(6/6)
聞き返す声にも力が入らない。
まさか、いや、そんなことがあるはずがない。
あの頃。声をかけ、身を隠し、心の芯を支えてくれたのは、藍曦臣だった。強く前を向く瞳に、励まされたのは自分だけではなかったはずで。
たしかに、二人だけの薪小屋で、蝋燭に揺れる藍曦臣の瞳を見た。
だからといって――。
その後に続く藍曦臣の言葉で、声にならない、声が出た。
「江澄、私と恋を始めてみませんか」
曦澄日常の欠片_初恋
2026/2/17
@nanameter.bsky.social
MDZS/CQL/曦澄/双傑/大哥好き/忘羨(読)20↑↑ のんびり書く人。好きで埋めつくしたい! ◆曦澄日常の欠片 不定期更新中 https://www.pixiv.net/users/23527849
(6/6)
聞き返す声にも力が入らない。
まさか、いや、そんなことがあるはずがない。
あの頃。声をかけ、身を隠し、心の芯を支えてくれたのは、藍曦臣だった。強く前を向く瞳に、励まされたのは自分だけではなかったはずで。
たしかに、二人だけの薪小屋で、蝋燭に揺れる藍曦臣の瞳を見た。
だからといって――。
その後に続く藍曦臣の言葉で、声にならない、声が出た。
「江澄、私と恋を始めてみませんか」
曦澄日常の欠片_初恋
2026/2/17
(5/6)
「雨の夜。暗闇の中で輝いていたのは、あなたの復讐に燃えた瞳だった」
藍曦臣の唇が、目の前にある。
「あの日、どこにも何もない場所で、あなただけが私のすべてのようだった。前に進めず、後ろにも退けず。揺れかけた私を奮い立たせたのは、江公子。あなただったよ」
頬に、柔らかな唇が言葉を落とす。
「……な、なにする」
江澄の心が、音を立てて走り出す。
「あなたが私の初恋をからかうからだ」
息を吹きかけ、藍曦臣が離れていく。
澄心堂紙を折りたたみ、胸元にしまう。その仕草を見て、江澄はその場に座り込んだ。
「……初恋って」
(4/6)
「江宗主。笑っているきみに、怖い話を教えてあげよう」
藍曦臣はゆるやかに席を立つと、江澄に触れそうな距離に立った。両手首を掴まれ、拘束される。
江澄は急な接触に顔を顰めた。
「藍曦臣、なにを」
「どこにも何もない場所であなたと出会い」
柔らかな声が語り出した。真っ直ぐな視線が、江澄を見つめる。
「出会ったのは、射日の頃だ。襤褸をまとい、薪小屋に二人で身を隠したことがあったでしょう」
「……何の話」
(3/6)
「どこにも何もない場所であなたと……」
もう一度紙を手に取り、文字を読み上げると、
「やめてください!」
藍曦臣の手が伸びてきた。
「懐桑に聞いて、知っているんでしょう」
「はは。まさかこれがあなたの体験談だったとは」
江澄は笑いながら、藍曦臣の手を避けた。
「どこでそんな仙子と出会った。射日のときか。沢蕪君も恋に溺れることがあったんだな。それもこんな直截な言葉で語れる恋が」
藍曦臣にもそんな一面があったのかと、片眉をあげて見た。
「……だ」
「え、なんだって」
聞き取れないほど低い声が床に響いた。
(2/6)
先日、清河に行った門弟たちがどこかの客桟でこの詩を手に入れた。詩に影絵の物語がついて、夢見がちな恋愛譚は若い娘たちの琴線に触れたようだった。
春風に乗って、紙の端がふわりと浮いた。
「……そう」
「興味がなさそうだな、沢蕪君」
藍曦臣は何度か視線を左右に泳がせていたが、江澄の声で力なく目を閉じた。
なぜこんなにも藍曦臣が落ち着かないのか。江澄は理由を知っている。
曦澄日常の欠片「初恋」(1/6) #曦澄
どこにも何もない場所であなたと出会い
あなた以外、誰もいない場所に身を隠す
暗闇のなかに映るは、強き眼差し
どこにも何もない場所で、
あなただけが私のすべてに変わる
「と、こんな恋に落ちてみたいと、うちの門弟たちが騒いでいた」
江澄は、藍曦臣の文机の上に一枚の紙片をそっと置いた。聶氏の宗主が好んで使う、清河澈雲堂の高級紙だ。きめ細かな光沢あるそこには、流麗な筆で詩が綴られている。
(2/6)
先日、清河に行った門弟たちがどこかの客桟でこの詩を手に入れた。詩に影絵の物語がついて、夢見がちな恋愛譚は若い娘たちの琴線に触れたようだった。
春風に乗って、紙の端がふわりと浮いた。
「……そう」
「興味がなさそうだな、沢蕪君」
藍曦臣は何度か視線を左右に泳がせていたが、江澄の声で力なく目を閉じた。
なぜこんなにも藍曦臣が落ち着かないのか。江澄は理由を知っている。
この前、曦澄ワンドロワンライで書いたバレンタインの話。
兄上の腹筋だけで直角に起き上がるシーンが書きたくて書いてしまった…
いや、それだけじゃないけど、そこが大事だったの…
現代AU曦澄のファンアートイラスト。職場で曦にSOYJOY(チョコ味)を渡そうとしている澄。
現代AU曦澄 ハッピーバレンタイン(遅刻)
引き出しから適当に出してきたS○YJOYをくれるタイプの澄 たまたまチョコ味
ワンライ書く!
