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幾霜

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クロスフォリオ最大の利点は、クロスフォリオに投稿したものは、著作権法第30条の4、47条の5権利制限を言い訳に生成AIに使う法的な正当性がなくなること
そして著作物運用の範囲が明確で逃げ場がないから、クロスフォリオが勝手にAI作るって言い出した場合にも著作権者に異議申し立てをする余地が残っていること

『契約の仕組み』でこれ以上守られるプラットフォームは国内に他にないので、作品投稿にクロスフォリオを使うメリットは大きいです

04.09.2025 04:41 — 👍 283    🔁 213    💬 1    📌 1

六年生みんな一緒にしたいよ〜〜あとけもみみはとても精神に効くので何とかしてこの手に入れたい…かわいい…

06.06.2025 12:28 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

たまたまお休みだったので零時からほわぬい狩りしてた、ろくいろくはは意地で捕まえましたがろくろが手に入りません…

06.06.2025 12:26 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

ヌが足りない気がするな…いや絶対足りてない

18.05.2025 14:00 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0

GW辺りから労働が大爆発でしょげてる…ついでに不眠も大爆発…

18.05.2025 13:59 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
Post image Post image 18.05.2025 13:57 — 👍 11    🔁 0    💬 0    📌 0

メッチャタノシミ

28.03.2025 12:35 — 👍 0    🔁 0    💬 0    📌 0
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『モニュメントバレー3』のPC・コンソール版が発売決定、前作『モニュメントバレー』と『モニュメントバレー2』も登場。Nintendo Switch、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X/S、PC(Steam)に向けて。トリックアートのような世界で味方を導くパズルゲーム
https://news.denfaminicogamer.jp/news/250328j

28.03.2025 01:35 — 👍 56    🔁 53    💬 0    📌 4
Post image 10.03.2025 10:02 — 👍 13    🔁 1    💬 0    📌 0
ジュラルドンは立ち上がり、キバナの元に寄ってくる。
「寒くないか?」
 そう言いながら、キバナは相棒の頭に手を伸ばした。指先は濃い肌でもわかるくらいに悴んでいる。少しの逡巡、そしてわずかなためらいと共に、ジュラルドンの頭が差し出される。それに気づかない振りをして、キバナは相棒に降り積もった雪を手で払った。きっとこの程度の雪も寒さも、彼にとっては大したことじゃないんだろう。でも心配するくらいは良いよな。口には出さずにそう思う。
 雪を払ってなお、ジュラルドンは動こうとしなかった。依然差し出され続ける頭に、キバナは薄く笑う。野生下では、誰かに撫でられることなどなかったはずだ。そもそも頭部に触れられることは攻撃以外に有り得なかっただろう命が、何の疑問も持たずに撫でろと催促してくる。そのことに目を眇めながら、キバナはわしわし、ガシガシと揺さぶるように乱雑に撫でた。そのたびに楽しげな声が上がる。キンと冷えた合金の肌は触れるたびに一瞬キバナの肌に張り付き、剥がそうとすると引き攣れて痛い。でもそんなことキバナにはどうでも良かった。ただ相棒が気付かなければ良い、と思う。人には少しばかり厳しい寒さだとして、でもジュラルドンにとっては心地がいいのなら、それだけで今朝はとびきりいい朝だ。

***

 ばふばふとシーツを叩いていたはずの尻尾はいつの間にか力なく投げ出されている。微かな寝息も聞こえてきて、キバナは籠めていた力を抜いた。
「……お前のせいでフライゴンに怒られたじゃねぇか」
 そう嘯きながら抱き込めたジュラルドンの体はひんやりとしている。濡れているところがないかもう一度確かめてから、キバナは放り投げてしまった毛布に包まりベッドに倒れ込んだ。当然のように一緒に寝そべり毛布に入れろと催促してくる相棒に苦笑しながら、ジュラルドンのためのスペースを開ける。温まった空気と合金の纏う冷気が混ざり合って、そのうちに同化する。キバナのためではない温度。窓の外からは雨の音が絶え間なく響いている。そうか、と思う。そうか、もう雨か。
 もう雪にはならなず雨として降り落ちる水。たまに吹

ジュラルドンは立ち上がり、キバナの元に寄ってくる。 「寒くないか?」  そう言いながら、キバナは相棒の頭に手を伸ばした。指先は濃い肌でもわかるくらいに悴んでいる。少しの逡巡、そしてわずかなためらいと共に、ジュラルドンの頭が差し出される。それに気づかない振りをして、キバナは相棒に降り積もった雪を手で払った。きっとこの程度の雪も寒さも、彼にとっては大したことじゃないんだろう。でも心配するくらいは良いよな。口には出さずにそう思う。  雪を払ってなお、ジュラルドンは動こうとしなかった。依然差し出され続ける頭に、キバナは薄く笑う。野生下では、誰かに撫でられることなどなかったはずだ。そもそも頭部に触れられることは攻撃以外に有り得なかっただろう命が、何の疑問も持たずに撫でろと催促してくる。そのことに目を眇めながら、キバナはわしわし、ガシガシと揺さぶるように乱雑に撫でた。そのたびに楽しげな声が上がる。キンと冷えた合金の肌は触れるたびに一瞬キバナの肌に張り付き、剥がそうとすると引き攣れて痛い。でもそんなことキバナにはどうでも良かった。ただ相棒が気付かなければ良い、と思う。人には少しばかり厳しい寒さだとして、でもジュラルドンにとっては心地がいいのなら、それだけで今朝はとびきりいい朝だ。 ***  ばふばふとシーツを叩いていたはずの尻尾はいつの間にか力なく投げ出されている。微かな寝息も聞こえてきて、キバナは籠めていた力を抜いた。 「……お前のせいでフライゴンに怒られたじゃねぇか」  そう嘯きながら抱き込めたジュラルドンの体はひんやりとしている。濡れているところがないかもう一度確かめてから、キバナは放り投げてしまった毛布に包まりベッドに倒れ込んだ。当然のように一緒に寝そべり毛布に入れろと催促してくる相棒に苦笑しながら、ジュラルドンのためのスペースを開ける。温まった空気と合金の纏う冷気が混ざり合って、そのうちに同化する。キバナのためではない温度。窓の外からは雨の音が絶え間なく響いている。そうか、と思う。そうか、もう雨か。  もう雪にはならなず雨として降り落ちる水。たまに吹

