三本川📚読書家

『哲夫の春休み』を読みます。
ガンバの冒険シリーズの斎藤惇夫さんの作品です。

#岩波少年文庫100冊マラソン

読書家 三本川 Xで1万人に見守られながら児童文学を読んでいる珍しい人、三本川と申します。 岩波少年文庫を100冊読んで感想を書く「岩波少年文庫100冊マラソン」の発起人。 毎朝6～7時に黙々と本を読む「朝読書1000日マラソン」のライブ配信を行っています。ぜひ一緒に本を読みましょう。

【#朝読書1000日マラソン の時間変更のお知らせ】

毎朝YouTubeで、読書と雑談の配信を行っています（本日が82日目）。

通信状況が不安定になりやすい時間帯を避けるため、明日から配信時間を15分早め、5:45開始にさせていただきます。

何卒よろしくお願いいたします。
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「～について知る」ことと、「～を知る」ことは異なります。
「～について知る」だけで良い気になっている常識人がとことんコケにされて、新しい世界を体験させられる作品が『ぽっぺん先生』です。
成熟した読者層にも訴えかける力を持つシリーズです。とても面白かった。

『朝びらき丸 東の海へ』をこえる唐突さで、1ページ目から海へと放り込まれ、航海が始まります。
『ツバメ号とアマゾン号』の子供たちのような技術のないぽっぺん先生が、へっぴり腰でヨットを操ろうとしたりします。
他の多くの児童文学とは異なり、大人の主人公の間抜けっぷりが笑える作品です。

ただし今作は、過去2作と比べてかなりホラーです。
134ページの壮大な地獄絵図、上流階級の下卑た遊び、仮面のようにひきはがされる顔、魔性のものたちの大群…。
子供時代に引き戻されるという、主人公が大人ならではの悪夢も描かれて、ぞわぞわしました。

#岩波少年文庫100冊マラソン 82冊目読了
舟崎克彦『ぽっぺん先生と笑うカモメ号』

「『世界的な規模のうちはまだいいんだ』先生はつづけました。『ヘタをすると世界にもいられなくなりそうなんです』」

『ぽっぺん先生』シリーズ3作目は、世界を超える壮大な規模の、悪夢のような航海物語でした。

児童文学の主人公が一般人のおじさんというのは、おそらく非常にレアだと思います
既に成熟している大人が主人公であることによって、読者に成長を求める押しつけがましさがありません。
実際、ぽっぺん先生には精神的に何の変化も生じませんし。

コミカルな雰囲気でありつつも、食物連鎖、生き物同士の殺し合いという真実を、主人公が死を体験するという形で読者に突きつけています。
これは本当にすごいことで、とても大切な挑戦をしている作品だと思います。

前作と同様、やはり挿絵が好きです。作者自身が描かれています。
特に181ページの落っこちていくイタチがかわいい。

生物学の助教授のおじさんが、虫になり、魚になり、鳥になり、イタチになり……と様々な生き物へと姿を変えていきます。
食物連鎖、輪廻転生を体現した物語です。

奇妙な動物を追いかけたことがきっかけで、不可思議な体験をして、夢から覚めたように現実に戻っていく。いかにも『アリス』な構造です。
ただし主人公がおじさんにすげかえられており、成人男性の読者としては非常に共感できてそそられます。

#岩波少年文庫100冊マラソン 81冊目読了
舟崎克彦『ぽっぺん先生と帰らずの沼』

「わたしは今、生物学的にひじょうに特殊な境遇にあるんです」

やはり、ぽっぺん先生は面白い。
さえないおじさん版の『不思議の国のアリス』です。そう言われたら皆さん、読みたくなりませんか。

読書家 三本川 Xで1万人に見守られながら児童文学を読んでいる珍しい人、三本川と申します。 岩波少年文庫を100冊読んで感想を書く「岩波少年文庫100冊マラソン」の発起人。 毎朝6～7時に黙々と本を読む「朝読書1000日マラソン」のライブ配信を行っています。ぜひ一緒に本を読みましょう。

