじめてのバレンタインを迎えた二人の話
※半同棲状態
※Xからの自家再掲
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02.02.2025 13:09 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0(2/3)※全12頁
02.02.2025 13:09 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0やまさく⛰🌸
skrが初めて恵方巻きを食べた時の話と、初めて作った時の話(後半、未来捏造で同棲描写あり)
※Xからの自家再掲
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16.01.2025 13:58 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0やまさく⛰🌸
これでもかと貢ぎたいendと、貢ぐことが彼なりの愛情表現なのかもしれないと勘づいたskrの話
※Xからの自家再掲
(1/4)※全14頁
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14.01.2025 14:05 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0やまさく⛰🌸
独占欲を発揮させて、喧嘩後の怪我の確認にかこつけてskrの口を弄るendと、指で無遠慮に口の中を弄られて「口内チェック」を受ける羽目になったskrの話
※Xからの自家再掲
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やまさく
微.かめさく
付き合ってないし身体の関係もない、やまさく前提(両片想い)で、自分だけがendのことを想っていると思い込み、初めての恋にぐちゃぐちゃになったskrが、tgmとお揃いの刺青を入れる話
善良なる悪辣
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やまさく
欲しくてたまらなかった🌸が、まだ染まり切っていないことを知った⛰が、己の存在を挟み込む余地があることを良いことに手を伸ばして執心を見せる話
見初めた男
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