詳しくは発売中の日経サイエンス3月号をご覧ください。名古屋大学の谷村省吾先生の解説と,米SCIENTIFIC AMERICAN記事の翻訳(監修は京都大学の大下翔誉先生)の2本立てです。
www.nikkei-science.com/202603_053.h...
近年ヒッグス粒子の質量が測定できるようになって,真空崩壊の確率が詳しく計算されている。という話を,今日の日経新聞電子版にチョイ出ししました。
www.nikkei.com/article/DGXZ...
膨大なエネルギーが解放され,光と物質と反物質が爆発的に生成される。星も生物も,宇宙のすべてが壊滅するだろう。真空崩壊は,物理が予言する「この世の終わり」だ。
真の真空状態に落ちると,ヒッグス場の平均的な値が変わる。そうすると素粒子の質量が変わる。もし電子が今より重くなると,原子の直径が小さくなる。弱い力を伝えるウィークボソンが重くなると,太陽などでの核融合反応が起きにくくなり,燃焼が停止する。星も物質も圧潰するだろう。
谷底にあると思っていたヒッグス場のエネルギーが,いつか周囲の山をツツーッと通り抜け,真の真空に落ちていく可能性もゼロではない。量子力学によると,理屈では起こらないようなことも,ごくわずかの確率で起こってしまうことがありえるからだ。
宇宙はヒッグス場という場で満たされており,そのエネルギーは位置エネルギーの谷底,つまり真空状態にあるように見える。だが実はそうではなく,もっとエネルギーの低い「真の真空」が存在する可能性があると,物理学者たちは予測している。
真空って,あの何もない真空のこと? 一体何のことだ, と思うだろうが(私も思った),ここでいう「真空」というのは物理の用語で「場のエネルギーが最も低い状態」のことだ。水が低きに流れるように,すべてのものは放置するとエネルギーが低いほうへと移っていく。つまり真空へ向かっていく。
起こりうるすべての災厄のうちで,最大ものは何だろうか。かつて大量絶滅を引き起こした巨大火山の噴火? 月を作ったような別の天体の衝突? 色々考えられるが,それすら目じゃない宇宙規模の災厄が存在する。「真空崩壊」だ。
ノーベル生理学・医学賞「末梢性免疫寛容に関する発見で坂口志文氏ら3氏に」につての速報解説はこちら。筆者は日経サイエンス編集部の遠藤智之と出村政彬です。
www.nikkei-science.com?p=77046
ノーベル化学賞「金属有機構造体の開発で北川進氏ら3氏に」の速報解説はこちら。筆者は日経サイエンス編集部の遠藤智之です。
www.nikkei-science.com?p=77051
いつもありがとうございます。励みになります。
どうもありがとうございます。この時代のことを聞くと,みんなとても楽しそうにどんどん話してくれます。必ず記録を残します。
@ayafuruta.bsky.social さんの速報解説記事、いつもありがたい。
そして、日本人以外だけの受賞のとき、NHK科学文化部ですら速報を出さない中で日経電子版は(日経サイエンスが控えていてすぐに記事を書けるので)ちゃんとレポートしてくれるのもありがたい。
2025年ノーベル物理学賞:巨視的な量子現象の実験で3氏に
www.nikkei-science.com?p=77049
ノーベル物理学賞の速報解説を書きました。超電導回路における巨視的量子トンネル効果とエネルギー量子化の実験観測でクラーク,デヴォレ,マルティニスの3氏に授与。後の中村・蔡による世界初の超電導量子ビットにつながる成果で,マルティニスはグーグルの量子超越の実験を率いた人でもある。
www.nikkei-science.com?p=77049
西周がどれほど学術用語の漢字訳に貢献したかを教えていたただいて汗顔の至りでした。
J1先生でしょうか? 先日お会いしたときに西周について話をされて,びっくりしていたら「日本の量子の研究者の方に聞いた」と仰っていました。学術用語の移入に関して調べ続けているご様子。
ですです! あの一言を聞いてこの取材旅を始めたと言っても過言ではないです(笑
量子マネーに興味を持っていた人が可逆計算の研究をされたということに,歴史の妙を感じています。計算の物理学が量子チューリングマシンの構築につながったわけので。
どうもありがとうございます! 量子コンピューターも量子暗号も全然知られていなかった時代ですが,研究がめっちゃ楽しそうなんですよね。
日経サイエンス「量子情報創世記」のちょい出し最終回。オックスフォード大学のデイヴィッド・ドイチュが量子コンピューターの発想に到るトリガーとなったのは,計算の物理学を追求していたチャールズ・H・ベネットの一言でした。
www.nikkei.com/article/DGXZ...