き込んでくる風は冷たく、でもわずかに柔らかい。たしかに冬で、でも冬にしては暖かい。雪山に住むはずの生き物にとっては暑いくらいなのかも。人間であるキバナにはわからないけれど。それでも少しずつ、確実に季節が移っていくのを感じる。これからだんだんと気温が高くなっていって、そうしたら遠慮なく相棒は引っ付いてくれるだろうか。キバナの手が冷え切った合金で悴むことを気に病まないで? でもそんなの、ハナからキバナは気にしてなんかいないのに。
 いつの間にか水の匂いが混じるようになった湿った風とやまない雨脚に、ほぅ、と息を吐いた。もう、雪ではないのだ。ジュラルドンにはかわいそうなことに、ヌメルゴンにとっては喜ばしいだろうことに。
 目を閉じたまま、息を吐く。すっかり夢のなかの相棒たちの寝息と空調の音、それから遠く街のどこかを走る夜間の貨物列車の音だけが雨音に混じって微かに聞こえる。ようやく訪れたはずの眠気はじゃれているうちに掻き消え、目が覚めてしまった。身じろぎをするたびに体温で温まったシーツと夜のゆるやかな冷気が混ざり合う。風は強いのに柔らかくて、毛布から顔を出しても鼻先は悴まない。冬の間は毛布にくるまっていた誰かの尻尾や脚や触角や鼻先が、少しずつ布団からはみ出してくるようになる季節が来る。
 寝はぐれてしまったな。まんじりともせず、小さく身じろいで目を開ける。薄い金色が見えて、キバナは息を詰めた。遠近感のない濃い闇のなかで、ハッとするほどの近さだった。まるで霧灯のような薄い金色がぱちりと瞬きする。もうとうに寝てしまったと思っていた相棒と目が合って、お互いに驚いている。それが無性におかしくて、毛布に潜ってくすくすと笑い合った。合金の肌はすっかり温まっている。

き込んでくる風は冷たく、でもわずかに柔らかい。たしかに冬で、でも冬にしては暖かい。雪山に住むはずの生き物にとっては暑いくらいなのかも。人間であるキバナにはわからないけれど。それでも少しずつ、確実に季節が移っていくのを感じる。これからだんだんと気温が高くなっていって、そうしたら遠慮なく相棒は引っ付いてくれるだろうか。キバナの手が冷え切った合金で悴むことを気に病まないで? でもそんなの、ハナからキバナは気にしてなんかいないのに。  いつの間にか水の匂いが混じるようになった湿った風とやまない雨脚に、ほぅ、と息を吐いた。もう、雪ではないのだ。ジュラルドンにはかわいそうなことに、ヌメルゴンにとっては喜ばしいだろうことに。  目を閉じたまま、息を吐く。すっかり夢のなかの相棒たちの寝息と空調の音、それから遠く街のどこかを走る夜間の貨物列車の音だけが雨音に混じって微かに聞こえる。ようやく訪れたはずの眠気はじゃれているうちに掻き消え、目が覚めてしまった。身じろぎをするたびに体温で温まったシーツと夜のゆるやかな冷気が混ざり合う。風は強いのに柔らかくて、毛布から顔を出しても鼻先は悴まない。冬の間は毛布にくるまっていた誰かの尻尾や脚や触角や鼻先が、少しずつ布団からはみ出してくるようになる季節が来る。  寝はぐれてしまったな。まんじりともせず、小さく身じろいで目を開ける。薄い金色が見えて、キバナは息を詰めた。遠近感のない濃い闇のなかで、ハッとするほどの近さだった。まるで霧灯のような薄い金色がぱちりと瞬きする。もうとうに寝てしまったと思っていた相棒と目が合って、お互いに驚いている。それが無性におかしくて、毛布に潜ってくすくすと笑い合った。合金の肌はすっかり温まっている。

本当に似たような話ばっかり書いてる
読まなくていいです

23.02.2025 18:58 — 👍 7    🔁 1    💬 0    📌 0
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「いずれ祝祭の日々」、「@7gasea.bsky.social」と記載されています。
以下は本文の内容です。

 冷たい風が肌を撫で、揺らぎかけていた意識が輪郭を取り戻す。じゃばざばとも、ざろろろとも言い難いノイズのような音に予言が外れたことを知る。絶え間なく続く言明しがたい音は、でも耳障りではない。耳を傾けるともなしにぼんやりと目を瞑っていると、音の種類や強弱がだんだんと粒だってくる。意外と高く澄んだものも混じっているのだな、と思う。あれは雨樋を伝い落ちる細かな水しぶきだろうか。濃い雨の気配。
 そうか、雨か。
 予言は外れたのか、と思う。明日は出かけられそうにもない。少しだけ、残念だ。夕方から本降りになるでしょう、洗濯物はお早めに、と言う予言に「じゃあ午前のうちにどこかに出かけようぜ」と約束していたのに。相棒たちは悲しむだろうか。それとも怒るだろうか。そんなことをぼやける頭で考える。寝返りを打つと、ベッドが僅かに軋む。ギ、ギ、という木の擦れる音。
 ギ、ギ、キィ。
 ベッドが軋み、なにかがもぞもぞ近づいてくる感触。そのたびに揺れる空気はキンと冷たく、でもわずかに柔らかい。す、と息が通る。ほんの少し前までは、頬が悴み指先は氷のように凍え息をするたび肺腑まで痛むようだったというのに。少しずつ、でも確かに季節が移っていくのを感じる。
「……ところでオレさまはぁ、ちゃんと窓を閉めて寝たはずですが……」
 うつ伏せ、瞼を閉じたまま呻くように口を開く。ようやく訪れたはずの眠気の残り香に、まだ脳の芯がぼんやりとしている。
 突然声を上げたキバナに、ベッドの上でもぞついていた何かはビクッと身を固め、動かなくなった。そのことに薄く笑って、キバナも重たい体をずりずりと起こす。
「勝手に開けたのは誰ですか。そこのジュラルドンくん目を見て正直に言いなさい」
「ギュア……」
 気まずそうに後ずさりする巨体に手を伸ばす。「ゴーキン!」と情けない声を上げた相棒を羽交締めにし、キバナはその頭に手を伸ばした。
「お前ってやつは!」
「ギュア、ギャウ、ギャ」
 わしわし、ガシガシと揺さぶるように撫でる。そのた