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およそ10ヶ月かけて、岩波少年文庫を80冊読みました。

#岩波少年文庫100冊マラソン

『ぽっぺん先生』シリーズを読みます。

#岩波少年文庫100冊マラソン

読んでいて、映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』を思い出しました。
詐欺師の主人公が当意即妙な嘘を重ね、小切手詐欺を繰り返し、周囲を翻弄するストーリーです。
なんだかキムと似ています。
『少年キム』はそういったエンタメ的な痛快さも持った作品でした。

キムは作中で少なくとも3回、自分が何者かを自問しています。
スパイになるため学校に放り込まれた時、初の長期間の任務に就いたとき時、その任務を終えた時です（いずれもスパイ関係の出来事だ）。
「おれはキムだ。この広い世界で、おれはただのキムなんだ。キムってだれだ？」

涙を流してカチリと世界につながった瞬間の繊細な心の動きに、刹那的な美しさを感じる一方、驚きや戸惑いもおぼえました（正直なところ、このシーンを深く理解することは、おそらくとても難しい！）。
彼は新しい世界との繋がり方を見つけて、アイデンティティの混乱が収束したようです。

インドの多彩な文化や宗教を、現地の人々の息づかいが感じられるほどありありと描いた作品です。
ただ注釈での補足説明がないので、実は読んでいてつまづく箇所もありました。
例えば高地の女性とのやり取りに出てきた「クルミ」や「アーモンド」は、何の婉曲表現なのだろう…。
でも注釈があったらあったで、膨大な注釈だらけの本になってしまっただろうから、この形がベストなのでしょうね。

主人公のキムは、見習いスパイでありつつ、老僧の弟子でもあります。
イギリス人でありつつ、インド人でもあります。
どちらか一方のみが本当の彼では決してなく、アイデンティティの問題を抱え、魂が不安定な状態です。

#岩波少年文庫100冊マラソン 80冊目読了
ラドヤード・キプリング『少年キム 下』

宗教家の旅の物語という側面と、スパイたちの諜報戦の物語という側面があります。
そして中心にいる少年の自分探しの物語でもあります。
児童文学レーベルの本でありつつ、非常に読み応えのある作品でした。

そしてキムがスパイとして「グレートゲーム」に参戦することがにおわされます。
盛り上げてくるなあ！ 下巻が楽しみです。

作中でしばしば英国人と東洋人の対立が描かれますが、英国人の血をひきインドで生まれ育ったキムは、その架け橋になりうる存在のようです。
「白人には、おまえのようにこの国や習慣のことを知っている者などいないではないか」とラマも言っています。

ラマは敬虔な仏教徒で、彼の語る教えに魅力を感じます。
カーストが重視される社会の中で、「高位も低位もない」と語るラマは異色の存在と思われます。
「うぬぼれは不要じゃ」「欲を持ったり、なにかに愛着を感じたりしてはならぬのだ」などと興味深いセリフが多いです。
もっと話を聞いてみたい。

メインキャラクターのキムと相方のラマがどちらも好きです。相思相愛の関係性もいい。

キムは口の上手さ、高い洞察力、幅広い知識を持った器用な少年です。
その知性ならではのユーモラスなセリフも飛び出し、読者を笑わせにきたりもします。

例えば手紙の代書屋に「お金を送って。これを書いた代書屋に払うぶんがない」と書かせる大胆さは笑えます。
他にも、輪廻からの解放を良しとするラマに対し「そしたら、この世には悪い人間ばかり残されちゃうじゃないか」と切り返す頭の回転には舌を巻きます。

#岩波少年文庫100冊マラソン 79冊目読了
ラドヤード・キプリング『少年キム 上』

道徳的な意識は低め、世渡りの力と好奇心は強め、という最高に魅力的な主人公が、チベットの導師と共にインドを旅します。
そして「グレートゲーム」と呼ばれる、イギリスとロシアのスパイ合戦に関わっていきます。

