≫美味しそうな食事とバトルと謎解きがごちゃ混ぜの「忍法虚構推理」はさすがの面白さ。帯に“九郎と琴子の運命に、ひとつの答え。”とあるのは伊達ではなく、終局の近さを予感させられる。本来ならどうにもならないものをどうにかすれば、けっきょく皺寄せが我が身に返ってくるということか。
03.11.2025 08:54 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0@longfish801.bsky.social
主に国内ミステリ小説の感想を週に一冊くらいのペースで書きます。過去の感想は https://bit.ly/3Uz9GUK で公開しています。
≫美味しそうな食事とバトルと謎解きがごちゃ混ぜの「忍法虚構推理」はさすがの面白さ。帯に“九郎と琴子の運命に、ひとつの答え。”とあるのは伊達ではなく、終局の近さを予感させられる。本来ならどうにもならないものをどうにかすれば、けっきょく皺寄せが我が身に返ってくるということか。
03.11.2025 08:54 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0≫という「忍法虚構推理」が後半を占め、前半は九郎に焦点をあてた短編二作を収める。何者かに襲われた男が逃げこんだ廃ビルで出会ったのは、高校時代にクラスメイトだった九郎だった「廃虚に出会う」。宙に浮かぶ生首の幽霊が出没するという家の真相を確かめる「まるで昔話のような」。≫
03.11.2025 08:54 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0城平京『虚構推理 忍法虚構推理』(講談社タイガ/2025年10月)読了。知恵の神である岩永琴子が投稿小説サイトでみつけたのは、桜川九郎をモデルにしたと思しき時代小説だった。人魚の肉で不老不死になった男が女郎蜘蛛と組み、超人的な技をくりだす忍者たちと闘う荒唐無稽な物語の作者は誰なのか。≫
03.11.2025 08:54 — 👍 1 🔁 0 💬 1 📌 0≫この作者には声という要素が重要なのかもしれない。人類の命運や宇宙の広大さにくらべれば、人間存在など塵にも等しい。絶望的な孤独に打ちのめされそうになる。けれどその広がりは虚無ではなく、懐かしい者たちの声に満ちている。たとえ宇宙の果てでも、背中を押してくれる声が聞こえる。
01.11.2025 10:15 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0≫未来の歴史や超光速通信の理論など細部が練られ、深宇宙を舞台にした壮大な雰囲気を味わえる。それでいて零司とディセンバーとのかけあいはコミカルで読みやすい。惑星開拓などしている暇もなく、次から次に想定外の事態が起きて緊張感が途切れない。シリアスさと軽妙さが絶妙にせめぎ合っている。≫
01.11.2025 10:15 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0≫長い冷凍睡眠から目覚めた夜河零司は、地球から十光年先にある惑星に降り立つ。宇宙開発コンペティションの課題として水源を探すうちに、参加メンバーの銃殺死体を発見する。減らず口の宇宙船制御AI、ディセンバーとともに零司は真相を突き止めようするが、他のメンバーも次々に襲われ。≫
01.11.2025 10:15 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0市川憂人『もつれ星は最果ての夢を見る』(PHP研究所/2025年10月)読了。超光速通信や亜光速航行船が実現し、太陽系を飛び越え惑星開拓が可能となった遠い未来。エンジニアと相棒のAIがみつけたのは銃殺死体だった。帯の惹句には「宇宙」に「広すぎるクローズドサークル」とルビが振られている。≫
01.11.2025 10:15 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0≫【!踏みこんだ記述になるが!】建物と人を重ね、強大な敵を創造するというこのシリーズの特色が頂点に達した感がある。巨大な建物に人は圧倒される。けれど、その建物も人間が設計したもの。どれだけの歳月と労力をかけようと自分の想いを形にせずにいられない業に、凡人はただ呆然とするしかない。
26.10.2025 05:10 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0≫ピラミッド棟竣工から吊鐘棟が落下するまで実に四十年にわたる、病院にまつわる怪事件の数々が語られる。精神医療の悲惨な実態が描かれ、その一方で年齢不詳のなにやら秘密ありげな女性が登場し、虚実が混交していく。どれだけひどい悪夢でも、そこには現実を確かめるための手掛かりがある。≫
26.10.2025 05:10 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0≫建築&探偵事務所の共同経営者である蜘蛛手啓司と宮村達也は、大木総合病院の実施設計と監理を請け負う。階段状ピラミッドのごとき本館の最上階にある吊鐘棟が落下、閂で閉ざされた室内から死体が発見される。調査のためドローンを飛ばした蜘蛛手は、室内に誰もいなかったことを確認しており。≫
