論文を書いているとき、「さんしょうぶんけん」という読みを「山椒文献」と変換してくるIMEなんてもう使いたくない!
09.11.2025 00:46 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0@zen-s.bsky.social
日本人男性でとしより。STEAM(ゲームサイトじゃなくてScience,Technology,Engineering,Art, and Mathematics.の方)を振興したいと思ってます。空想科学絵本が作れたらいいなあ。
論文を書いているとき、「さんしょうぶんけん」という読みを「山椒文献」と変換してくるIMEなんてもう使いたくない!
09.11.2025 00:46 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0宇宙エレベーターのうんちく:15
月に宇宙エレベーターを建設するのは要注意。というのも月は自転周期が極端に長い(27.3日)ため、静止衛星軌道が高度約8万7千Kmと、地球よりもはるかに高い位置に来る。また同じ理由で遠心力も弱く、宇宙エレベーターから放出した質量に速度を与えにくい。結果として地球に比べると宇宙エレベーターのありがたみがあまり大きくないと言える。静止衛星の代わりに月のラグランジュ点(L1)を周回する衛星との間を結ぶなど、代替案も考えられてはいるが、もともと月は引力も小さいので、月の水資源を電気分解した水素を使って、素直に月面上から貨物を打ち上げるのも案外悪くない方法かもしれない。
宇宙エレベーターのうんちく:14
宇宙エレベーターは地球以外の天体にも設置することができると考えられている。たとえば火星に設置すれば、約5万km以上登ることで軌道速度が火星の脱出速度を超えられるため、ただ手を放すだけで地球に向けて荷物を投げおろすことができる。同様に月や小惑星などにも設置することで、地球との往復が省エネルギーで行えることになり、互いの間での定期的な物流が成立する。地球に設置した宇宙エレベーターの頂上から遠心力を最大限に利用すれば、木星軌道付近までロケット等の噴射なしに到達することができると計算されており、将来の太陽系物流ネットワークの中核として機能させることが期待されている。
宇宙エレベーターのうんちく:13
宇宙エレベーターというが、実のところ一般的なエレベーターとの共通点は垂直に移動するという点くらいでそれ以外似ているところはあまりない。たとえば、一般的なエレベーターは人の乗るかご部分には動力はなく、かごにつながれたケーブルを頂上のモーターで引っ張ることで上下するが、宇宙エレベーターの場合はかご自体が自力で登っていく。もし宇宙エレベーターをケーブルで引っ張り上げる形にすると、3万6千Km上空でケーブルを巻き上げても、地表のかごに力が伝わるまでに数時間かかるし、かごだけを動かすのに比べて、ケーブル全部の重量を引っ張り上げるエネルギーはけた違いの大きさになるのだ。
宇宙エレベーターのうんちく:12
宇宙エレベーターの先端部には、カウンターウェイトという部品が取り付けられ、この遠心力によって宇宙エレベーター全体が持ち上げられている。しかし原理的にはただのおもりなので、必要な質量があれば特に何の機能もなくてもかまわない。ただ、10万Kmの彼方まで地球の重力に逆らって運んで設置する必要があるため、もっともエネルギーを必要とする部品でもある。エドワーズ博士の計画では、最初に設置した細いテザーを補強するために数千台のクライマーを次々と登らせていき、これをテザーの先端部に置き去りにしてカウンターウェイトの役割を担わせることにしている。実に効率的なアイディアである。
宇宙エレベーターのうんちく:11
宇宙エレベーターの基礎であり地球との接点となる部分は一般に「アースポート」などと呼ばれることが多い。理想的には赤道上の一点に設けられるのが効率的であるが、緯度にして南北35度以内であれば建設は可能とされている。ケーブルの振動を抑えるために移動できる方が融通が利き、落雷(陸上で発生しやすい)や熱帯性低気圧などの気象条件、大都市付近を避けるなどの理由から、赤道近くの海上に建設された人工地盤などの上に作られることが想定されている。エドワーズ博士の著書ではそれらの条件から具体的な候補地として、南米西海岸沖の太平洋上やアフリカ西海岸沖の南大西洋などが挙げられている。