印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「いずれ祝祭の日々」、「@7gasea.bsky.social」と記載されています。 以下は本文の内容です。  冷たい風が肌を撫で、揺らぎかけていた意識が輪郭を取り戻す。じゃばざばとも、ざろろろとも言い難いノイズのような音に予言が外れたことを知る。絶え間なく続く言明しがたい音は、でも耳障りではない。耳を傾けるともなしにぼんやりと目を瞑っていると、音の種類や強弱がだんだんと粒だってくる。意外と高く澄んだものも混じっているのだな、と思う。あれは雨樋を伝い落ちる細かな水しぶきだろうか。濃い雨の気配。  そうか、雨か。  予言は外れたのか、と思う。明日は出かけられそうにもない。少しだけ、残念だ。夕方から本降りになるでしょう、洗濯物はお早めに、と言う予言に「じゃあ午前のうちにどこかに出かけようぜ」と約束していたのに。相棒たちは悲しむだろうか。それとも怒るだろうか。そんなことをぼやける頭で考える。寝返りを打つと、ベッドが僅かに軋む。ギ、ギ、という木の擦れる音。  ギ、ギ、キィ。  ベッドが軋み、なにかがもぞもぞ近づいてくる感触。そのたびに揺れる空気はキンと冷たく、でもわずかに柔らかい。す、と息が通る。ほんの少し前までは、頬が悴み指先は氷のように凍え息をするたび肺腑まで痛むようだったというのに。少しずつ、でも確かに季節が移っていくのを感じる。 「……ところでオレさまはぁ、ちゃんと窓を閉めて寝たはずですが……」  うつ伏せ、瞼を閉じたまま呻くように口を開く。ようやく訪れたはずの眠気の残り香に、まだ脳の芯がぼんやりとしている。  突然声を上げたキバナに、ベッドの上でもぞついていた何かはビクッと身を固め、動かなくなった。そのことに薄く笑って、キバナも重たい体をずりずりと起こす。 「勝手に開けたのは誰ですか。そこのジュラルドンくん目を見て正直に言いなさい」 「ギュア……」  気まずそうに後ずさりする巨体に手を伸ばす。「ゴーキン!」と情けない声を上げた相棒を羽交締めにし、キバナはその頭に手を伸ばした。 「お前ってやつは!」 「ギュア、ギャウ、ギャ」  わしわし、ガシガシと揺さぶるように撫でる。そのた

びに楽しげな声が上がる。ジュラルドンは柔らかな拘束から逃れようとする素振りすら見せない。
「あーもう濡れてんじゃん。雨苦手なくせに」
「ゴー、ゴーキン」
「てかマジでどうやって開けてんの? 器用だねお前は」
「ギュア」
 誇らしげな顔をしてみせる相棒に呆れて、またガシガシと頭を撫でる。避けられない手、細められる目。もう、と叱ったつもりの声に怒気が含まれていないことなんて、キバナが一番知っていた。
 ジュラルドンはキバナが小突くふりをすればギュアギュア鳴きながら避ける振りをし、キバナが身を引けば逆に頭突きするかのような勢いで寄ってくる。攻防とも取っ組み合いとも言い難いじゃれ合いを続けていると、突然ボフ!という大きな音とともにベッドが揺れた。2人揃って首をすくめる。そろそろと振り向くと、毛布から出たフライゴンの尻尾がびたんびたんとシーツを叩いていた。うるさい、というように呻く声もが山となった布団のなかから聞こえて、キバナはジュラルドンと顔を見合わせ、苦く笑った。
「もー、お前のせいでオレさままで怒られちゃったじゃんか」
 ジュラルドンはまるで素知らぬ振りだ。聞こえません、とでもいうように身を寄せてくる体を抱き止める。窓は開き、外は大降りの雨が続いている。

***

 ガラルは夏が短く、冬は長い。キルクスほどではないにせよナックルもまた厳しい寒さが続いていた。朝起きて、その度に夜のうちに積もった雪の量に肩を落とす。豪雪地帯というわけではないが、煉瓦造りの道は底冷えし、曇りがちな天候も相まってなかなか溶けてくれない。
 ほんの少し前の朝もそうだった。頭の先から爪先までみっちりと毛布に包まって、この暖かな空気を含んだ場所から一歩も出たくない、と思う。でも起きなくては。起きて、せめて玄関前だけでも雪かきしなくては。意を決して指先だけ毛布から出してみる。とたんに染み込んでくる冷気に全身が粟立った。今日は特に冷え込みが酷い。なんて朝だ。

