サマ（詩）

飲みこんだ感情が胃の底で怪物になる
黒で塗りつぶせば白く浮き上がる記憶
駆け出した気持ちのきびすをかえす
#詩

一般に、どんな物語も物語であり続けるために、己を裏切ってまでも拡張し補強せざるを得ないものだな、と思う。物語が自分の物語性を保持するために。

「尤もな犬だよ」

尤もだよ　犬は物差しだからね
どこまでも長いし　マイナスにもなれる
四角くっても三角でもカオスでも
なんでも測ってやればいい
犬で

犬の構造は簡単で
めくってみればわかる
みれば目がつぶれるっていううわささ
ありがちな都市伝説
何が都市かはわからないけどね
じゃあ田舎の伝説って何よ

わかる？
話をそらしてるの
禁忌ってそういうものだから
イライラしてきた？
犬、貸してあげようか

おばかさん
#詩

架空の神田川　四畳半の窓が世界を切り取る
魚たちが浮かびだした／川面／に（死の臭い）
雑魚たちが虚構をねめつけたまま揺れている
食べるものがない　消化する胃袋もない
雨がふりだした
#詩

すべての〈足りなさ〉において
満ちているものがある
すべての〈満足〉において
無限の欠落がある
満と不満が一体となって
人間を転がっていく
#詩

ちぐはぐな言葉の関節に
埋めこまれたビー玉のように
大きすぎて聞こえない音がある
#詩

先生の古い日記帳　やぶれかけの表紙を
めくる　そのにおいがある
磨りガラスの窓があいて
きのうの猫が半分だけ
顔を出している
#詩

無意識を表現しようとすれば
それは手からすり抜けて逃げていく
無意識は指し示すしかない
指されたものをまな差すしかない
#詩作

ベランダの象が寝返りを打つたびに
アパートが瓦解していく
世界としての布団にくるまったまま
ゆっくりと床が落下していく
その重力を感じている
#詩

その学級は閉鎖されました
黒板にはシャッターが下ろされ
上履きはすべての箱で静かに眠っている
子どもと先生の影が通り過ぎても
葉音ひとつしない
廊下の先が途方もなく遠い
#詩

これは好奇
おれの動機
粉骨砕身して動悸
どこへでも磔
杞憂か十字架
杭、杭、杭　
その悔いまでも喰いつくせ
#詩　断片

ある裸体と
そうではない裸体が
取っ組み合って
新たな裸体を作る

ボインとは…？
#謎

新詩集『昭和とボイン』　
昭和はともかくボインを描くのは難しかった
どちらも隠れコンセプトにするつもりだったが、マーケットのある詩作家ではないので格好つけずストレートなタイトルに変えた

いかにして "ストーリー・ジョン（文脈人間）" から逃げ切るか

部屋の中を犀が通りすぎていく
ビオラがケースの中で鳴っている
冷蔵庫の中であくびをしたのは誰だ
昨日までの文字は日記から家出してしまった
ぼくは自分を描きなおす必要があると思った
#詩

これは仕事といえるのだろうか
散歩といってもいいし食事といってもいい
心のなかの言葉の羅列に
別の心で取り消し線を引く
#詩

消えていく気配は
氾濫することのない
記憶のダムだ
#詩

細胞小器官の図がラーメンに見えた

作品にするには、情動と技術を同時に発揮しなくてはならない
そのバランスをとりながら書いていくことの難しさ
欲望と禁欲

自分の詩を評して「言語のアクロバット」と書いたけど、現代詩の巧みさにふれると私の詩は「むしろ太極拳だな」と思った

今夜も冷蔵庫のなかで眠る
まだ少し夜の長さが不安なのだ
#詩

私は日記を書きたかった
死ぬのは怖い
未来の私は死んでいるので
日記も詩も書くことはできない
だから私は日記を書いておくべきだった
#詩　「日記」より

サマの詩集2冊の書影と、簡単な紹介文。

10/19 TOKYOポエケット（にこわ新小岩2階、入場無料）に出展します。
詩集2冊、詩画集や絵集なども持っていきます。

二人称の文体に馴染めない　どうしても腹立たしくなってしまう
ジェイ・マキナニー『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』はともかく

着信に気がつくその前に切ってしまうけど
その果たせなかった一瞬にこそわたしから
届けたかった本当の思いが隠されているのです
#詩

缶ビールがよく冷えていて完璧
すぎて詩にならない
ぬるくなければ詩にならない
#詩

日常の顔をめくって、非現実と話す

つい軽々に韻を踏んづけたり七五調で整いそうになるのをこらえながら詩を、書く
#詩作

「似合う・似合わない」の半分は、自分の気持ち次第。その格好が好きで楽しくやれていれば、きっと周りからの印象も良くなるのだろう。