宇宙エレベーターのうんちく:10
宇宙エレベーターの用途としてもうひとつ期待できるのが、地球を周回する人工衛星の軌道への投入だ。ロケットに比べてとても速度が遅い宇宙エレベーターのクライマーだが、現状人工衛星の多くが活躍している高度200kmから2000kmあたりまでならクライマーの出せる速度でも数時間以内で到達可能であり、さほど致命的ではない。ただ、クライマーから人工衛星を放出する場合、地球の自転方向、つまり東向きにしか運動量を与えることができないので、それ以外の方向には自前のロケットで加速してもらう必要がある。現状の手段に比べれば安全ではあるものの、効率的かどうかは何とも言い難い。
宇宙エレベーターのうんちく:9
宇宙エレベーターは、ロケットの欠点をカバーすることができる。ロケットは地表を出発するときに短時間に膨大なエネルギーを消費して爆発的に加速する必要がある。そのためエンジンを丈夫に作らざるを得ず、エンジンの重量も増すし再使用も困難。爆発する危険も大きく、貨物や搭乗員の負担も大きい。一方、宇宙エレベーターはモーターでスムーズに加速でき、加速度も自由に制御できる。貨物や搭乗員の負担はほとんどないが、そのかわり致命的に速度が遅い。地表を脱出するところまでは宇宙エレベーターに乗って、衛星軌道の高度に達したらロケットに乗り換えるのが、最も効率的だろう。適材適所の見本。
宇宙エレベーターのうんちく:8
宇宙エレベーターの最大、かつ喫緊の用途は、「宇宙太陽光発電所」の建設重機としての役割。地上での太陽光発電所は、夜間や悪天候下での発電ができず、昼間ですら電力は不安定。エネルギー供給のメインストリームにはなりえない。しかし宇宙空間でなら安定した電力供給が可能になる。問題はその電力をより安価なものにするための建設費用。高価なロケット打ち上げを使って資材を宇宙にまで運ぶのは、生産される電力をも高価なものにしてしまう。宇宙エレベーターがロケットよりはるかに安価で大量に資材を輸送することができて初めて、宇宙太陽光発電所が安価で安定したエネルギー供給源となるのだ。
宇宙エレベーターをSTEM教育のネタに使いたいというのも、この技術が現在の人類にとって実に適切な規模の夢であるからだ。基本原理は現在の人類の科学力で十分に解決可能な範囲であり、将来的には必ず実現できる、とほぼ断定できる地に足の着いた計画である一方、膨大な費用、非常に多くの要素技術の開発を必要とし、さらに政治的、法的な問題も付随した、人類規模のプロジェクトにならざるを得ず、そう簡単に建設がはじめられないという、適度な困難さを伴っている。この、今後50年間で建設の準備ができるかどうか、という適度な困難さが、現在の子供たちに夢として意識してもらうための適切な課題となりそうに思うからであるのだ。
23.11.2024 01:09 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0宇宙エレベーターのうんちく:7
宇宙エレベーターは高効率で地表から人や貨物を宇宙にまで運んでいくだけでなく、宇宙にある大きな質量を安全に降ろしてくる役割も担うことができる。現在、大きな質量のものを地表に降ろす場合、パラシュートなどで減速しながら地球の引力で落とすことしかしていないのが現状である。地球外の小惑星などに希少な資源があるということは知られているが、これらをロケットを使って安全に地表に降ろすには、巨大なコストをかけて、強力なロケットエンジンと膨大な酸化剤・推進剤をいったん宇宙に上げておかなければならない。宇宙エレベーターは宇宙の資源を低コストで安全に降ろすためにも必要な設備なのである。
宇宙エレベーターのうんちく:6