ハッピーバレンタインになるかな
今度こそラブコメにするぞ
キーワードでお話作るのって楽しくて。
今回だったら『平手打ち』。これ絶対使いたいなと思って。どっちが打つの?いやそっちかな?いや、だとして、何で打つの…いや、だったらさぁ…
ということで2回。
そこからスタートしたゴシックロマンス?婚礼曦澄でした。
何回婚礼曦澄書くのと思うけど、何回婚礼話書いても読んでも好きだからいいかなと。
#曦澄 #Xicheng
13.02.2026 11:52 — 👍 40 🔁 9 💬 0 📌 0#誰曦澄
12.02.2026 11:51 — 👍 15 🔁 5 💬 0 📌 0他人様からいただくキーワードで書くの、すごく楽しい。
リクエストとか受け付けるとかありなのかも?
はしこさん主催の大好き企画「誰曦澄」に参加しました!
#誰曦澄 #曦澄
『――嫁に来るか、曦臣』
戯言から始まる婚礼ミステリー?曦澄です。
【メインワード:実は… フリーワード:今、弔い、耳飾り、挨拶、平手打ち】
書いててめちゃくちゃ楽しかったです。
雲深の花婿 | ななメーター #pixiv www.pixiv.net/novel/show.p...
#曦澄日常の欠片
曦澄日常の欠片|墨絵
タイトルをつけて三話まとめました
①
bsky.app/profile/nana...
②
bsky.app/profile/nana...
③
bsky.app/profile/nana...
にぎやかしだ・・・ログ本を作ろうとした・・・名残りだ
31.01.2026 22:43 — 👍 30 🔁 10 💬 1 📌 0「冷たっ。江澄、性格悪いぞ!」
「うるさい。雲深不知処で騒ぐな」
雪掻きの後でさえ、すぐに湿った雪が積もる。
後ろからの罵声を振り切って、江澄は大門に向かって歩き始めた。
「阿澄」
そう呼ぶ声が、少し固まる。
江澄は舌打ち、濡れはじめた指先で傘の柄を握った。
「おめでとう、阿澄!何があっても、今度こそ俺はお前の味方だからな!」
遠くなる声が、雪景色に溶けていく。
「……うるさいやつだな」
今度こそと、言うんじゃない。過去を塗り替えようとしなくてもいい。
傘を目の前に傾けて、滲む視界をそっと隠した。
(4/4)
(3/4)
思わず元師兄の頭を強く打っていた。骨まで響いてじんじんする。
「いたっ、何すんだよ!」
「そんなでかい声で聞くやつがあるか!」
「江澄が声出せって言ったんだろうが」
「内容を考えて物を言え、馬鹿阿羨」
「あ」
「あ?」
「阿澄、今お前、なんて」
「……お前には関係ない」
かつてよく見た、にやりと口角を上げて笑う顔。
江澄は踵を返し振り向きざま、傘を傾けて雪を落とした。
(2/4)
「……って本当か」
「風と雪で聞こえない。もっと声を出せ」
「なあ、あれって、本当か」
「何度も言わせるな。聞きたいことがあるなら、わかるように話せ」
江澄は一歩近づき、少し目線が下にある頭に積もった雪を、指先で乱暴に払った。
「なあ、……お前、沢蕪君と『いい仲』ってのは本当か!」
【曦澄日常の欠片_双傑】(1/4)
寒室から出ると、空まですべてが白かった。
吐く息が氷の粒になって消えていく。
「あの人は、行き届きすぎだな」
江澄は扉の外に立てかけられた傘に気づいて、頬を緩めた。
「阿澄」
呼ばれて振り向くと、真っ白な外套に包まれた元師兄が立っていた。知らぬ間に雲深不知処に馴染みすぎている。
「お前にそう呼ぶことを許してはいないが、……何のようだ」
牡丹雪が音を立てて積もっていく。
江澄の手にも、傘の柄から雪の重みが伝わってきた。
単に賑やかしで既存絵を投稿するたまゆら
曦澄!