びに楽しげな声が上がる。ジュラルドンは柔らかな拘束から逃れようとする素振りすら見せない。 「あーもう濡れてんじゃん。雨苦手なくせに」 「ゴー、ゴーキン」 「てかマジでどうやって開けてんの? 器用だねお前は」 「ギュア」  誇らしげな顔をしてみせる相棒に呆れて、またガシガシと頭を撫でる。避けられない手、細められる目。もう、と叱ったつもりの声に怒気が含まれていないことなんて、キバナが一番知っていた。  ジュラルドンはキバナが小突くふりをすればギュアギュア鳴きながら避ける振りをし、キバナが身を引けば逆に頭突きするかのような勢いで寄ってくる。攻防とも取っ組み合いとも言い難いじゃれ合いを続けていると、突然ボフ!という大きな音とともにベッドが揺れた。2人揃って首をすくめる。そろそろと振り向くと、毛布から出たフライゴンの尻尾がびたんびたんとシーツを叩いていた。うるさい、というように呻く声もが山となった布団のなかから聞こえて、キバナはジュラルドンと顔を見合わせ、苦く笑った。 「もー、お前のせいでオレさままで怒られちゃったじゃんか」  ジュラルドンはまるで素知らぬ振りだ。聞こえません、とでもいうように身を寄せてくる体を抱き止める。窓は開き、外は大降りの雨が続いている。 ***  ガラルは夏が短く、冬は長い。キルクスほどではないにせよナックルもまた厳しい寒さが続いていた。朝起きて、その度に夜のうちに積もった雪の量に肩を落とす。豪雪地帯というわけではないが、煉瓦造りの道は底冷えし、曇りがちな天候も相まってなかなか溶けてくれない。  ほんの少し前の朝もそうだった。頭の先から爪先までみっちりと毛布に包まって、この暖かな空気を含んだ場所から一歩も出たくない、と思う。でも起きなくては。起きて、せめて玄関前だけでも雪かきしなくては。意を決して指先だけ毛布から出してみる。とたんに染み込んでくる冷気に全身が粟立った。今日は特に冷え込みが酷い。なんて朝だ。

 いつまでも毛布に包まっていたい気持ちとどれくらい格闘していたのだろう。なんとかベッドから這い出し、悴む指を無理やり動かしながら服を着込む。新しい服は肌に触れるたびにひんやりと熱を奪って、その度に情けのない声が出た。ドライタイプのアンダーウェア、メリノウールのベースウェア、フリースタイプのミッドレイヤーの上にパーカーと薄手のダウンを羽織り、さらにアウターシェルとしてクライミング用の透湿撥水ダウンを着込む。関節の可動域など二の次だ。もこもこに着膨れしたままなんとか玄関ポーチに出る。硬質ささえ感じるほどに冷える澄んだ空気に、鼻の奥がキンと痛む。寒すぎる。最悪だ。最悪な朝だ。
「ゴーキン!」
 キバナよりも先に起きていたらしい相棒がドタドタと駆け寄ってくる。朝の薄陽に照らされて、合金の肌が反射するのが眩しい。
「ギュア」
「ジュラルドン……しゃぶい……」
 おはよう、と言ったはずの口から情けのない声が漏れ出て、でもそれを取り繕う余裕さえキバナにはなかった。鼻を啜りながらスコップを手に取る。さっさと終わらせて暖かなリビングでエネココアを飲みたい。しわくちゃな顔でノロノロと手を動かすキバナに、ジュラルドンは不思議そうな顔で首を傾げている。

 しばらく雪を掻いているうちにだんだんと体が温まってくる。それに伴い意識も徐々に覚めてきて、キバナはほぅと息を吐いた。呼気が白くけぶる。掻いても掻いても降り積もる雪は厄介だが、雪景色そのものは好ましい。一面の銀世界と清冽な空気。肌が引き攣り耳が千切れるような冷たさも、雪掻きで汗ばんだ今は少し、気持ちがいい。玄関ポーチをある程度片付けて、そのまま庭に向かった。ざく、ざくと雪にスコップを入れる独特の感覚。息をするたびに喉が痛む。こんなにも雪に囲まれていて、つまりここにあるのは水の塊だというのに、それなのにひどく空気は乾燥している。少し考えれば当たり前のことがどうにも不思議だった。
 ギュア、とご機嫌な声がする。ジュラルドンは雪の山に登ってみたり雪に顔を突っ込んでみたりと大はしゃぎだ。銀世界のなかで白銀の体はすっかりと溶け込んでし

 いつまでも毛布に包まっていたい気持ちとどれくらい格闘していたのだろう。なんとかベッドから這い出し、悴む指を無理やり動かしながら服を着込む。新しい服は肌に触れるたびにひんやりと熱を奪って、その度に情けのない声が出た。ドライタイプのアンダーウェア、メリノウールのベースウェア、フリースタイプのミッドレイヤーの上にパーカーと薄手のダウンを羽織り、さらにアウターシェルとしてクライミング用の透湿撥水ダウンを着込む。関節の可動域など二の次だ。もこもこに着膨れしたままなんとか玄関ポーチに出る。硬質ささえ感じるほどに冷える澄んだ空気に、鼻の奥がキンと痛む。寒すぎる。最悪だ。最悪な朝だ。 「ゴーキン!」  キバナよりも先に起きていたらしい相棒がドタドタと駆け寄ってくる。朝の薄陽に照らされて、合金の肌が反射するのが眩しい。 「ギュア」 「ジュラルドン……しゃぶい……」  おはよう、と言ったはずの口から情けのない声が漏れ出て、でもそれを取り繕う余裕さえキバナにはなかった。鼻を啜りながらスコップを手に取る。さっさと終わらせて暖かなリビングでエネココアを飲みたい。しわくちゃな顔でノロノロと手を動かすキバナに、ジュラルドンは不思議そうな顔で首を傾げている。  しばらく雪を掻いているうちにだんだんと体が温まってくる。それに伴い意識も徐々に覚めてきて、キバナはほぅと息を吐いた。呼気が白くけぶる。掻いても掻いても降り積もる雪は厄介だが、雪景色そのものは好ましい。一面の銀世界と清冽な空気。肌が引き攣り耳が千切れるような冷たさも、雪掻きで汗ばんだ今は少し、気持ちがいい。玄関ポーチをある程度片付けて、そのまま庭に向かった。ざく、ざくと雪にスコップを入れる独特の感覚。息をするたびに喉が痛む。こんなにも雪に囲まれていて、つまりここにあるのは水の塊だというのに、それなのにひどく空気は乾燥している。少し考えれば当たり前のことがどうにも不思議だった。  ギュア、とご機嫌な声がする。ジュラルドンは雪の山に登ってみたり雪に顔を突っ込んでみたりと大はしゃぎだ。銀世界のなかで白銀の体はすっかりと溶け込んでし