日経サイエンス11月号「量子情報創世記」のちょい出し3回目。計算は物理的な過程だと看破したIBMのランダウアーと,ならば熱を出さないコンピューターが原理的に実現可能だと見抜いたベネット。物理学者のホイーラーがベネットの講演を聞いたことが,後に量子コンピューターの誕生へとつながる。
www.nikkei.com/article/DGXZ...
日経サイエンス11月号「量子情報創世記」のちょい出し2回目。実装困難なウィーズナーの量子マネーから実現可能な量子暗号を生み出したチャールズ・H・ベネットとジル・ブラッサール。このときも論文はリジェクトされたが,すでに研究者として活躍していた彼らには手段があった。
www.nikkei.com/article/DGXZ...
記事の一部を,4回にわたってネットで公開していきます。1回目は,真のファーストランナーだったスティーヴン・ウィーズナーによる量子マネーと量子紛失通信の発見。この量子マネーが歴史上初の量子情報技術だったが,いかんせん早すぎた。
www.nikkei.com/article/DGXZ...
このあたりが査読制度の欠陥。新しいことをやると査読者のほうが理解できなかったり、正当に価値を評価できなかったりすることがよくある。「論文を見せた友人たちは一様首をかしげ、教授は真面目な研究に戻るようウィーズナーを諭した。ウィーズナーは諦めず、1970年ごろに論文を米国電気電子学会(IEEE)の学術誌に投稿したが、掲載を断られた。」
www.nikkei.com/article/DGXZ...
記事の一部を,4回にわたってネットで公開していきます。1回目は,真のファーストランナーだったスティーヴン・ウィーズナーによる量子マネーと量子紛失通信の発見。量子情報理論のパイオニアの中で,彼だけはエンジニアリングマインドにあふれた人だったと思う。
www.nikkei.com/article/DGXZ...
物理学会誌を読んでいらっしゃる方には,2024年10月号の表紙にして頂いた量子の歴史話の詳細版です,というとわかりやすいかも
www.jps.or.jp/books/gakkai...
というわけで,まず9月25発売の日経サイエンス11月号で,量子情報理論の始まりについて書いた。ウィーズナーの量子マネーから,量子暗号の発明,量子コンピューター理論の提唱,テレポーテーション考案,ショアのアルゴリズムと1995年のエラー訂正まで,最初の四半世紀の物語だ。
www.nikkei-science.com/202511_030.h...
だが,やっぱり書いておこうと思い直した。量子情報技術は今ではすっかりエンジニアリングのマターになっているが,この分野を開いてきたのは量子や情報の基礎科学の研究者たちだ。彼らは物理と情報の関係を追究する中で量子コンピューターや量子暗号に行き着いた。研究者が自らの興味に導かれて研究し,出口なんて考えていなくても,というかそれだからこそ,革新的な技術が生まれることもある。そのことを記録しておきたい。
かつては,書いてくるならまあいいか,という感じで新聞に記事を載せてもらっていたが,一面にどんどん記事が出るようになった。いや,量子コンピューターまだ全然できてないっしょ,早すぎるよ,とひやひやしたが,盛り上がったまま今に至る。記事の需要は増したが,皆が知りたいのは量子コンピューターがいつ完成して,何ができるかだ。それは私にはわからない。今さら歴史の話を読みたいだろうか,とか悩んでいるうちにさらに10年たった。
よし,量子情報という分野を作った人たちを全員を訪ねてみようと思い立った。ショアのアルゴリズム(超高速素因数分解)が見つかるより前から研究していた人は50人いないだろうから,数年でいけるだろうと思った。結局10年くらいかかったが,あと2人くらいかな,と思っていたが,事情があって数年この分野から離れた。するとその間に,突如として量子コンピューターがブームになった。