26.10.2025 05:10 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0門前典之『ネズミとキリンの金字塔[ピラミッド]』(論創社/2025年9月)読了。不老不死を研究し、ピラミッドのごとき建物を構える総合病院。ピラミッド模型が一瞬で消失し、アンデッドがさまよう。精神病患者が語る密室殺人は現実に起きたことなのか。人知を超えた怪物に、蜘蛛手が挑む。≫
26.10.2025 05:10 — 👍 1 🔁 0 💬 1 📌 0≫ロズウェルのUFO事件に陰陽師だのユング心理学だの種々雑多なものが集まり、まるでSFか幻想小説を読んでいるかのよう。無慈悲に人を殺す物理トリックは運命そのものであり、巨大なものが消えるさまは人間存在を卑小なものにする。そのとき謎解きは信仰であり、ささやかな抵抗でもある。
13.10.2025 08:14 — 👍 1 🔁 0 💬 0 📌 0≫ポーの遺稿に描かれた山小屋の消失をどのように説明づけるか。アンソロジー『本格王2024』に選ばれた「未完成月光 Unfinished moonshine」。千年の時を越えてくりかえされる消失「藤色の鶴」。何人もの人々が同じ、館が消える夢を見るのはなぜなのか「シンクロニシティ・セレナーデ」。≫
13.10.2025 08:14 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0北山猛邦『神の光』(東京創元社/2025年9月)読了。奇跡のごとき消失劇を描く短編集。レニングラード包囲戦にて狙撃手が屋敷の消失を目撃する「一九四一年のモーゼル」。ラスベガスで一獲千金をもくろんだ男が、街が消えるのを目にする。第76回日本推理作家協会賞短編部門の候補に選ばれた表題作。≫
13.10.2025 08:14 — 👍 2 🔁 0 💬 1 📌 0≫キャラクターは軽妙だけど、扱っているテーマは重い。少数の声も重んじるという民主主義の理想が多数決の現実となり、裁判制度さえ浸蝕されたならどうなるか。ポスト・トゥルースの風潮への抵抗なんだろうけど、どこかミステリ批判にも感じる。虚構は、現実とはなにか問い続ける責任を背負っている。
12.10.2025 09:30 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0≫法学部生の貞末悠人は、子供の頃に親しんだじいちゃんがいる老人ホームを訪れる。テレビで流れていた裁判の生中継で、紳士探偵と呼ばれる佐伯鷹羽の推理を耳にすると、間違っているとじいちゃんが断言する。かつて探偵として活躍していたじいちゃんは、元弟子と法廷で推理対決することに。≫
12.10.2025 09:30 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0似鳥鶏『みんなで決めた真実』(講談社/2025年8月)読了。殺人事件の裁判がテレビで生中継され「名探偵」が推理を披露する。犯人が誰なのかは台本で決定済。かつて名探偵だった老人が、空気で真実が決まる時代に抗すべく立ち上がる。帯には“真実なき時代のモキュメンタル・ミステリ!!”とある。≫
12.10.2025 09:30 — 👍 1 🔁 0 💬 1 📌 0≫村の奇妙な風習に隠された意味が徐々に明らかになる。超自然的な力、そして大人たちの閉鎖的で差別的な価値観、どちらとも少女たちは闘わなければならない。恐ろしいけれど、懸命に抗う少女たちの青春模様は美しくもある。歴史書には綴られることのない声なき慟哭の積み重ねの果てに現在がある。
05.10.2025 09:34 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0≫2003年と1991年の出来事が交互に綴られる。十二年に一度、未年に早蕨部[さわらべ]村では祭りがある。十二歳を迎える少女たちが巫女となり「おひつじ様」を迎えるべく社で舞う。だが、その裏には恐るべき秘密があった。禁忌を犯した少女たちは十二年後、祭りの日に再会しようと約束する。≫
05.10.2025 09:34 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0杉井光『羊殺しの巫女たち』(角川書店/2025年8月)読了。少女たちは約束した。十二年後、この村に再び集まろうと。悲劇を防ぐために、村のすべてを壊すために。なぜ未年生まれの男はいないのか。人力では不可能な惨殺死体は何者の仕業なのか。帯には“二度読み必至のホラーミステリ!”とある。≫
05.10.2025 09:34 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0"2000年~2025年の日本ミステリの潮流を社会の変化と共に描く。ブックガイドとしても楽しめ、資料も充実!"