まう。頭部の赤だけがハッとするほどに鮮烈で、まるで霧灯(フォグライト)のようだ、と思う。高山に生息する生き物にとってこの程度の寒さなど寒いうちに入らないのだろう。
 窓越しに家の中の様子を伺う。リビングではヒーターの前にみんなが集まって団子になっていた。キバナの相棒たちは、どちらかといえば熱い場所に生きるものたちが多い。特に灼熱の砂漠や活火山の近くを生息地とするやつらには、底冷えするナックルの冬はしんどいだろう。かわいそうに。ヌメルゴンは雪と暖房で乾ききった空気にご機嫌ななめだ。
 もっと暖かくなれば、と思う。
 もっと暖かくなればコータスやバクガメス、サダイジャたちにも過ごしやすくなるだろうか。でも、灼熱の砂漠や活火山の近くを生息地とするくらいだ。彼らにとっては夏でさえ涼しく感じるのかもしれない。ナックルの夏は湿度が高いから、また感じ方が違うのかもしれないけれど。ヌメルゴンには、良いのかもしれないな。そんなことを思う。できるだけ快適に過ごしてほしいとは思っているのだけれど。重たい息を吐く。彼らと生きることを決めたのはキバナで、キバナと共にあることを選んでくれたのは彼らだというのに、たまに、これで良かったのだろうかと逡巡してしまう。
 強く乾いた風が吹いて、キバナは目を眇めた。露出した肌がヒリヒリと痛むように悴む。ジュラルドンはキバナが退け小山になった雪の上に登ってはジャンプして遊んでいる。
 こんなふうに吹き抜ける風は、いつでも誰かにとって気持ちがいいし、いつでも誰かにとっては閉口する温度なんだろう。そう思う。
 よく晴れた暑い日のバルコニーではコータスやバクガメが、風の日にはフライゴンが、雨の日にはヌメルゴンが、乾いた空気の日にはサダイジャやギガイアスが、雪の日にはジュラルドンが遊んでいる。みんなそれぞれに好きな天気や気温のあるパーティーだから、いつでも誰かにとってはしんどくって、誰かにとっては楽しい日だ。
 ぼふ、と音を立てて尻から着地したジュラルドンに、木の枝かなにかから塊の雪が降り落ちる。赤い角から頭から尻尾からなにから全身雪まみれになって呆然としているジュラルドンの様子に、キバナは思わず声を上げて笑ってしまった。おいで、と手招きするとゆっくりと

まう。頭部の赤だけがハッとするほどに鮮烈で、まるで霧灯(フォグライト)のようだ、と思う。高山に生息する生き物にとってこの程度の寒さなど寒いうちに入らないのだろう。  窓越しに家の中の様子を伺う。リビングではヒーターの前にみんなが集まって団子になっていた。キバナの相棒たちは、どちらかといえば熱い場所に生きるものたちが多い。特に灼熱の砂漠や活火山の近くを生息地とするやつらには、底冷えするナックルの冬はしんどいだろう。かわいそうに。ヌメルゴンは雪と暖房で乾ききった空気にご機嫌ななめだ。  もっと暖かくなれば、と思う。  もっと暖かくなればコータスやバクガメス、サダイジャたちにも過ごしやすくなるだろうか。でも、灼熱の砂漠や活火山の近くを生息地とするくらいだ。彼らにとっては夏でさえ涼しく感じるのかもしれない。ナックルの夏は湿度が高いから、また感じ方が違うのかもしれないけれど。ヌメルゴンには、良いのかもしれないな。そんなことを思う。できるだけ快適に過ごしてほしいとは思っているのだけれど。重たい息を吐く。彼らと生きることを決めたのはキバナで、キバナと共にあることを選んでくれたのは彼らだというのに、たまに、これで良かったのだろうかと逡巡してしまう。  強く乾いた風が吹いて、キバナは目を眇めた。露出した肌がヒリヒリと痛むように悴む。ジュラルドンはキバナが退け小山になった雪の上に登ってはジャンプして遊んでいる。  こんなふうに吹き抜ける風は、いつでも誰かにとって気持ちがいいし、いつでも誰かにとっては閉口する温度なんだろう。そう思う。  よく晴れた暑い日のバルコニーではコータスやバクガメが、風の日にはフライゴンが、雨の日にはヌメルゴンが、乾いた空気の日にはサダイジャやギガイアスが、雪の日にはジュラルドンが遊んでいる。みんなそれぞれに好きな天気や気温のあるパーティーだから、いつでも誰かにとってはしんどくって、誰かにとっては楽しい日だ。  ぼふ、と音を立てて尻から着地したジュラルドンに、木の枝かなにかから塊の雪が降り落ちる。赤い角から頭から尻尾からなにから全身雪まみれになって呆然としているジュラルドンの様子に、キバナは思わず声を上げて笑ってしまった。おいで、と手招きするとゆっくりと

キとジュともう冬ではなくまだ春でもない雨の夜の……あの………いつも通りの話です

23.02.2025 18:57 — 👍 12    🔁 1    💬 1    📌 0

おいしかった…😌

15.02.2025 13:06 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
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🍫

