朱雀門出『今昔奇怪録』読了。
『首ざぶとん』の著者のデビュー作を含む5編。
ホラー小説大賞短編賞受賞作の表題作が凄く好き。
ちょっとしたきっかけで手にした『今昔奇怪録』にのめり込む夫婦の話なんだけど『ぼうがんこぞう』、『三人相撲』『くびつりのき』など出てくる話がどれも面白い。
妻の行動力や子供の言動もよくわからない怖さがある。
全てが説明されないけど、なんだかそういうものだと納得してしまうのはなぜだろう。
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読書と映画で楽しい余生を。
朱雀門出『今昔奇怪録』読了。
『首ざぶとん』の著者のデビュー作を含む5編。
ホラー小説大賞短編賞受賞作の表題作が凄く好き。
ちょっとしたきっかけで手にした『今昔奇怪録』にのめり込む夫婦の話なんだけど『ぼうがんこぞう』、『三人相撲』『くびつりのき』など出てくる話がどれも面白い。
妻の行動力や子供の言動もよくわからない怖さがある。
全てが説明されないけど、なんだかそういうものだと納得してしまうのはなぜだろう。
イーユン・リー『千年の祈り』読了。
著者の代表的な短篇集。
最初の『あまりもの』読んだ時に、何てものを書くんだろうと思った。
それでいて読後感は悪くなかった。
凄く印象に残る短篇。
『市場の約束』も良かった。自分も約束を守らない人間を信用しない。
『縁組』は母親との生活に嫌気がさした娘が自分の幸せが何かを考えて行動にでる話だけど、日本ではこういうのは小説より背景で忌避されるから、ちょっと新鮮だった。
そういう意味では『あまりもの』もアウトなんだろうけど、そういうのに煩い人達はどういう感想を持つものなんだろうか。
石田瑞麿『女犯 聖の性』読了。
出家者が守るべき戒律を破って女性と性的関係を持つ『女犯』をキーワードとした日本仏教史。
そもそも出家とは?受戒とは?から始まる。日本に仏教が伝来した時、仏教を信じることが出家で僧侶と名乗れると思われていたけど、実際は受戒を受けないと正式な出家ではなかった。
つまり戒の概念が無ければ戒を破れない。ここら辺が1番面白かったな。
テーマの女犯についてはいろんな古典の例が引かれるけど、大体だらしない僧侶が好き勝手にやってる感じ。女犯だけじゃなく男色も。江戸時代に取り締まりが厳格化されてもやめられない僧侶が続出してるのが何なんだろう…
小林信彦『袋小路の休日』読了。
雑文を書いてる上村宏を狂言回しとした連作短篇七篇。
主人公が過去を振り返り、現在との対比を描いたものが多い。変わっていく街と人。
毛語録を愛読していた中国人の青年が資本主義に触れて変わったものと変わらなかったもの『北の青年』、東京にも昔はたくさん走っていた『路面電車』、静かな場所を求めても街が変わっていく方が早い『街』が良かった。
今日は雨だと知ってたから一日中家で本を読んだり、映画を観たりする予定だったんだけど、洗濯済ませて本を読んでたら、急に肉食べたい!ってなって神保町まで。
ついでに東京堂書店で新刊も買った。
帰りにシェア型本屋に寄ろうとしたらカップルが入り口塞いで「書店に入る彼女」みたいな写真を撮ってて入れない人達で混雑。思わず「先に人入れて!」ってかなり大声で言ったら入れた。お店の人がスルーなのが残念。
そこのシェア型本屋ではびっくりするくらい自分と趣味が合う人の棚があるので土日に残っている入荷本は大抵自分が買ってる気がする。
交差点の方のシェア型本屋は荒俣さんフェアやってた。
古本まつりは雨なので…
最近、残業続きだったので、15時30分退社にして神田古本まつりに。
淡路町経由で向かったらまさかの雨で閉めてしまったところも。
逆にいつもは人が多くて近寄り難い盛林堂書房さんブースも空いてた。毎年いる8割くらい買い占める方も見当たらず、ゆっくり見れた。そしてナボコフ買った。
17時で閉めます〜と16時56分に言われたので殆ど見れないところもあった。
ナボコフだけ持ってウロウロしてたら日本推理作家協会賞全集が。これ途中まで読んだんだよな〜とパラパラ見ると思ったより安かったので読んだ事ないやつを。
そして時代はヘーゲルっぽいのでヘーゲルを読むも買った。
磯田光一『昭和への鎮魂』読了。
保守の評論家である著者が昭和が終わる時に自身とは反対の左派の思想家達を論じる。
昔の日本の文学評論って難しい。