宇宙エレベーターの総延長約10万Kmの間では、重力のかかり方は高度によって連続的に変化する。まず地表付近は地球の引力がほとんどそのままかかるので下向きに約1G(9.8m/s^2)であるが、上昇するにつれて、高度1000kmで約0.74G、2000kmで約0.58Gとどんどん重力が小さくなっていき、高度3万6000kmの静止衛星軌道で0Gとなる。その後は遠心力が優るので地球と反対向きの加速度がかかるようになり、高度5万kmで-0.017G、高度10万kmでは-0.05Gの重力となる。静止衛星軌道を超えると、上に向かって落ちていくという妙な感覚が味わえるはずだ。
宇宙エレベーターのうんちく:5
宇宙エレベーターの物理的障害のひとつが、すでにさまざまなところで問題視されているスペースデブリ(宇宙ゴミ)。宇宙エレベーターは赤道上の1点の上空で地球に対して静止しているが、デブリの方はさまざまな速度と高度で地球を周回しているため、どのデブリもいずれ必ず宇宙エレベーターと衝突する運命にある。軌道がわかっていれば、宇宙エレベーターの方で能動的に避けることも不可能ではないが、観測できず軌道が定められないほど小さなデブリになると、どうしても衝突は避けられない。それでテザーに穴が開いたとしても、耐久力が限界を超えるまで、少々の穴ならそのまま使い続けるしかないだろう。
宇宙エレベーターのうんちく:4
宇宙エレベーターという交通機関は、赤道上の1地点からその上空10万Km程度までを結ぶ1次元の鉄道であると考えられる。途中経路には低高度の衛星軌道、高高度の衛星軌道や静止衛星軌道などがあり、これらの場所に人工衛星などを届けるのが主な業務となる。しかし、静止衛星軌道以外の場所ではクライマーを降りたとたん、地球の引力や地球の自転による遠心力がかかるため、その場所にとどまり続けることはできない。結局クライマーを降りると各荷物は、自分で移動手段を持つか、または他のロケットの力を借りてどこかに移動する必要がある。ロケットなしには宇宙エレベーターの輸送は完結しない。
宇宙エレベーターのうんちく:3
10万kmにわたる宇宙エレベーターのテザー(ひも)を登っていく宇宙機をクライマー(Climber)と呼ぶ。クライマーの動作原理として、テザーを車輪で挟み込み、モーターを回して昇降するホイールドライブ、テザーに電磁石を取り付けて昇降するリニアモータードライブなどが考案されているが、ホイールドライブは速度があまり上げられそうにないし、リニアモーターはテザーの重量が重くなってテザーの負荷が大きすぎるという欠点がある。ちなみに時速500kmで3万6000km上空の静止衛星軌道まで登ったとすると、かかる時間は72時間=約3日間の旅になる。
宇宙エレベーターのうんちく:2
10万Kmほどの長くて丈夫なひもの一方に重りを取り付け、もう一方は地球の赤道上に固定してやる。おもりを地球から離してひもをピンと張った状態で、地球の自転する方向に地球と同じ角速度でまわるように速度(7.8km/s程度)を加えてやると、ひもがピンと張った状態のまま回り続けることができる。このひもを登って宇宙に行こうというのが、超大雑把に表現した宇宙エレベーターの原理。これが物理的に成り立つことをブラッドリー.C.エドワーズ博士(米国ロスアラモス国立研究所)がNASAの依頼により報告したのが2000年のこと。
宇宙エレベーターのうんちく:1
宇宙エレベーターという名前は英語の "Space Elevator" を訳したもの。古くから日本では「軌道エレベーター」と呼ばれているが、これはサイエンスライターの金子隆一氏(1956-2013)が名付けたもの。日本人はこちらの方が呼び慣れている人も多いし、なにより響きがかっこいい。しかし外国人に "Orbital Elevator" と言っても通じないので、「宇宙エレベーター」という用語を使うというのが、一般社団法人宇宙エレベーター協会の公式見解。
僕は常々、宇宙エレベーターを推進する意見を表明しているが、正直言って宇宙エレベーターが今後50年以内に実現するとは思っていない。それでも推進したいと思っているのは、STEM教育に利用したいから。子供や若者たちに、もっと科学や技術を啓蒙したいからと言うのが動機の大部分を占めている。
17.10.2024 03:50 — 👍 1 🔁 0 💬 0 📌 0