なんとなくブルスカの使用頻度を上げようと言う試み
27.01.2026 12:36 — 👍 58 🔁 17 💬 1 📌 0触れ合いそうな指先。息が届くような距離に頬を寄せたこともある。見つめ合った視線に、情欲がにじむこともあった。眇めた瞳が、震える唇が、何度互いの理性を試したことか。
逃げられない。
江澄は絵を素早く巻き直すと、主管に向かって、不在を告げた。
曦澄日常の欠片
『雷承より、江宗主へ』
冬の朝。蓮花塢で修練を始めようかというとき、そんな文が添えられた巻物が届いた。
留め具を外しゆっくりと開くと、墨の香りが辺りに漂う。
「あの人は、俺に何を言いたいんだ」
聶懐桑のところで見た絵と同じように、紙は墨絵で埋め尽くされていた。
「これは……」
同じ絵かと思ったが、よく見ると雷鳴が止み、祈っていた男がこちらに顔を向けている。そして指先を伸ばして、絵描きに微笑みかけている。
狂気じみていた絵描きの背中に、昇天するような光が浮かび上がっていた。
「想いは、同じだと言いたいんだろう」
紫の蝶は声の主の息遣いを届けると、瞬く間に夜闇に消えた。
「江澄、まさかあの絵を見て……」
藍曦臣は深いため息とともに、その場に座り込んだ。
先日、手遊びに描いた絵があった。
藍曦臣はその絵の余白に『雷承』と雅号を書き入れた。
墨をふんだんに使ったその絵は、雷鳴響く城郭の上、一心に剣を振り、祈るように舞い踊る青年が描かれていた。そこに、熱心に筆を走らせる絵描きの姿がある。
己に見向きもしない相手をひたすら紙に写し続ける。絵描きの背には霊魂のようなものさえ漂い、狂気じみた愛が見え隠れする、そんな絵だった。
曦澄日常の欠片
雲深不知処。月明かりが雪を照らす。
室に白銀の光が忍び込み、藍曦臣の手元をうっすらと灯す。
寝台に向かおうと立ち上がったとき、文机の玉令が淡く光った。
「江澄?」
風が渦巻き、ふわりと白いものが浮き上がる。
がたりと音を立てて机に落ちたそれを、藍曦臣は手に取った。
「墨?」
包み紙を取らずとも、香りだけでわかる。
「江澄、墨を送ってくれましたか」
藍曦臣は指先に蝶を作り、想い人へ問いかけた。
『ああ、聶懐桑のところで『雷承』という絵描きの絵を見てな。誰かは知らないが、あなたに墨を送ったほうがいいだろうと、まあ、そう思ったわけだ、気にするな』
清河にて。友に勧められた店の軒下で、江澄は足を止めた。
「俺が選んだとて、あの人の気に入るものとなるだろうか」
弱気な心は、行く手を幾度も阻んでいる。
足裏で砂がこすれる音がする。つま先を右へ、左へと向けながら、江澄は身を翻した。
「いらっしゃいませ」
店主の男が笑顔で出迎えた。
墨の香りが、ふと、愛しい人の隣を思わせた。
曦澄日常の欠片
間違えて消しちゃった
27.01.2026 14:19 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0紫の蝶は声の主の息遣いを届けると、瞬く間に夜闇に消えた。
「江澄、まさかあの絵を見て……」
藍曦臣は深いため息とともに、その場に座り込んだ。
先日、手遊びに描いた絵があった。
藍曦臣はその絵の余白に『雷承』と雅号を書き入れた。
墨をふんだんに使ったその絵は、雷鳴響く城郭の上、剣を振り、祈るように舞い踊る青年が描かれていた。そこに、熱心に筆を走らせる絵描きの姿がある。
己に見向きもしない相手をひたすら紙に写し続ける。絵描きの背には霊魂のようなものさえ漂い、狂気じみた愛が見え隠れする、そんな絵だった。
曦澄日常の欠片