最初に取り上げるのが蔵原惟人。プロレタリア文学の立役者で階級闘争に寄与するのが文学とした人。
続いて竹内好、小林秀雄を経て花田清輝が出てくる。柳田國男にも触りつつ村上一郎を取り上げ、野坂昭如、寺山修司で少し休んで、片岡啓治の攘夷論。この攘夷論の章が面白かった。
攘夷のための開国ってまさにいま…
最後は戦後文学で締める。
ヘーゲルの弁証法的な考え方が普通にできていた時代と、構造として解体する現代思想を経た時代。分断が進む世界ではもしかしたら…
残業で疲れ切って寝落ちしてた。
星新一のコミック化した『親しげな悪魔』をさらっと読んだ。
渡辺ペコさんの『妖精』が断トツで良かった。
星新一の作品でずっと読み直したい作品あるんだけど、どれに入っているかわからないんだよな…
杉本秀太郎『半日半夜』読了。
著者の代表的なエッセイを集めたもな。
経歴詐称転職者の尻拭いで毎日残業しつつ「それやる意味あります?」に怒りを抑えながらの帰り道で毎日少しずつ読んだ。
自身の現実とは違う世界の話なのでなんとなく心のバランスとれて良かった。京都や文学の話から何故か蝉に拘りが。
ハーディの『テス』を読もうと言った少し後のエッセイで本当に読んでたりするのがなんか良い。そういう生活がしたい。
アレクサンダル・ヘモン『私の人生の本』読了。
サラエヴォ出身作家のエッセイ集。
表題作は著者に文学を教えてくれた大学教授が民族主義者として戦争犯罪に加担していた事を知った話。シェイクスピアやモンテーニュをどんなに勉強したとしても道徳的になるとは限らないけど、なんか嫌だな。
アメリカ文学に耽溺した話とかも良かったけど、やはり難病の娘さんの話である「アクアリウム」が印象に残る。
親に構って貰えなくてもイマジナリー・フレンドと仲良く過ごす姉の話が…
もっとタフに生きれるといいんだけど。
ジュノ・ディアス『こうしてお前は彼女にフラれる』読了。
浮気をする男と浮気をされる女の9つの短篇集。
何を指してモテる男というかはアレだけど、概ね殆どの小説や現実を見てると浮気をするくらいの行動力がある男がモテると言われるんだろうなとは思っているので、こういう浮気する男を主人公にした物語を読むとそこまで行動したり考えたりできて凄いなという言葉しか出てこない。
アメリカに移り住んだ直後の母親との孤独な生活を描いた『インビエルノ』は良かった。こういう日々を過ごした事が大人になった時に女性との関係に影響するんだろうか。人種的、家族的な事と言われる方が理解はできるかな。
レアード・ハント『インディアナ、インディアナ』読了。
精神を病んでいると思われる男の両親や妻の回想の物語。
見えないはずのものが見える男でもある主人公。その能力が物語の中心になるわけでもなく、ただ失ってしまった人達に思いを馳せる。
妻も精神を病んでおり、会えない場所にいて、手紙と、妻と同じところにいた人達との交流で様子を伝え聞くだけ。
悲しい話なんだろうけど、それほど暗く感じなかった。妻からの手紙が自身の見たキレイなものを共有したいという思いが溢れてて、手紙ってそういうものなんだなって改めて気付いたり…
アンナ・カヴァン『草地は緑に輝いて』読了。
幻想、SF、カフカへのオマージュまでバラエティに富む作品集。
理不尽な仕事を無理してやってる時に読むタイプの小説ではなかった。
でもこういう小説が好きなんだよな。
日々感じる嫌な事、不安な事の本質を抽出して小説にできるのは簡単そうで難しいんだろうな。
表題作はカヴァンらしいけど、やはりカフカ的な『未来は輝く』が好き。
不幸な時に手を差し伸べてくれたとしても、ある日突然嫌われる事もある。油断してはいけない。少しの不安を見逃したらダメ…
紀田順一郎『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』読了。
蔵書を手放した事をきっかけに蔵書とは何か問い直したもの。
なんかタイムリーな読書になったけど、積読整理の順番がたまたま回ってきたから。
本好きとしては悲しい事だけど、あの世には持っていけないから何か考えないと。
自分も電子書籍が始まった頃にダンボール20箱くらい売ったけど、その後、遅々として電子化されないという…
それでしばらく紙の本買ってなかったけど、諦めて買い始めたら部屋を埋め尽くしてしまったので、漸く手放す方向に舵を切ったつもりなんだけど、買ってしまうので…
