わ

あからひく朝な夕なに訪（と）ひ来たる懐かぬ猫の餌代高し

おほみ田のしみみに生ふる玉苗の陰にて揺るる塔花ゆかし

やまたづの向つ峰てらす春茜さやぐ若葉を深く染めをり

湊川七瀬の淀を照らしたる夜渡る月の影は澄みけり

望月にかかる薄雲冴えざえと青みて照るや夜半のみ空に

あらぬ世に逝きし猫の身あらなくに
ふと見る椅子にあるやと覚ゆ

たまゆらに心ゆき果つ我いまし大内山に差せる日を浴む

たまきはるいのち儚きくれなゐの椿は纏ふ清きみ雪を

あを空の澄めるみ中にまかがよふいかし日見れば君を思ほゆ

足なへの母に見せたし静寂なる侘しき坂に映ゆるもみぢを

なつかしき歌謠曲の流れたる馴染み店の蕎麥湯身に沁む

積りたる今年の憂さを晴らしてむ暮れ行く年の酒場に挑む

散り終へし櫻の枝に照り映ゆる
靑きいのちを誰か知るらむ

散りあへぬ花にまじれる若き葉の
夕かげ淡く染まりゆくかも

知るらめや世のひと花に醉ひしころ
靑き銀杏葉さやに芽吹くを

けふもまた雨とばしれば神さぶる
杜は衣をまとひたるらめ

雨催ふ空も笑まざる櫻枝も
たぎつ心を押しひしぐかな

本當に「秀句」だと思ひます

うす曇るみそらのもとにさにつらふ
いまだふふめる櫻のおもひ

もゝくさの茂りあひたる春の野に
黃金色なる枯れ草の見ゆ

風わたる戸の音なひにまがひたる
遊ぶ童のこゑぞけ淸し

澄みとほる小夜のみそらの夢見月
みればかなしもせはしき我は

雲居なる庭にみかげのゆらぐ見ゆ
霜に耐へ來しはるひ浴む松

こともなくいきあふ人を眺めつゝ
マクドナルドでポテト食みをり
（東京大空襲より七十九年）

何卒御自愛ください

さにつらふ葉の柄まばゆきゆづり葉の
その心葉に 我を思へり

すみそめの町にしあれば淺黃なる
知らぬ小花の目もあやに映ゆ

臥し處にて愁ひつのらせハイプロン
飮まば我が身の崩れゆくなり

ひさかたのぬくき日差しに浮かれたち
逃げみづ追ひつバイク飛ばせり

くれなゐの血のごとき梅おごそかな
夜風に吹かれこぼれゆくかも