からタカ

「この辺？」
「ひゃああー」
「直に温くなる。我慢しろ」
「…ありがとう」
「いいさ。風邪なんて引かないからな」
「頑丈〜」
「どうも。全く最近のキャップは人使いが荒いな。今度会った時タダじゃ済まさん」
「いんだよ。私がやめ時が分からなかっただけ…なんだって…」
「…まぁ、あまり頑張り過ぎるな」
「そうだね…ああ、バッキーの、奥さんになる、人は、きっと…幸せだねえ、」
「なんだそれ」
「ん〜…ふあ、〜あ…」
「なぁ、その話だが、その、お前を奥さんにするには、」
「スー…スー…」
「…はあ。おやすみmy love...」

「病院は？」
「行った。帰ってそのまま寝てたよ」
「寝てろ」
「トイレくらい行くんですー」
「…熱は？」
「そこまでない」
「どれ、確かに」
「んふふ冷たいあったかいが半分こ」
「全く…他は？」
「まあ少し寒気がするくらい」
「どこだ？どこが寒い？」
「腰？」
「そうか、もう横になれ」
「ああーはいはい」

彼女の担当は象らしく、最近生まれたばかりの仔象が彼女に懐き、背中に隠れて短い鼻を腕に巻き付けてる。「ほらご挨拶は？まだ人に慣れてなくてごめんね」
彼女は謝る。別に羨ましいとか思ってない。俺だってまだ手も繋いだ事ないのに生まれて間もない動物に先を越されたなんて思ってない。思ってないぞ。

「君に出会う為に生まれてきたんだ」
昔はそういえば女の子は喜んだ。勿論嘘じゃない。まぁウケが良かったんだ。
でも今、あの頃より随分いや、かなり時代は変わった。勿論時代のせいではないことは分かってる。
「俺は、お前に出会う為に生きてきたんだ」
本当にそう思ってる。嘘なんて微塵もない。それくらい彼女が心の底から愛おしい。なのに、
「いい？バッキーはこれからまた色んな人に会って、別れて、泣いて笑って怒ってまた笑って。その為に生きてきたんだよ」
私のためなんて大袈裟大袈裟！と戯けて笑う。
ああ、どうしたら俺の気持ちが伝わるのだろう。彼女の肩を掴んで違うと叫びたくなる。嬉しいのに、苦しくて堪らない

どうしようサム
この先彼女以外を好きになるつもりはない。だからあいつの誕生日に、クリスマスに絶対プロポーズしようと決めてた。それでしたよ。君のこれからの人生を俺も隣で歩きたい、と。返事を聞くのが怖くて手が震えたさ。でもその後敵が襲ってきてそれどころじゃないし2人ともチームで分かれてしまったし、結局返事も貰ってない。連絡も取れないし、やはり…やはり俺では駄目か…
なあ、どうしたらいいサム！

どうしようサム！
バッキーに毎年一番に誕生日祝いたいって言われてすごく恥ずかしいけど嬉しかったの。ありがとう、って返したらその、あれは絶対…指輪のケース。多分。でももしそう見せかけて開けたら爆弾の起爆スイッチ的なオチだったかもしれない。あの後すぐ敵襲があってお互いチームで散り散りになったし、結局ちゃんと返事返せてないし、勘違いかもしれない。でももし違ったら本当にプロポーズだったら…？
うわああどうしようサム！

喫煙室でのバッキー、ナターシャ、サムの一幕。最近はバッキーのy/nの惚気話を聞かされることが多い。y/nは煙草が好きでないので、その内喫煙室からひとりいなくなると2人は察している

「ケーキがいいなんて、遠慮してるんだな。でもそこが可愛いんだ」
「…あの子の誕生日ってイヴだっけ？当日だっけ？」
「当日だよ。家ではいつもバースデーケーキだったからクリスマスケーキの機会が少ないって言ってたな」
「…は？」
「お前知らなかったのか？彼女の誕生日はクリスマスだぞ」
「…お前の口から知りたくなかった」
「そりゃすまん」
その後レイはこっぴどく叱られてケーキは二つ用意された。