次は『少年キム』を読みます。

#岩波少年文庫100冊マラソン

そして同じ場所、同じ姿勢に戻るのが美しい。
同じように見えても、数多くの困難や出会いによって成長し、心持ちが大きく変化しています。
もはや騎士という身分の外面的な魅力にとらわれていません。
「騎士になるのに、剣も盾も身につける必要はない」

本音としては、このシーンがあまりにも美しいのでそのまま締めくくってほしく、ラスト5ページが蛇足のようにも感じました。
でもこの部分は続編『白い盾の少年騎士』において重要になるのかもしれません。
続編は品切れになっており、復刊する日を心待ちにしております。

下巻では、道化ティリロがとても好きなキャラクターでした。いくつかの名言を残しています。
「悪にたいして戦うとき、あなた自身が、まだ善ではないことを、わすれないでいてくださるように！ 善と悪とは敵同士。だが、ぴったりよりそってる」
二元論にとらわれてはいけないのだよね。

帰りの旅の道すがら、主人公が一つ一つの恩義をしっかり返していくのが素晴らしい。再会を約束した人には必ず会いに行っています。
律儀な大人だな。

#岩波少年文庫100冊マラソン 78冊目読了
トンケ・ドラフト『王への手紙 下』

見習い騎士が隣国の王へ手紙を運ぶ、冒険物語の大傑作。
主人公の行く手を阻む障壁は多種多様で（姿を変える密偵、政治家、通行税などなど）、話のテンポも良く、最後まで夢中で読める本です。

岩波少年文庫『魔法の学校』の紹介動画を上げました！
なぜか途中で漫画『HUNTER×HUNTER』の話もしています。

今後も動画を出し続けていきますので、ぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。
youtu.be/xg8F1Wfqya0

道中で出会う人たちが、一人一人の描写に深みがあって魅力的です。
とりわけ好感を持てるのはピアック少年。陽気で純朴で、言葉使いが優しくて最高です。
「ちょっとだけ、すごーく痛いんでしょ」
良い子だなー。

悪役が善人ムーブしがちな点には、手ぬるさを感じていました。
ところが正体不明の凶悪な存在の出現が匂わされます。
これから登場する全員が疑わしくなるな。話を盛り上げるのが上手すぎる！

2004年、オランダで過去50年間に出された子供の本の中から第1位に選ばれたそうです。
たしかに途轍もなく面白い！

謎の老人が礼拝堂のドアをたたくところから全てが始まり、主人公は騎士になるための最後の試練を投げだして、王国の安寧がかかった重大な手紙を運びます。
小さな旅が引き返せない壮大な冒険へ発展していく導入部分に引き込まれました。

謎がいくつも仕掛けられており、非常に先が気になります。
最大の謎はやはり手紙に書かれている内容。大きな危険に陥ったときのみ読んでよいというルールは、いつ発動するのか！

#岩波少年文庫100冊マラソン 77冊目読了
トンケ・ドラフト『王への手紙 上』

全国の中二病患者の皆さん、この本を読んでください。
誰にも話せない秘密の使命を帯びた少年が、大人の騎士たちと渡り合いながら旅をします。超かっこいいです。

創刊75年記念！　夏の岩波少年文庫フェア2025 - 岩波書店 岩波少年文庫は、終戦後まもない1950年に創刊されました。創刊にたずさわった石井桃子さんは、自分にとって「喜びの訪れ」と感じられる本を選び抜い…

書店に走る前に、開催書店・対象書籍のリストに目を通した方がよいです！
帯付きの本がどのくらい残っているか不明ですのでご注意ください！
www.iwanami.co.jp/news/n115400...

岩波少年文庫フェアのアクリルキーホルダーが届きました。
締切は今月末なので、欲しい方はお急ぎください！

設定が類似しているので、映画『トイ・ストーリー』の元ネタなのではないか、と勝手に思っています。
『トイ・ストーリー』好きの方はぜひチェックしてみてください。