何となく数年で寿命がくる予感がしてるので成り行き…
海猫沢めろん『ディスクロニアの鳩時計』読了。
鳥小屋をかぶった少年・白鳥鳥彦が夏祭りで時彫幽々夏と出会った事から始まる…
拡張現実、AI、ゾンビなど90年代サブカルの雰囲気満載の時間についての物語。いろいろ引っかかるところはあったけど面白かった。
第五の奇書かどうかは読んだ人が判断すればいいかな。時間についての考察が興味深い。
メタミステリとしても他ではまずあり得ない形。SF要素があるから、それをどう受け取るか。
500頁超えで、ほぼ終盤まで真相がわからない。それでもきっちり終わったのが凄い。
楳図かずおの『怪』。子供の頃何度も繰り返し読んだ漫画。『人こぶの怪』と『おみっちゃんが今夜もやってくる』は結局人間が1番怖いというのと人は忘れられる事を恐れるという自分の中の核の部分に影響を与えた気がする。今でもできるなら人と関わりなくないし、誰にも覚えて貰いたくないみたいなのはずっとある。
やっと電子化された!と期待してたけど、やはり全部はしてくれなかった。
自分の見落としかもしれないけど。
ジェフ・ニコルソン『食物連鎖』読了。
レストランを成功させたアメリカの若者にロンドンの永遠倶楽部から招待状が届く…
面白かった。2段組で字が小さいので休み休み読んだけど面白かった。
タイトルからオチは想像付いていたし、そこに向かっている様に見えたけど、主人公の両親や倶楽部側の男達の背景も合ったりして飽きない。
さらに倶楽部の歴史を描いた本からの抜粋が本篇の間に挿入され、徐々にその実態がわかってくるというのも良かった。
アイザック・バシェヴィス・シンガー
『ゴライの悪魔』読了。
17世紀、フメリニツキーによる大虐殺によってメシア願望が高まるなかユダヤ民族史で最も影響のあったサバタイ・ツェヴィの偽メシア騒動に巻き込まれたゴライの町を描く。
勉強不足でサバタイ・ツェヴィという実在の人物を知らなかったんだけど、メシア論は終末論とはまた違った怖さがあったな。
預言者のような位置付けの人物が2人入れ替わるんだけど、同じ女性と結婚するのに最初の結婚の顛末は何なんだろう。キリスト教なら何となくわかるけどユダヤ教にそんなイメージなかったな。宗教以前の神話的なものだろうか。
ジョン・ファンテ『バンディーニ家よ、春を待て』読了。
アメリカのイタリア系移民の家庭で育った著者の自伝的な作品。
面白いな〜。文章のリズムが凄く合うのかうるさいところで読んでいても集中できた。
貧困とか異性との関係とか、何より親との関係が凄く面白い。共感ではないんだけど、理解はできるから。
雨宮淳司『恐怖箱 怪医』読了。
医療現場での実話怪談集。
医療現場だからか何となく居るんだろうなとか思ってるからか、どれも怖かったし、面白かった。
悪意が怖い『ビニールグローブ』、写真を見るのが怖くなる『表と裏』、興味本位で霊を集めると恐ろしい事が起こる『回廊』が好きかな。
リュドミラ・ウリツカヤ『陽気なお葬式』読了。
死を待つだけの亡命ロシア人画家アーリクとまわりのは人達の話。
著者の作品を読むのは2作目だけど、兎に角いい小説を読んだという感想がまず出てくるのは今回も一緒。
ただその良さを伝えるのが難しい。みんなに愛される1人の男が死んでいくだけの話。しかもなぜ愛されるのかわからない。解説で人を嫌わないからとあって、なるほどって思うくらい気付かない。
タイトルにある様に陽気なお葬式を望む人は人に好かれる人なんだろうなとは思った。いろんな立場の違う人も最後という事で葬式には集うから仲直りのチャンスだったり、新しい生活への起点だったりもするんだろうな。
レアード・ハント『ネバーホーム』読了。
南北戦争に参加した女性の話。
日本のアニメに慣れてるから異世界ものかと思ってしまうけど、本当に男のふりをして参加した女性達がたくさんいたらしい。
伊達男と呼び名まで付けられて一目置かれていた状況から、捕虜になったり、スパイに間違われたり、いろんな事が次々起こるので、何とか無事日本帰って欲しいと思いながら読んだ。
家に帰ってからの展開は胸熱だけど、意外なオチで感情の持って行きどころが。
マイナンバーカードの更新手続が来たけど、来年新しくなるのに、今更新したら5年くらい古いカードになるの嫌だな…