「何だ？何がいい」
「その…はしたないんだけど」
「君の欲しい物ならそんな事はない」
「その…ケーキ」
クリスマスケーキが欲しいです。下を向いた目がふるりと震えて彼女は小さく答えた。
「バースデーケーキはいつも食べるんだけど」

もうすぐクリスマスがやってくる。
「プレゼントは何がいい？」
お互いの休憩が重なった時に彼女に問うた。こういうのは過去の会話を思い出して、贈るのがいいとは思う。だが例え中身が知られていても彼女の欲しい物をプレゼントしたい。ささくれだった手を袖で隠しながら両手でコーヒーのカップ啜る彼女(可愛い)は今日も可愛い。
「別にいい。特に欲しいものはない」
「何かあるだろ？リングとかネックレスとか」
「ほんとにないんだって」
少し食い下がったがなかなか折れない。折角、初めての聖夜なのに何もしてやれないのはどうにも歯痒い、それどころか悔しささえ込み上がる。
「ホントに？」
「…ないことはない」

「ダメか？」
上目遣いで小首を傾げて見つめる。割とこれが通用する。使えなかったことは少ない。なのに
「ダメ」
彼女には全く効かない。むすっとした顔に口を真一文字にしてNO以外何も言わない。そしてダメな理由をつらつらと並べる。
「そうか」
なのに、どうしてかそれがすごく嬉しい。顔じゃなくて中身を好んでくれてる気がして堪らなく喜びが湧き上がる。
「なんで嬉しそうなの」
「別に？」

俺はお前がスターク家になるのは反対だ。だって洗脳されていたとはいえ、彼の両親を殺してしまった。そんな相手の元に挨拶にいくのは皮肉すぎるだろ。

うあとうとうブルスカもお断りされてる。何もしてないのに何が気に障ったのですか…

「彼女を愛しているのか？」
ティチャラの声にハッとした。顔を上げると少し向こうの草原で子供たちと花冠を作る彼女が目に飛び込んだ。
「そんなつもりは…」
そんな気持ちを抱いている場合じゃないのことは分かっている。ただ、
「ただ、彼女といると和むんだ」
血に塗れたこの手も、彼女が触れると汚れたことさえ忘れてしまえる気がして、まるで魔法だ。
「今は、どうこうなりたいとは思わない」
このままでいい。

museum×zoo #1
しばらくランチを一緒に取れない。そう言われて3日たった。家に帰れば会えるじゃないかとサムは言うがそれとこれとは話が全く違う。
仕方なく妻が準備してくれたサンドウィッチを口にする。一緒に取れない分、俺の好きな具材にしてくれた。美味い。でも彼女と食べたい。会いたい。君の顔が見たい。
スマホのロック画面を点ける。仕事が終わらないと連絡は返せないからこの時間に彼女からテキストも送られる事もない。仕方なく彼女の後ろ姿の写真をぼんやり眺めてサンドウィッチを全て食べつくした。

名前は知らない。白くて背の高い花のように真っ黒な世界の中で視界の外れでいつも揺れていた。折れる事なく揺れていた。それが音もなく枯れた。広がる水溜りは足元まで伸びてくる。視界は滲み、ブリキのジョウロに涙が満ちていく

「やあ来たな。ウィンターソルジャー」
「ヒドラを裏切るのか。この売女め」
「裏切るなんて！最初から信用してないから裏切りにはならない」
内部情報を外部に漏らした犯人がいる。それを探すのも殺すのも容易い事だ。
「それに私が頼んだんだよ。必ずあんたを送り込んで欲しいって」
「きっとあなたにも光が見つけてくれる時がくる」
そう信じてるよ。女は清々しく笑うとこめかみに当てた銃の引き金を引いた。
ウィンターソルジャー。冷凍保存され目覚める度に記憶を消される暗殺者。消されても女の気配は消えなかった。