15.02.2025 13:04 — 👍 11    🔁 0    💬 0    📌 0

とりあえず見れる期を一から見てるけど全然進まない…かわいくて繰り返し見ちゃうから…

30.01.2025 13:25 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
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犬猿組と好き回の好きなとこ

30.01.2025 13:24 — 👍 5    🔁 0    💬 0    📌 0

😭💕💕💕

29.01.2025 09:46 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0

忍たま、めちゃくちゃ面白くてすっかり気が狂ってしまった、私は6年生が好きです…

29.01.2025 09:45 — 👍 3    🔁 0    💬 0    📌 0

大好…

29.01.2025 09:44 — 👍 1    🔁 0    💬 1    📌 0
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🌸

29.01.2025 09:44 — 👍 4    🔁 2    💬 0    📌 0

今年度は職場のヤバ人に目をつけられちゃったのでも〜ほんとすごくてえ…すごい…敵はオキャクだけでは無い…すごい無理…今年も厄祓いのお守りたくさん買わなきゃ…

05.01.2025 06:34 — 👍 4    🔁 0    💬 0    📌 0

年が明けやっと労働が落ち着いたので茶をシバいている…つかれた…

05.01.2025 06:31 — 👍 6    🔁 0    💬 0    📌 0

もう疲れちゃったのでついった〜の絵をちまちま消してたんだけど、量が多すぎて途中から見えなくなっちゃった…写真抜いても4年でざっと1000枚…バカの量…

13.11.2024 14:49 — 👍 3    🔁 0    💬 0    📌 0
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コオリッポとヌメラの水彩〜

02.11.2024 02:16 — 👍 19    🔁 2    💬 0    📌 0

カワイ〜イ…愛…

27.10.2024 11:34 — 👍 1    🔁 0    💬 0    📌 0
 キバナっていつもカッコつけてばっかだよな。
 なんてコメントがつくのは日常茶飯事だ。今更そんなこと気にもしない。その通りだとすら思う。その通り、カッコつけてばっかりだ。だって、オレさまたちってば本当に格好がいいのだもの。キバナは心からそう思う。中傷にすらならない言葉の群れを斜め読みしてキバナはスマホロトムをポケットに閉まった。オーブンからは香ばしい匂いが漂ってくる。今日のご飯は焼きカレーとワカクササラダだ。先ほどから相棒たちも、お腹を空かせた様子でダイニングをソワソワとうろついている。大きな体に反して子どもみたいだ、と思う。キバナの相棒たちは格好よく、そして素直でとてもかわいい。
 大皿へ、深皿へ、匙へ、各々に合わせて盛り付けダイニングに運ぶ。キバナの相棒たちはそれぞれ種族が違い、それぞれ必要とする栄養が違い、それぞれ食べる量が違い、それぞれに味の好みがあるけれど、それでもカレーはみんなの大好物だった。ヨシの合図とともに各自の皿に向かっていく姿を眺めながらキバナも席に着く。
 まだじゅうじゅうと焦げた音を立てるカレーを匙で掬ってひとくち頬張る。大きめに切った野菜やきのみと炙りテールの乗ったカレーは熱く、溶けたチーズも相まって口の中を火傷しそうだ。はふ、はふと息が漏れる。なぜ熱いものを口にすると涙が滲んでくるのだろう。良く冷えたモーモーミルクを呷ると、ひりつくような熱さが和らいだ。視線。サラダにも手を伸ばす。ワカクサ島名産だというコーンは甘く滋味に富んでいて、これと渋みのあるきのみを合わせるのが最近の気に入りだった。視線。オリーブオイルを回しかけ、ざっくりと混ぜる。ジッとこちらを伺う視線。
「……ジュラルドン、食いづらいんだけど」
「ゴーキン」
 刺さるような視線に耐えきれず、きのみとコーンを山盛り載せた匙を置いた。ジュラルドンはキバナの様子を伺うように、ジッと顔を覗き込んでくる。
「お前の分のカレー冷めちゃうぜ」
「ゴー……」

 キバナっていつもカッコつけてばっかだよな。  なんてコメントがつくのは日常茶飯事だ。今更そんなこと気にもしない。その通りだとすら思う。その通り、カッコつけてばっかりだ。だって、オレさまたちってば本当に格好がいいのだもの。キバナは心からそう思う。中傷にすらならない言葉の群れを斜め読みしてキバナはスマホロトムをポケットに閉まった。オーブンからは香ばしい匂いが漂ってくる。今日のご飯は焼きカレーとワカクササラダだ。先ほどから相棒たちも、お腹を空かせた様子でダイニングをソワソワとうろついている。大きな体に反して子どもみたいだ、と思う。キバナの相棒たちは格好よく、そして素直でとてもかわいい。  大皿へ、深皿へ、匙へ、各々に合わせて盛り付けダイニングに運ぶ。キバナの相棒たちはそれぞれ種族が違い、それぞれ必要とする栄養が違い、それぞれ食べる量が違い、それぞれに味の好みがあるけれど、それでもカレーはみんなの大好物だった。ヨシの合図とともに各自の皿に向かっていく姿を眺めながらキバナも席に着く。  まだじゅうじゅうと焦げた音を立てるカレーを匙で掬ってひとくち頬張る。大きめに切った野菜やきのみと炙りテールの乗ったカレーは熱く、溶けたチーズも相まって口の中を火傷しそうだ。はふ、はふと息が漏れる。なぜ熱いものを口にすると涙が滲んでくるのだろう。良く冷えたモーモーミルクを呷ると、ひりつくような熱さが和らいだ。視線。サラダにも手を伸ばす。ワカクサ島名産だというコーンは甘く滋味に富んでいて、これと渋みのあるきのみを合わせるのが最近の気に入りだった。視線。オリーブオイルを回しかけ、ざっくりと混ぜる。ジッとこちらを伺う視線。 「……ジュラルドン、食いづらいんだけど」 「ゴーキン」  刺さるような視線に耐えきれず、きのみとコーンを山盛り載せた匙を置いた。ジュラルドンはキバナの様子を伺うように、ジッと顔を覗き込んでくる。 「お前の分のカレー冷めちゃうぜ」 「ゴー……」