来年からというのも遅れる可能性もあるし。デジタル庁何の為に作ったんだろう。
ピエール・ルイス『欲望のあいまいな対象』読了。
スペインの古都で恋の相手を探していたフランス人青年がある女性に誘われる。会いに行く前に知人の中年紳士ドン・マテオに相談すると…
ルイス・ブニュエルの映画に便乗してタイトル変えられた角川文庫版。
原題『私の体に悪魔がいる』となってるけど『女と人形』という方が有名かも。
あらすじは中年紳士が若い女性に振り回されるという話だけど、男女の本質を突いてるなという印象。見返りを求める男と報酬を与えない女。何かを貰ったから、自身を差し出せばそれは買われた事になるというニュアンスの言葉が幾つかあって、そこが理解できるかが難しい。さらに経済格差が絡むと…
ドロシー・アリスン『なにもかも話してあげる』読了。
『ろくでなしボーン』の著者の朗読パフォーマンス用原稿を下敷きとしたもの。
こちらは再読。以前読んだのはかなり前なので『ろくでなしボーン』を読んだら読み返そうと思っていたので。
やはり現実の方が酷い。なぜそういう事が起きるのか、どうしたら防げるのか。都会に逃げ出したはずの友人と10年後に出会い、その姿に言葉を掛けられないが、いつまでも愛してると思ったという話が印象に残った。
著者自身はフェミニズムに出会い、同性愛者としてパートナーを見つけて自分の人生を生きていく事ができたけど、こういうのはどうすれば無くなるんだろう。
ドロシー・アリスン『ろくでなしボーン』読了。
私生児として生まれたルース・アン。通称ボーンを通して語られる著者の自伝的作品。
母親の再婚相手の男がほぼ子供でプライドが高いから仕事が続かず、いつも不機嫌で、遂には…
主人公も何が起きたかわからないくらい、読んでるこちらもなんで突然?みたいな感じ。
それだけじゃなく個性的な親戚達、女友達、容姿や性の悩みなど話の展開が早くて2段組約350頁なのに長く感じなかった。
そして最後はうーん…小説としては読み応えあるんだけど、この終わり方は厳しい。女性にも母性にも幻想ない方だけどこれは辛い。しかも現実はもっと酷かったとか。
他の作品も翻訳されないかな。
舞城王太郎『世界は密室でできている。』読了。
15歳の友紀夫と14歳の名探偵ルンババ。修学旅行で知り合った姉妹絡みで密室殺人事件に巻き込まれる…
推理だけじゃないところが魅力の作家だけど、凄く良かった。
本気で仕事しない人と関わるのにうんざりしてたんだけと、読んでたら元気が出てきた。必死で生きてる人が好きだし、そういう人を描ける作品は凄いと思う。
瀬川ことび『お葬式』読了。
日本ホラー小説大賞短編賞佳作の表題作に書き下ろし四篇の短篇集。
表題作はタイトルから想像付く内容だったけど、語り口が明るいので抵抗感なく楽しめたかな。
個人的には書き下ろしの『十二月のゾンビ』が良かった。無言電話に悩まされてる男子大学生の元にバイト先の知り合いの女性が訪ねてくるんだけど、事故にあってゾンビになってるという話。ゾンビな描写がありつつ、普通に会話もするし、お酒も飲むし、欲望もあるし…導入から結末まで凄く良かった。
朱雀門出『謎の河童銭: 続 首ざぶとん』読了。
『首ざぶとん』の続篇四篇。
前作同様、華道教室の先生と生徒を中心に友人達が怪異に巻き込まれる…
『謎の河童銭』は世の中の猟奇的な事件の原因はこれであって欲しいと思ってしまった。そういう思いがあるからこういう怪異が生まれてきたんだろうな。どちらが先だったのか。
『あなたの世界は間違っている』は声をかける怪異の正体を探っていくと…という話だけど、『愛ほど歪んだ呪いはないよ』という五条悟の言葉のまんんまだった。女性の自暴自棄的行動が読んでいても不快になってしまうので、恋愛要素のある話は苦手。
エラリイ・クイーン『最後の女』読了。
大学の旧友で富豪のベネディクトに招待されライツヴィルの別荘を訪れたクイーン親子。到着早々に遺言状の署名を頼まれるが…
いわゆるライツヴィルもの。3人の元妻に新しい妻との結婚が決まったから経済的援助の金額を書き換えようとしたら殺された富豪。現場に残された3人の元妻のガウン、かつら、手袋。そしてダイイング・メッセージ。
容疑者が限られてるから犯人は何となく予想できるんだけど、全ての謎を解くのは流石に難しかった。犯行動機も時代を感じさせるし、こういう問題を盛り込んでくるとは思わなかった。