あんな綺麗な色は初めてみた。　
なぜ寝顔を見ていた…？少し恥ずかしくなったのは胸にしまっておこう。

「そういやこんなに懐いたことのある奴っているんですか？」
「あ？そういや聞いた事ないな」
「ふうん」
妙に部隊の女に聞き分けがよい自我を失われた暗殺者。任務も円滑に進むので必ず出動に選出される。
「私が女の子だから？はは、なんてね」
ミスを冒し負傷して動けない状況になっても手を貸す。紳士的ではないけど。
たまたま近くにいたから助けた。それだけだ。
「わぉ喋った」
会話すると思わなかったので、暗殺者の声は初めて聞いた。尖って冷たい端的な言葉選びの音の奥になにか見えた。
一晩待機を命じられ、仮眠から目を開けると目の前に顔があった時は心臓が飛び出るかと思った。氷を張ったような薄い青。

後日近くの草原に住む猫親子が顔を見せにきた。
「バッキーの瞳にそっくり」
ほら、とまた生後3.4ヶ月後の子猫をそっと抱き上げるとバッキーの顔の横に寄せた。子猫は彼の髪にじゃれて遊んでいる
「え〜似てないよ」
「似てない」
一緒にいた子供たちは、口々に答えた。
「だとさ」
「うーん似てると思うのに」
納得いかない顔をして母猫の元に返すと、子猫をたくさん舐め回す
「お前の目は、陽が差すとどんぐりの色に見える」

俺の、、俺の人なんだ。もう誰にも触れさせない、誰にもやらない。
呻きに近い嬌声にも耳を貸さず、まるで一生に一度しか交わえない獣のように一心不乱に背中を抱き掴む。荒い息遣いと静止に伸びる手には力が入らずただ己の手に添えた事に高揚して、一際柔らかい肢体を一滴も取りこぼさぬ様に抱き締めた。唇を啄み、尚も乱れた息は鼻息を荒く通る。
もう誰にも触れさせない。誰にも渡さない。
まだ己を抜き出せないまま、頬を寄せてまた抱き締めた

完全な妖の姿にはなれないので耳と尻尾だけ狐になる

しゃばけ
タイムスリップした令和の女子高生。瀕死重傷で人間としてはもう生きられないので狐の妖力(尻尾1本分)を分けて貰い半人半妖の身となる。恩を返したくて兄や達同様、若だんなの世話をすることに。人間目線になれるので離れでの一太郎の強い味方。帰ることはもう考えてない

zooとmuseumのまだ気になる女の子だった頃の話

最近やっと手を繋ぐようになった。女性らしい大きさなのに爪は少しカサついて指は華奢とは言えない程にしっかりしている。手入れしてるけど水仕事だから仕方ない、と諦めた笑顔をする彼女のそんな冷たい手を強めに握ると温かい、と握り返してくる。
ああ冬が寒くて本当に良かった

好きな子の血は上等なワインよりも美味いって話

「突然だが吸血鬼になった」
「要素盛りすぎ」
「そして血が吸いたい」
「突然だな。いててて噛むの早い」
「もっと欲しい」
「いや私死ぬよ」
「…なぁ、血ってこんなに甘いのか？」
「んー？分からんけど糖血かな」
「少し他のヤツ吸ってみる」
間
「どうだった？」
「クソまずい」
「じゃあやっぱり糖血かな」
「吸うのはお前だけがいい。美味い方がいいからな」
「死なない程度で」
…
「という夢を見た」
「超人兵士に義手に吸血鬼って流石に要素盛りすぎ」

うぇぼもマシュマロも二度とやらない。あれは絵を描いて小説も書ける知名度のあるクリエイターしかできないシステム覚えた

実は玉藻夢主

鵺野の高校〜大学の同級生の保健の先生。霊媒師一族の端くれで小学生時代に美奈子先生に恩があり、友人でもある鵺野を先生の仇と信じ生きている。保健室にくる生徒以外の者も優しく受け入れる喫煙者
「鵺野鳴介、私はお前をいつか殺す者だ。勝手に死ぬなよ」