「お前……家に来るか?」
「え……いいんですか?」
「ああ……ついてこい」
「はいっ!」
男は『捨て犬』というプレートを首からぶら下げて地べたに座り込んでいた。住宅街の植込み花壇の前。どこからどう見ても人間成人男性のこの男が何故『捨て犬』なのかは解らない。きっと途方もなく深い理由があるのだろう。普段運転手付き車移動の高人がこの道を通りがかったのは偶然だった。こいつ捨てられた子犬みたいな目をしてやがる。高人は動物好きだった。その凛とした美麗な外見に反して男気に溢れ情に厚い性格なのだ。
「うちには生ハムとビール位しかない。コンビニ寄ってくか?」
「お願いします……俺、腹ぺこで」
「気にすんな」