『日本ミステリ新世紀MAP 現代ミステリ25年の歩みと30人の作家たち』
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無人の迷宮という比喩がわかりづらいと思うので補足。手掛かりを拾い、それらを組み合わせて推論し、犯人の名前に至る。犯人当て創作においてはその経路、挑戦者の主観的な謎解き体験を設計することが必要になる。我孫子武丸はそこへの意識が薄いように感じる。挑戦者をどう導くかより、作品世界内の論理を隈なく考え抜くことを重視しているというか。まあ、エラリー・クイーンよりディクスン・カーの方が好きという、まえがきの文章と合わないのですが。
23.09.2025 08:52 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0≫私の勝率についてはさておき、なるほど解決編を読めばフェアだったと納得せざるを得ない。手掛かりを論理的に組み合わせるというより、ある一点を洞察できるか否かが重要と感じる。それだけでは足りず、細部まで辻褄が合うか確認する胆力も試される。無人の迷宮をさまようかのような体験だった。
23.09.2025 08:52 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0≫複数の容疑者のうち誰が犯人なのか指摘するオーソドックスな作品もあれば、他人の記憶を覗く装置という特殊設定を取り入れたり、記憶喪失の「私」は何者なのか、母親が突如豹変した動機当てと趣向はさまざま。自作解説を読めば、犯人当てについての基本な考え方や創作のヒントを学ぶことができる。≫
23.09.2025 08:52 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0我孫子武丸『我孫子武丸犯人当て全集』(星海社FICTIONS/2025年8月)読了。五十年の長きにわたり犯人当てを続けてきた京都大学推理小説研究会にかつて所属し、その後『殺戮にいたる病』やゲーム〈かまいたちの夜〉シリーズで知られる著者の犯人当て集。自作解説を添えた五編を収める。≫
23.09.2025 08:52 — 👍 1 🔁 0 💬 1 📌 0≫横溝正史風のシリーズ前作から一転、井上真偽『その可能性はすでに考えた』を想わせる推理バトルがくりひろげられる。難攻不落と思えた密室に穴がみつかっては塞がり、唯一の真相へと雪崩れこむ構成力が見事。推理することは自身の身の丈を越える大きな摂理と向き合い、宿命を悟ることでもあるのか。
21.09.2025 11:16 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0≫なんでも屋のアルバイトをしている古賀鳴海は、恋人で名探偵でもある水鏡氷華に同行することに。悪辣な方法で女工を集め、劣悪な労働環境で苦しめた円山製糸工場。そんな過去のある円山家の邸宅で二十年前に起きた事件の検討会に参加するという。雪と電子ロック、人の目を犯人はどうかい潜ったのか。≫
21.09.2025 11:16 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0大神晃『蜘蛛屋敷の殺人』(新潮文庫nex/2025年9月)読了。飛騨高山の山中にある邸宅にて女当主が密室状況で殺害された。一〇〇〇万円の賞金をかけて、なんでも屋店主と現役女子大生イタコ探偵が推理を争う。新潮ミステリー大賞最終候補作『天狗屋敷の殺人』のシリーズ続編となる。≫
21.09.2025 11:16 — 👍 0 🔁 0 💬 1 📌 0≫【!踏みこんだ記述になるが!】人は生活のために働く。けれどそこには名誉や誇り、社会との関わりも絡んでくる。城崎の示した答えに、犯人はまるで労働者のようだと思った。自分の意志でがんばっているつもりで、いつしか自分を見失う。生きることに理由は要らないが、前へ進むには理由が要る。
15.09.2025 08:43 — 👍 0 🔁 0 💬 0 📌 0≫この極限状況下でなぜ首を切断し、どうやって運んだのか。論理的に思考を連ねた先に、まるで火星を舞台にしたSFミステリじみた光景が広がる。シリーズ前作がホームズ譚めいていただけに、現代に転生したコナン・ドイルが早くも特殊状況ミステリの骨法を会得したかのような錯覚を覚えた。≫
15.09.2025 08:43 — 👍 1 🔁 0 💬 1 📌 0