「大丈夫だから、な」
「ギュア……」
 キバナが言い含めても尚ジュラルドンは引こうとしない。その視線はただただ心配そうで、結局折れるのはいつだってキバナの方なのだった。
「……じゃあ頼めるか、相棒?」
「ゴーキン!」
 任せろ、と言わんばかりに胸を張るジュラルドンに苦笑いしつつ、彼のカレー皿にウイのみをふた欠片ばかり取り分ける。山盛りのサラダの中の、ほんのふた欠片。たったそれだけの量。ジュラルドンは一瞬だけ動きを止め、それから意を決したように口を開いた。渋みのあるきのみはルーにまみれて、多分カレーの味しかしないだろう。相棒がぐもぐも咀嚼を続ける合間にキバナもサラダを頬張る。コーンのみずみずしい甘みがきのみのさわやかな渋みで際立って、美味しい。これはおとなになってから知った美味しさだ。

 小さな頃、キバナには苦手なものがたくさんあった。辛いもの、酸っぱいもの、苦いもの、それから渋い味のもの。キバナには、というより、子ども一般が苦手なそれは、それなのになぜだかしょっちゅう食卓に饗された。好き嫌いなく食べないと大きくなれないよ、という大人の言葉に口を尖らせ、フォークでつついて、目をつぶって、背もたれにのけぞり、頬杖をつき、足をバタつかせ、皿を遠ざけ、或いは皿の後ろにそれをこっそり隠してみたりして、それでも消えない大敵を睨みつけるのは何もキバナだけではない。横にいるジュラルドンだって、おんなじように目を眇めて手を突っぱねているのだった。肩を並べる相棒に小さく目配せして、幼いキバナはため息をつく。なんだってこんなものを大人は食べたがるのだろう。舌がわしわしするばかりで、ちっとも美味しくないのに。
 例えば、と思う。例えば――あくまで例えばの話だ――ジュラルドンの苦手なものがハンバーグやチョコレートで、逆に渋くてたまらないウイのみや辛くて泣きそうになるオッカのみが好きだと言うなら、

「大丈夫だから、な」 「ギュア……」  キバナが言い含めても尚ジュラルドンは引こうとしない。その視線はただただ心配そうで、結局折れるのはいつだってキバナの方なのだった。 「……じゃあ頼めるか、相棒?」 「ゴーキン!」  任せろ、と言わんばかりに胸を張るジュラルドンに苦笑いしつつ、彼のカレー皿にウイのみをふた欠片ばかり取り分ける。山盛りのサラダの中の、ほんのふた欠片。たったそれだけの量。ジュラルドンは一瞬だけ動きを止め、それから意を決したように口を開いた。渋みのあるきのみはルーにまみれて、多分カレーの味しかしないだろう。相棒がぐもぐも咀嚼を続ける合間にキバナもサラダを頬張る。コーンのみずみずしい甘みがきのみのさわやかな渋みで際立って、美味しい。これはおとなになってから知った美味しさだ。  小さな頃、キバナには苦手なものがたくさんあった。辛いもの、酸っぱいもの、苦いもの、それから渋い味のもの。キバナには、というより、子ども一般が苦手なそれは、それなのになぜだかしょっちゅう食卓に饗された。好き嫌いなく食べないと大きくなれないよ、という大人の言葉に口を尖らせ、フォークでつついて、目をつぶって、背もたれにのけぞり、頬杖をつき、足をバタつかせ、皿を遠ざけ、或いは皿の後ろにそれをこっそり隠してみたりして、それでも消えない大敵を睨みつけるのは何もキバナだけではない。横にいるジュラルドンだって、おんなじように目を眇めて手を突っぱねているのだった。肩を並べる相棒に小さく目配せして、幼いキバナはため息をつく。なんだってこんなものを大人は食べたがるのだろう。舌がわしわしするばかりで、ちっとも美味しくないのに。  例えば、と思う。例えば――あくまで例えばの話だ――ジュラルドンの苦手なものがハンバーグやチョコレートで、逆に渋くてたまらないウイのみや辛くて泣きそうになるオッカのみが好きだと言うなら、

キバナは喜んでハンバーグを代わりに食べるし、オッカのみは全部ジュラルドンにあげるだろう。でも、ジュラルドンが岩や土の他に好むものと言ったら甘口カレーやヒウンアイスなんかで、いま目の前にある渋口カレーにはそっぽを向いていて、つまりまるきりキバナとお揃いなのだった。そっぽを向く相棒に気づかれないうちに苦くてたまらないピーマンをそっとジュラルドンの皿に移動させて、それで何度大喧嘩しただろう。キバナのおやつ入れにジュラルドンの分のハッカ飴がごっそり入っていたこともある。静かで幼稚な攻防戦は、でもたいてい誰かしらから落とされる「いい加減にしなさい!」という叱責とともに終わった。互いに目配せして、意を決して口を開ける。半分泣きそうになりながら口に突っ込んだこと、食べきったご褒美に切ってもらえたモモンのみがみずみずしく甘かったことを、今でもキバナは覚えている。

 大人になるにつれ味覚は変わっていき、今となっては渋みも辛味も好ましい。ビールは薄っぺらいペールエールよりも爽やかな苦味のある方が好きだし、コーヒーにだって甘いクッキーよりもビターチョコを合わせたい。そんなふうに変わっていったというのに、なぜだかジュラルドンはキバナが苦いものや渋いものを口にしようとするたび心配するようになった。大丈夫か、ダメそうなら引き受けるぞ、とでも言わんばかりに顔を覗き込んできて、まるで昔っからキバナの兄貴分だったみたいだ。お前だって一緒になって叱られてたじゃんか、と何度も言ったのに知らん顔をしてみせる。
 だんだんと他の相棒たちが増えていくにつれ、ジュラルドンは面倒見が良くなった。面倒見が良いというのは、つまり頼られたがるということだ。いつしかキバナにもそんなふうな顔をするようになっていって、キバナは少しばかり面映ゆい。お互いこんなに大きくなったというのに。もう甘やかされるような年でも背丈でもないというのに。

キバナは喜んでハンバーグを代わりに食べるし、オッカのみは全部ジュラルドンにあげるだろう。でも、ジュラルドンが岩や土の他に好むものと言ったら甘口カレーやヒウンアイスなんかで、いま目の前にある渋口カレーにはそっぽを向いていて、つまりまるきりキバナとお揃いなのだった。そっぽを向く相棒に気づかれないうちに苦くてたまらないピーマンをそっとジュラルドンの皿に移動させて、それで何度大喧嘩しただろう。キバナのおやつ入れにジュラルドンの分のハッカ飴がごっそり入っていたこともある。静かで幼稚な攻防戦は、でもたいてい誰かしらから落とされる「いい加減にしなさい!」という叱責とともに終わった。互いに目配せして、意を決して口を開ける。半分泣きそうになりながら口に突っ込んだこと、食べきったご褒美に切ってもらえたモモンのみがみずみずしく甘かったことを、今でもキバナは覚えている。  大人になるにつれ味覚は変わっていき、今となっては渋みも辛味も好ましい。ビールは薄っぺらいペールエールよりも爽やかな苦味のある方が好きだし、コーヒーにだって甘いクッキーよりもビターチョコを合わせたい。そんなふうに変わっていったというのに、なぜだかジュラルドンはキバナが苦いものや渋いものを口にしようとするたび心配するようになった。大丈夫か、ダメそうなら引き受けるぞ、とでも言わんばかりに顔を覗き込んできて、まるで昔っからキバナの兄貴分だったみたいだ。お前だって一緒になって叱られてたじゃんか、と何度も言ったのに知らん顔をしてみせる。  だんだんと他の相棒たちが増えていくにつれ、ジュラルドンは面倒見が良くなった。面倒見が良いというのは、つまり頼られたがるということだ。いつしかキバナにもそんなふうな顔をするようになっていって、キバナは少しばかり面映ゆい。お互いこんなに大きくなったというのに。もう甘やかされるような年でも背丈でもないというのに。

「ゴーキン!」
 キバナの代わりにウイのみを食べてくれたジュラルドンが誇らしげに胸を張ってみせる。その目尻にほんの少し涙が滲んでいることを、キバナは見なかったふりをした。
「ありがとな、相棒」
「ゴ!」
 ジュラルドンは嬉しそうに笑みを浮かべている。頼もしくて、すっかり兄貴分みたいな顔をした相棒が、実はいまでも苦いものが得意ではないことを知っている。それなのにキバナを心配して顔を覗き込んでくるのを無碍になんかできなかった。
 だからキバナは、相棒の前では苦いものが苦手な子どもに戻ってしまう。まるでちっとも食べたくないような顔をして、相棒の皿にそっとピーマンを移動させてしまう、甘えたな小さな子どもの頃に。ウイのみ入りのサラダを作ったのはキバナだって言うのに。でも、苦味がごまかせるようにカレーにしたのもまたキバナなのだ。
 この癖は多分、ジュラルドンが兄貴分ぶってカッコつけるのをやめるまで続くのだろう。つまり、終わりの日は来ないのだ。だって、オレさまの相棒ってば本当に格好がいいのだもの。キバナは心からそう思う。
「あとでお前の好きなモモンのみでも剥こうか」
 途端にはしゃぎだす相棒は、まるで小さな子どもみたいだった。

「ゴーキン!」  キバナの代わりにウイのみを食べてくれたジュラルドンが誇らしげに胸を張ってみせる。その目尻にほんの少し涙が滲んでいることを、キバナは見なかったふりをした。 「ありがとな、相棒」 「ゴ!」  ジュラルドンは嬉しそうに笑みを浮かべている。頼もしくて、すっかり兄貴分みたいな顔をした相棒が、実はいまでも苦いものが得意ではないことを知っている。それなのにキバナを心配して顔を覗き込んでくるのを無碍になんかできなかった。  だからキバナは、相棒の前では苦いものが苦手な子どもに戻ってしまう。まるでちっとも食べたくないような顔をして、相棒の皿にそっとピーマンを移動させてしまう、甘えたな小さな子どもの頃に。ウイのみ入りのサラダを作ったのはキバナだって言うのに。でも、苦味がごまかせるようにカレーにしたのもまたキバナなのだ。  この癖は多分、ジュラルドンが兄貴分ぶってカッコつけるのをやめるまで続くのだろう。つまり、終わりの日は来ないのだ。だって、オレさまの相棒ってば本当に格好がいいのだもの。キバナは心からそう思う。 「あとでお前の好きなモモンのみでも剥こうか」  途端にはしゃぎだす相棒は、まるで小さな子どもみたいだった。

ようきなジュがkbnの前でカッコつける話
ジュとキが幼少の砌から一緒にいたという幻覚を前提としています

27.10.2024 09:08 — 👍 11    🔁 3    💬 1    📌 0
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草を…描いている…

18.10.2024 08:10 — 👍 7    🔁 0    💬 0    📌 0
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ヌに海見せてあげた、2024.2.25

25.02.2024 12:23 — 👍 17    🔁 0    💬 0    📌 0

お休み終わっちゃった………超楽しかった

13.02.2024 12:35 — 👍 6    🔁 0    💬 0    📌 0

労働納めた!お休みだ〜〜🎶🎶

08.02.2024 08:55 — 👍 8    🔁 0    💬 0    📌 0

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